クマさんのバイク専科

OさんとNさんのトレーニングの方向性を探す!

土曜日のマジカルミステリーツアーを走り終わって、ロードレース、ヒルクライム、エンデューロなどに取り組んでいる2人のライダーから、トレーニングの相談があるというので、ショップで6時に待ち合わせして、静かに話しのできる珈琲中山に行きました。珈琲とミートソーススパゲティを頼んで、夕飯を食べながらの話しになりました。フルタイムワーカーでルックを駆るOさんは、すでに3分間を85%くらいの運動強度のミドルハイで頑張り、3分間ゆっくり走って回復走して、目標本数は5本から10本のトレーニングをアドバイスしていて、体験済みでしたが、まだまだ短期間なので、トレーニングの効果を体感できるまでにはもうしばらくかかると思います。

 

プロジェクトMを駆るNさんは、ヒルクライムトレーニングなどに早朝から取り組んでいるというライダーです。心肺機能はOさんもNさんも開発されているようです。走行距離やどんなライドイベントがターゲットなのかを聞き、自分の走りの状況や、心拍数やワット数などを話してもらい、ライダー2人のプロフィールをだいたい把握できたので、どうなりたいのかの話を聞きました。Nさんのもっとも具体的な話としては、平坦コースのレース中のケイデンスが90回転前後だということ、上り坂を集団の前で入って、上りきったところで脚が重くなって、そこから集団の速度が上がるのに、脚を回せなくて集団から千切れてしまうので、それを解消したいそうです。

 

トレーニングしている距離やスピード、発揮できるワット数を聞いてみると、ロードレースの緩い上り坂の頂上付近で乳酸まみれになって、脚が動かなくなって集団から千切れるのは、現在の力から考えると不思議に思えました。上りセクションへ入る前に、集団の前で走っている理由は、上り切る寸前に失速してどんどん後ろへ下がっても、集団の最後尾に生き残れるからだそうです。上りに入る前にクランクを踏み込んでスピードを上げて、集団の前の方をキープする走りに無理があると感じました。

 

Nさんの場合は上り坂での失速による千切れを恐れるあまり、上り始める前のケイデンスが90回転以下になる、踏み踏みのペダリングでスピードを上げて前に上がるときに脚を使いすぎていたのです。高いレベルの有酸素運動と無酸素運動で、爆発的に乳酸が発生するので、上り坂の終わる頃には脚が動きにくくなっていたのです。まず、上り坂の走り方のイメージから考えました。ケイデンスは毎分90回転から110回転を目標にします。上り坂に入ったら、今までよりフリーのギヤを1段軽くして、踏み味を軽くして、ケイデンスを今までより上げて上り坂の終りまで走り、平らになってもケイデンスを高く保ちます。下に入ってスピードが上がるまで重いギヤ側には変速しません。

 

脚を踏んだ時の重さと乳酸によるダメージと、ケイデンスを上げて心拍数や呼吸数の上昇による苦しさとの、回復の早さの違いを認識してもらいました。乳酸が爆発的に発生して脚が動きにくくなると、運動強度を下げて、血液中の乳酸濃度を低下させて、元のように脚を動かせるようになるには20分から30分かかります。軽く回せるギヤ比でケイデンスを90回転から110回転を目標にして上ると、心拍数も呼吸数も上昇して、ぜいぜいハアハアと苦しくなりますが、スピードを下げれば5分から10分で心拍数や呼吸数は下がります。乳酸の発生も少なく抑えることができて、回復も早いのです。

 

いつもよりギヤを1段軽くしてケイデンスを保って走ると、上り坂の終盤にきても、脚の筋肉への乳酸による収縮のブレーキもほとんどかかりません。上りの終わりから平らになってもクランクを回すことをイメージして、下り坂のセクションに入っても、軽く回せるギヤのまま走り、実際に下りの傾斜の影響でスピードが上がるまで、重い側のギヤへは変速しません。今までより1段軽いギヤ比でクランクを回して走ると、踏み込んだ時よりバイクが前に進む感がなくなりますから、少しじれったいと感じるライダーもいると思います。呼吸数も心拍数も上がって苦しくなるので、この苦しさの方が疲れるのではないか、ダメージが残るのでは、苦しいから嫌だといっているライダーが多いのです。それでも呼吸や心拍の苦しさにも慣れてください。体へのダメージは小さいのですから。

 

踏み込むペダリングで走ると呼吸数も心拍数も上がりにくいので、楽に走れると感じているライダーは、脚の筋肉はじわじわと発生する乳酸の蓄積で動きにくくなって1時間から2時間で突然踏めなくなります。それでも当面は楽に走れるケイデンスの低い走りをしたくなるのです。踏んで少し重く感じるペダリングは、1踏みごとに確かにバイクが前へ進むし、呼吸も心拍も上がらず気持ちよく走れます。ケイデンスを高く保つ走りは効率がいいことや疲労の回復が早いことを、ロジックとして丁寧に一緒に走りながら教えてくれる人もいないので、自然に踏み込むペダリングで走りがちなのです。

 

踏むのと回すペダリングとのバランスが重要です。ただし、レースでのトータルタイムを速くするには、踏みすぎて脚を動かしにくいほど乳酸を爆発的に発生させるような走りは避ける必要があります。発生するワット数でも、心拍数による運動強度の管理でも、リミッターをかけることができます。測定器具の数値を見て管理しながら、体感による限界の感じも掴んでおいて、ここまでは頑張って走ろう、この感じを過ぎてしまうと頑張りすぎという感覚を掴んでおくことも重要です。トレーニングを繰り返していくと、ワット数や心拍数で運動強度を管理していると、ある日、楽に感じることがあります。

 

それが酸素を体内に吸収する能力、乳酸に耐えて筋肉を収縮させる能力、乳酸を除去する能力などの負荷に、体が順応してパフォーマンスが向上したトレーニング効果です。今回のNさんへのアドバイスの主なポイントは、ペダリングのイメージの変更でした。上り坂や平地のケイデンスを上げて乳酸の発生を抑えること。呼吸や心拍数の上昇する苦しさに慣れることでした。日曜日にはフルーツラインのアップダウンコースを走って、上り坂の入り口で1段フリー側を軽くして、クランクをいつもより回して上る走りを試してみるそうです。ではでは。