クマさんのバイク専科

昔し、チームロードで勝てなかったお話し!

部屋に置いてあるカーボンディスクホイールを見ていて、昔のアジア大会のチームロードの話しを思い出しました。実業団チームのロードレースで最強の4人が、チームロードのメンバーに選ばれました。日本チームは韓国や台湾がライバルで、毎大会、秒差で表彰台の位置を争っていました。アマ車連に指名された4人のメンバーを見て、これなら勝てると自転車関係者は思い期待しました。彼らは全日本選手権や、全日本実業団や、地区別の選手権で圧倒的な強さを発揮していました。まさにベストメンバーでした。そのアジア大会には、個人ロードレースとチームロードにエントリーしていたと思います。

 

日本チームの総監督は、当時ピスト競技で強さを発揮していた大学チームの監督が就任していました。数年前に韓国で開催されたアジア大会でも自転車チームの監督として戦い、帰国後の「爆笑」せざるを得ない、大会参加報告レポートというのを読ませてもらっていました。「韓国チームが何故強いのか」という表題になっていました。大会後、特別に韓国チームの選手の自宅に招待してもらって、酒を酌み交わして、韓国の家庭料理を食べさせてもらって、歓迎されたそうです。家庭にまで潜入しないと分からない、その強さの秘密を探ってきたそうです。

 

まず、メンタル面の話し、韓国選手の日本人選手には負けては帰れないという、強い思いがジュニア時代からトップチームまで、コーチや監督から教え込まれて育っているそうで、「ライバル心と根性」が違うそうです。彼らが言う「韓日戦」、サッカーでもラグビーでも異様な雰囲気があるのは、日本が支配していた歴史があって、その世代の人たちが作り出した抗日運動の流れを、そのまま伝統的に引き継いでいるからでしょう。苦しい時に日本選手が前を走っていると、何が何でも追いつき、負けないのだそうです。

 

なるほど〜、それはすごいメンタル面の秘密事項だ。公道レースをコントロールするために集団の近くを走る韓国軍のジープは、そういうときには、遅れた韓国選手の近くを走って、車体に掴まらせて長い上り坂を、自国開催ならではの「空飛ぶジュータン」と、他国の選手から呼ばれる秘技を使って、自力で上り坂区間で逃げた日本選手や、各国のアタックを決めた選手たちに、やすやすと追いついてくるのを、韓国で開催されたロードレースで何度か目撃しました。メンタルのせいだったんだ。

 

韓国では国民皆兵制度を採用しているので、ほとんどの男子が兵役を経験、除隊しても予備役に入っていて階級をもっています。何年の時に軍にいたと言う経歴が社会的に意味を持っています。兵役後に高校や大学へ戻ったり、民間会社へ優先的に戻れる制度があります。公道を閉鎖してロードレースやトライアスロンを開催している道を、警察官が閉鎖していても、軍隊経験者の車が来て、俺の方が警察官より年次が上だとか、階級が上だと言って、閉鎖を突破して、コースを逆走して、選手と激突してしまうことも起こります。そういうケースを防ぐためにも、重要な大会は、ナショナリズムの強い軍隊がコントロールしているのです。

 

さらにレポートは続きます。秘密兵器は食事だそうです。オモニが特別に漬け込んでくれたキムチの樽と、ニンニクをアルミホイル焼きにする、ガスコンロを部屋へ持ち込んで、毎朝、ひと玉、ホクホクに焼いたものを食べているそうです。なるほど、朝ホテルの階段が煙突になって、一斉にホテル中がニンニク臭くなる原因がわかる、すごい秘密だ。韓国チームが振るわなかったインド大会の敗因もレポートに書かれています。特製キムチの樽を持ち込んだものの、ホテルの冷蔵施設での保管が悪くて腐ってしまったのと、朝昼晩ともカレー料理が20種類以上出て、選手の食欲がわかなくて、体調を崩したからだそうです。

 

食事のメニューを決めている主催者と、ホテルに抗議して、朝はトーストとジャムとスクランブルエッグに変えてもらったが、すでに体調を崩してしまったから、まともに戦えなかったのだそうです。アジアで戦うときに、とても参考になる内容ですね。ホントかよっ!?。韓国選手の家庭訪問までして、チャミスルを酌み交わし、総監督が調査した韓国人選手の強い理由は、キムチとニンニクのホイル焼きだそうです。このレポートが帰国後に強化委員会へ提出されて、本人が強化委員会で説明して、報告されたんだから、おそるべし。

 

さて、選出された4人は、自費でカーボンディスクホイールを調達して、アジア大会へ持ち込みました。リムセメントで決戦タイヤを貼ってセンターを出して準備していたそうです。各国がレースコースで練習していました。各チームともノーマルホイールで走っていました。世界選のチームロードでは後輪ディスクホイールが主流です。市販モデルも数種類あります。総監督は各国の練習風景を見て、4人にディスクホイール使用禁止を命じました。理由を聞いてみると、日本チームだけ使用するのは卑怯だそうです。最新の機材を買う資金不足で手に入らないチームはあるかもね、なるほど公平性に欠けるという素晴らしい判断です。

 

だけどどうだ、レース本番になったら、有力チームはみんな装備して、ウオーミングアップエリアにいるじゃないか。ディスクホイールを用意しているかは、スタッフが各チームのホテルの機材置き場をちょっと見てくれば分かったはず。使用機材やギヤ比などをリサーチするのは普通のことです。ディスクホイールを禁止してホテルの機材部屋へ置いてきた日本チームは、ノーマルホイールで走らざるを得ない。ディスクホイールの効果はともかく、4選手のモチベーションはどうだったのか。でも、日本チームは歴代チームの最速タイムでフィニッシュして、トップ3に数秒差でした。