クマさんのバイク専科

カンパニョーロのハンガーのベアリング交換

カンパニョーロのユーザーが少なくなっていることは確かです。エントリーモデルの完成車への装着率は世界的に低くなっていますし、ハイエンドモデルはシマノが圧倒しているし、スラムレッドEタップがグイグイと食い込んできて、カンパニョーロのシェアを奪っています。カンパニョーロのコンポーネントは高い、変速スピードはシマノにかなわない。下手すりゃ105の方がメカニカルではスーパーレコードを上回っているかも。特にフロントの変速のスムーズさの差は大きい。リヤの変速だってインデックス変速の切れ味とかじゃなく、走っていて変速レバーに触れていないのに突然変速する、オートマチックチェンジが発生することがあります。

 

フリーのスプロケットにも問題なし、チェーンも新しいし、オートマチックチェンジは、インデックス変速の同調に関わるシフトケーブルの張りを調整しても、スーパーレコード、レコード、コーラスでも起こりました。原因はいろいろ考えられますが、変速レバーのケーブルの巻き取り部のカムの消耗なのか、ケーブルのフリクションの発生なのか、1万kmくらいの使用でリヤ変速機にガタが発生しているのか。カムの消耗かと思って、エルゴパワーシフターやシフトケーブルの交換も試しましたが、決定的な原因は判明せず改善はされませんでした。

 

電動メカのEPSの場合も、シマノのDi2アルテグラと比較してもインデックス変速のスムーズさ、特にフロント変速のチェーンラインの変化に対応して、斜めにドライブするチェーンとチェーンケージとの接触を防いだり、解消するオートトリム操作の速さが違います。圧倒的にシマノのフロント変速機が素早く動いてくれます、チェーンタッチすることもなく、モーター音がしてチェーンケージの位置が移動して、変速のためにリヤ変速機用のシフトスイッチに触れた瞬間、チェーンラインの変化へ対応します。旧Di2より最新のDi2

はさらにモーターの速度をアップして、レスポンスの向上を図っているそうです。

 

カンパニョーロのEPSのフロント変速機はチェーンが斜めにかかって、チェーンケージがチェーンに一瞬接触してから、オートトリムの動作が行われて、斜めになったチェーンとの接触を解消します。初期のモデルも、最新のモデルも状況は同じです。今回問題が発生したのはカンパニョーロのカーボンクランクで、アルミクランクも同じハンガーの構造です。ハンガーシャフトは中央で2分割したタービンエンジンなどに採用されている、ハースジョイントをハンガーシャフトの連結構造に採用しています。ハンガーシャフトの太さはシマノのホローテッククランクのハンガーシャフトと同じ24mmです。左右のクランクと2分の1分割されたハンガーシャフトが一体成形されています。

 

中空構造のハンガーシャフトの先端はギザギザが噛み合うように作られていて、10mmアーレンキーで締めるボルトで連結する構造です。スーパーレコードのチタン合金ボルトのみ逆ネジで、レコード以下のスチール製ボルトは正ネジです。なんでこんなややこしいことするんでしょ、間違いのもとです。アルミ合金製のカンパニョーロの純正のハンガーカップは、フレームのハンガーの規格の多様化に合わせて、色々な規格が用意されています。しかし、ギヤクランクのハンガーシャフトに圧入されたシールドベアリングの規格は同じです。

 

シールドベアリングは鋼球のもの、セラミックボールと普通のボールレースケーシング、セラミックボールにトリートメント強化されたボールレースケーシングのものがあり、シールド付きでスペアパーツが用意されています。セラミックボールのシールドベアリングはカルトと呼ばれています。最上位のモデルは左右セットで2万円くらいします。それに交換作業代が加わりますから、ざっとですが2万5000円はかかりますね。完組みホイールの場合は、セラミックボールベアリング仕様は、カルトベアリング採用のウルトラのネーミングとなります。

 

カンパニョーロのギヤクランクのシールドベアリングの寿命の見極めは比較的簡単です。まずは走行中、ペダリングを一定ペースで踏み込んでいても、カチカチという異音の発生に気が付きます。シールドベアリングの中にある樹脂製のリテーナーが消耗して、ボールベアリングとボールベアリングとの間に隙間ができて、間隔が一定に保てなくなって、回転部の緩みが発生して接触音や、回転部の横方向のガタが発生するのです。異音に気が付いたら、左側のクランクの根元を右側へ押し込むようにすると、カクカクと左右にクランクが動く場合は、シールドベアリングが消耗しているので交換時期です。

 

新品のギヤクランクを組み立てた直後に、左クランクをギヤ板側へ押しても全く動きません。左クランク側に波型のスプリングワッシャーをセットした状態で組み立てて、連結ボルトを締め込みますが、絶妙のバランスでガタがありません、左クランクを押して確認してみてください。シールドベアリングのリテーナーが消耗してきて、ガタが出ているままでもしばらくは乗れますが、シールドベアリングが走っている先で壊れると手がつけられません。

 

2週間くらい前のライドで、ハンガーからカクカク音が発生したのに気が付いていましたが、時々消えるのでそのままにしていました。でも、ツールドおきなわでのハンガー壊れという嫌なことを思い出しました。急いでシールドベアリングを手に入れて、パークツールのシールドベアリング引き抜き工具、圧入工具、グリス、スナップリング脱着工具、10mmアーレンキー、トルクレンチ、細いマイナスドライバーを用意して、慌てて交換しました。

 

左右のクランクのハンガーシャフトを連結しているボルトを時計方向へ10mmアーレンキーで回して外します。右カップにセットされている脱落防止の鋼線のスナップリングを細いドライバーの先で引き上げて抜き取ります。これでハンガーから左右のクランクを外せます。右クランクのハンガーシャフトに圧入されたシールドベアリングを外す前に、スナップリングをドライバーの先などで持ち上げて外します。抜き取り工具の左右のフックをシールドベアリングにかけて、ハンバーシャフトを押す部分を当ててねじ込んで、シールドベアリングを引き抜きます。

 

シールド付きのワッシャーを交換して、新しいシールドベアリングのシールドで塞がれた側を外向きにして、圧入工具を当ててハンマーで叩いてしっかり押し込みます。スナップリングを戻して終了です。左側のシールドベアリングも外して、新しいものを圧入します。クランクを組み付けて、左右のクランクを180度にセットして、チタン合金生の逆ネジの連結ボルトを40N近いトルクで締め込んで、右カップに仮止めした脱落防止のスナップリングをセットして、交換作業は終了です。シールドベアリングはギヤ板側の方が早く消耗する傾向がありますが、左右同時に交換してしまった方が安心です。ではでは。