クマさんのバイク専科

初めてのフィッティングは気を使いますね!

長野で開催している「黒姫高原るんるん合宿」でも、つくばのマジカルミステリーツアーでも、初めてフィッティングするライダーの場合、今どんな走りを楽しんでいるのか、今のポジションをどう感じているのか、気になっていること、これからどうしたいのかなど、固定式のローラー台でペダリングしてウオーミングアップするときに聞きます。前にどこかでフィッティングを受けている場合は、どんなことに不満を感じていたり、違和感を感じている部分を聞いていてみます。最長の走行距離と時間、日常的に走ってる距離、一緒に走って

っているライダーたちのスピードやっ距離やコースの状況なども聞きます。。

 

ローラー台で、軽く回せる負荷のペダリングで、20分間ぐらい体を動かしてもらうと、体温が上がってうっすらと汗をかき始めます。起きたての平常心拍数の2倍ぐらいの120拍の心拍数から、140拍から150拍のLSDレベルの運動強度で、軽めの負荷でペダリングを続けてもらいます。これでほぼウオーミングアップが終了です。初めてフィッティングするライダーは、チェックポイントがたくさんあって、体格や体力の確認、負荷を上げた状態でペダリングしてもらい、ペダリングの特性や、踏み踏みのペダリングを継続しようと、ケイデンスが低いペダリングなのか、回転を意識できているかを見極めます。

 

今までのポジションで発生している、サドルの高さ、グリップ位置の遠さや低さで余計なストレスが発生していないか。ライダーにマッチしているかを見抜く作業があります。上半身の角度や、腕の伸びによっては、ステムやハンドルバーなどの、パーツの交換が必要な場合もあります。ウオーミングアップの間にも、脚の動き、腰の位置が後ろ乗り、中心乗り、前乗りかなどの確認をします。低負荷と高負荷のペダリングでも確認します。グリップ位置により腰の位置が変化するかも確認します。少し疲れてくると脚の動きも気になります。踏み込む時と、引き上げる時の足の向きや、膝の開きをチェックします。

 

サドルの前後位置や高さの設定が、本来、腰の行きたい位置を制約していないかもチェックします。ブラケットを握った時の腕と背中が作る三角の具合でステムの高さや長さ、ドロップバーのリーチ、グリップ位置の高さ、上半身の前傾姿勢の深さで腹部の圧迫感、ペダリングする足の向きや、上死点から下死点までの、踏み込むフェーズでの足の裏の傾きのチェックをします。重要なのは表面上には見えてこない、ペダリングしている時の骨盤の傾きです。骨盤の傾斜の違いで、体幹、腹筋、背筋、腸腰筋、臀筋、太ももの後ろ側、太ももの前側の筋肉など、ペダリングで主に使う筋肉の場所が変わってしまいます。

 

知らず知らずのうちに、自然に骨盤の傾斜の切り替えをできているライダーもいます。骨盤の傾斜を意識的に調整してペダリングすることをできていないとか、意識できないライダーもいます。柔軟性によっても違いますが、腰椎や背骨の曲がりを意識して、骨盤の傾きを調整する方法などをアドバイスして、全体踏みのペダリングや、前もも主導で踏み込むペダリングの切り替えができることを体験してもらいます。ときには、ペダリングのイメージを変えるアドバイスもします。足をペダル軸の描く円に沿って、接線方向へ踏み込んで、丸く回すのではなく、股関節からひざ関節までの、太ももを意識して、上げ下げする動作を意識して、足が上死点を過ぎた直後から踏み込み始めて、下死点近くまでのクランクの位置まで踏み込むのでなく、3時の位置、クランクが水平になる位置までで、強く踏み降ろすことを意識します。

 

モーターの場合は、円の接線方向へ力を加える、効率のいい力の加え方が可能ですが、左右の足で交互に踏み込む、人間が行うペダリングでも、もしそれができれば理想的ですけど、そんなことはできません。0、5秒から0、8秒の片側の脚を踏み、反対側の足で引き上げる動作の中に、足首の動きを使って足の位相の変化に合わせて、踏み込む方向を変えて、接線方向へ踏み込むことは、ビギナーライダーにはほとんどできません。人間エンジンのペダリングの場合、効率のいいのは、時計の文字盤に例えると、クランクの長さを生かして、ペダル軸が描く円の接線方向へ踏み込める区間は、2時から5時の位置の範囲です。

 

もし接線方向へなるべく沿って踏み込むペダリングをできたとしても、足首の動きを支える、ふくらはぎとスネの筋肉は早く疲労してしまい、ペダリング全体に影響します。上り坂や急加速の時とか、向かい風の区間で無意識にやっていることもありますが、短い区間でしか使えません。足首のスナップを利かせて走るプロライダーは、ほとんどいないと思います。左右の股関節幅、ペダリング中の左右のひざ関節の通過位置、左右の足の母指球という骨の位置関係を見て、左右の足の開き、Qファクターがどうなっているかも気になります。クランクを回しやすい狭い設定にするか、踏みやすい広い設定にするかを検討します。

 

