クマさんのバイク専科

新旧のシングルテンションのリヤ変速機

シマノは最新のロードのリヤ変速機はそれまでのダブルテンションからシングルテンションに、大きく構造が変わりました。それまでのリヤ変速機は、全体の傾きを調整する上ピボットにスプリングが埋め込まれ、下ピボットにもプーリーケージでチェーンテンションを張るスプリングが埋め込まれている、、2つのスプリングでバランスをとって、上プーリーの歯先とスプロケットの歯先との感覚を最適に保つ構造のダブルテンションのスラントパンタメカニズムのモデルでした。

 

上下のピボット部分にスプリングが組み込まれた、ダブルテンションのスラントパンタメカニズムから、最新モデルは、シングルテンションで、上がダブルピボットのシャドーデザインの変速機に変更されました。カンパニョーロの変速機も12段フリー対応のコンポーネントになって、シングルテンションの上ダブルピボットのシャドーデザインぽい形状に変更されました。

 

シャドーデザインのリヤ変速機は、上プーリーの位置がハンガー寄りにわずかに移動して、チェーンのリヤスプロケットの歯先への巻き付きが長くなり、ペダリングで生まれたパワーの駆動の伝達効率が向上しているし、チェーンにかかるトルクも低い位置で上プーリーがチェーンをリードするので、プーリーを内外へ移動する変速レバーの操作も軽くなります。シャドーデザインのリヤ変速機は、フリーのトップギヤが11Tで、ローギヤが36Tなどの超ワイドギヤが採用されていたMTBのコンポーネントで採用されていました。リヤ変速機の上ブラケットのテンションスプリングを無くして、下ブラケットにのみ強力なテンションスプリングが収まって、ミドルからロング気味のプーリーケージでチェーンテンションをとっています。

 

ダブルテンションのリヤ変速機とシングルテンションの変速機の、走行中の動きをスロー再生でチェックしてみると、スムーズな路面では動きに大きな差はなく、段差とか、荒れた路面で変速するときに、チェーンケージの動きの収まりがシングルテンションのリヤ変速機の方が速く収まります。ダブルテンションのメカの場合は、上ピボットにもテンションスプリングがあるので、Bテンションボルトで制限されている範囲内ですが、上ピボットボルトを中心に、リヤ変速機のパンタグラフ部分ごと揺れて、さらにプーリーケージが揺れているので、揺れの収まりに時間がかかっていました。パリルーベなどの荒れた路面のレースでは効果があるでしょうね。でも、スムーズな路面の走りではどうかな〜。

 

フリーのスプロケットの歯先と上プーリーの歯先との最適な間隔は、チェーンを誘導するスムーズさに関係します。リヤ変速機のボディの傾きと、上プーリと下プーリーがセットされたプーリーケージの動きと、最適なチェーンの長さで、ローギヤからトップギヤまで、一定の間隔が保たれているので、トップギヤ側の小さいギヤでもチェーンの移りが素早くなっています。もう1つ上プーリーの間隔を調整しているのが、スラントパンタメカニズムで、パンタグラフ部分の傾きで、トップギヤ側やローギヤ側の上プーリーのスプロケットの歯先との間隔を設定できます。

 

シングルテンションのシャドーデザインの超ワイドギヤ対応の最新のロードコンポーネントのリヤ変速機では、フリーのローギヤ側の大きい歯数と、上プーリーの歯先間隔が重視されています。ロードバイクの超ワイドギヤ化に対応したモデルチェンジです。構造上トップギヤ側の小さいスプロケットのとき、上プーリーの歯先との間隔が開き気味になってしまいますが、34Tや32Tの大きな歯数のスプロケットとは理想的な間隔を保てます。

 

そのトップギヤよりの時の間隔の開きをカバーして、チェーンを誘導する能力を高めているのが、上プーリーの歯先を長くしたデザインへの変更です。上プーリーの歯先形状は横方向へのリードする能力に特化しています。下プーリーは斜めにドライブするチェーンも歯先で拾いやすく、きになる接触音も発生しにくい形状にデザインされています。チェーンを誘導することは同じでも、上下のプーリーで微妙に違う役割になっています。だから、最近のモデルでは上下のプーリには互換性がありません。

 

複雑な構造と動きのダブルテンションのリヤ変速機の方が進んでいる気がしていたのですが、よりシンプルな構造でワイドギヤに対応する最新のシマノとカンパニョーロのリヤ変速機です。カンパニョーロのシングルテンションのパンタグラフメカニズムのリヤ変速機だった、縦型メカと呼ばれていたデザインは、1960年代に始まっています。グランスポーツ、レコード、ヌーボレコード、スーパーレコード、ヌーボスーパレコードの流れで、基本デザインは変わりがありまえんでした。

 

フリーのローギヤが21Tとか23Tと変わって、わずかにプーリーケージが少しずつ長くなって、フリーのローギヤが26Tくらいまでの、当時としてはワイドギヤ対応になっています。28Tなど、よりワイド化が望まれて、ついに登場したのがダブルテンションの横型メカのラリーでした。ロードレーサーが小さなローギヤを踏み踏みで走っていた頃は、人間が機材の進化の遅さ、鍛えれば踏めるようになるとか、レース界の既成概念に合わせていた時代でしたが、今はプロ選手と一般ライダーのパワーの差は、2倍から3倍もあることが認識されて、ロードコンポーネントも設計されています。

 

50Tかける34Tのコンパクトドライブクランクも、47Tかける29Tのスーパーコンパクトドライブクランクも、ローギヤが32Tや34Tの超ワイドすプロケットも普通になっています。僕が自転車雑誌で15年以上前に提案したことが、やっと現実になってきました。体力の衰えに合わせるようにして、超ワイドギヤに対応する上級コンポーネントが開発されている感じがしています。次は、出し惜しみしないで、かっこいいロードEバイクが普通に走る世の中になってくれないかな。じじいは若い元気なライダーと一緒に走りたいんと思っているんですよ。ではでは。