ペダルにもよりますが、クリートの前後位置、内外の位置、足の自然な向きに合わせた取り付け角度の調整が必要です。足をセットしても動かせるビンディングペダルのシステムだから、取り付け角度の調整はだいたいでいい、というのは間違いです。取り付け角度のズレは、ひざ関節周りの違和感や、痛みの原因になる可能性があります。ペダリング中に、踏み込むときに足の裏がペダルの踏み面で滑る感じとか、踏みやすい位置を探して足が動くのは、クリートの前後位置、内外の位置、取り付け角度のズレが原因の可能性が大きいのです。クリートの位置の設定は、3つの要素とも1mm単位での調整が必要と思っています。

 

固定式のローラー台でのポジションチェックでは、軽い負荷のペダリングだけでなく、毎分80回転できるくらいの、少し負荷がかかった状態で、ペダリングする脚の動き、ふくらはぎやスネにかかる負荷、踏み込む足の角度をチェックして、クリートの位置を調整します。ビギナーライダーの場合は、ふくらはぎやスネの筋肉への負荷を下げる、足が安定する方向へ向けた設定の、ペダル軸の中心を母指球の後ろへ2mmから3mm後ろへ下げる設定にします。足首の動きでペダルを押し出す方向を調整しにくい設定ですが、踏み込む足が安定して、強く踏み下げられます。

 

上半身の曲がりを見て、心肺機能への負荷、腰や背中や首や肩へのストレスに関係する、ステムの高さ、ハンドルの取り付け角度、ブラケットの位置を確認します。上半身の重さを踏み込む脚に利用したり、上半身の力を有効に使えるグリップ位置に設定します。というわけで、固定式のローラー台でフィッティングをスタートして、クリートの位置、サドルの位置、ステムやハンドルやブラケットの位置の調整で、初めてのフィッティングには1時間以上かかります。フィッティングを受けて終わった時が、ポジションの最適化のスタートと言えます。

 

設定したポジションの確認のために、上りや下りや平地のあるコースを走って、フォームやペダリングを確認しながら、気がついたポイントを修正して、さらなるポジションの最適化を行います。黒姫合宿でも、マジカルミステリーツアーでライド中にチェックを行います。フィールドを走って路面を前にっ進む、実際にかかる負荷を体験して、ライダーのペダリングやフォームの個性が表面化することも多いのです。黒姫高原をスタートして、アップダウンコースを走れば、フレッシュだった状態から、疲労してきてペダリングもフォームも変化することもあります。

 

50km、100kmと走った時のことも配慮して、上り下りに対応できるポジションに設定します。まずは回すペダリング重視で設定します。体力や筋力がアップしたり、耐乳酸性や心肺機能が向上したらポジションの見直しが必要です。ペダリングのイメージも変化します。腰を前に移動して、脚の筋肉で踏み込むだけじゃなく、より体重を利用して脚を強く踏み下ろしたいとか、変化するので、腰の前後位置やサドルの高さや前後位置などの、ポジションの移動が必要になることもあります。マッチしないサドルの高さに設定されt、下死点近くでかかとが上げっているにも関わらず、脚が伸びきっているライダーもいますね。

 

ポジションを変化させれば、使う筋肉も変わります。それは、最初は違和感となって感じることにもなりますが、よほどの違和感や痛みを感じない限り、ポジションを変化させたら3ヶ月くらいはそのままで走って、そこでポジションを再評価すべきです。もっといいポジションがあるのではと思ったり、追求するのはいいことですが、思いついたらポジションをちょこちょこ変えていたのでは、体の使い方が慣れる前に変化するので、ポジションに悩むだけで終わってしまいます。

 

ポジションの調整で難しいのは、パワーを絞り出しやすいく、空気抵抗の少ないポジションが、必ずしも快適な、負荷のかからないポジションではないことです。スピードを出すために、短時間なら耐えられますが、ロングライドでは苦しくなったり、ストレスが部分的に集中して疲れてしまったり、集中力をキープできなくなったりします。低すぎる、高すぎる、遠すぎるでは、短時間はパワーを引き出せても、快適に長くは走れません。

 

走行時間が1時間前後のヒルクライムや、平坦コースのタイムトライアルとか、ターゲットがはっきりしていれば、そこにフォーカスしたパワーを引き出せるポジションの設定もありだと思います。でも、ロードレースやロングライドやブルベがターゲットの場合は、最高にパワーを引き出せる寸前の、ちょっと物足りないぐらいの、寸止め的なゆとりのある位置を探して設定するのが、上り下り、集団走行、スピードの変化、テクニカルなコースなど、オールラウンドに対応できる、最適なポジションだと思います。

 

自分で気持ちよく感じるポジションにすればいいとか、快適に感に感じる走り方をすればいいというのも、効率のいい走り方やポジションの最適化をするには、なかなか難しい部分だと思います。ちゃんとクランクを早く回すための地道なトレーニングに取り組んでいれば、毎分90回転以上の高回転で、心肺機能に軽い負担を感じてちょっと苦しい感じのペダリングの方が、乳酸が発生しにくく、筋肉への負担が少なく、毎分80回転前後の低回転の、軽く踏み込む、楽に感じていたペダリングが、実は乳酸にじわじわ乳酸を蓄積するペダリングングということもありますから。ではでは。