クマさんのバイク専科

マサローさんのタイムのフィッティング!

5月の佐渡ロングライド以来、4ヶ月ぶりのライドということで、走り出せばバイクと離れていた部分の違和感をどどっと感じるでしょう。踏めなくなっているのでお尻にかかる負担も大きくなり、お尻の痛みを感じることもあります。バイクに馴染んでくるまでフィッティングは走りをしばらく見守ることになります。ローラー台に固定してペダリングしてもらって全体を見れば、サドルの前後位置や高さは問題ないですが、いつの間にかサドルがやや前上がりの設定になっていました。

 

ショートモデルのサドルの中央から先端は前上がりになっていて、腰の位置を固定している感はありますが、腰を入れて前傾姿勢を強めて踏みこむと、鼠径部の圧迫感が増しているはずです。タイムのサイロンはエアロロードなので、シートチューブは楕円、シートポストもエアロタイプで、ヤグラは横方向から貫通する1本ボルト止めで、サドルの固定力が弱く、走行中にヤグラの緩みが発生しやすい構造で、サドルの固定角度がずれてしまうことがあります。

 

ヤグラの摩擦する部分には、キザなどのクリックする加工はなく、無段回でサドルの取り付け角度を調整できます。走行中に大きな力がかかるので、指定トルクでボルトを4mmアーレンキーで締めても緩みやすいことが分かっているので、サドルを固定するときに、摩擦を増すケミカルを塗ったり、オーバートルク気味に締めています。

 

トレックのシートポストのヤグラも、タイムのエアロロードのシートポストのヤグラも、一本ボルトで横からヤグラ金具を貫通して締め込むタイプは、ヤグラの摩擦など構造的な問題があるのか、サドルの取り付け角度が動きやすいのです。段差を通過したときにサドルの先端や後端にドカッと力がかかったときに動いてしまうことがあります。

 

だからオーバートルクで締めてしまいがちなので、逆に、ヤグラが動かなくなったり、ヤグラが固着して分解できなくなってしまうことがあるのです。でもサドルが動くのは避けたいし、難しいところです。そこで使っているのが、モトフレックスというスイス製のグリスです。圧力がかかると固着するタイプのグリスです。

 

そのグリスでも固定できない場合は、ボルトのプラスネジのヘッドのドライバーを当てる溝を崩した時の、摩擦抵抗を取り戻すケミカルをヤグラの摩擦部分へ塗って組み立てます。今のところ、この2つの方法で対応しています。マサローさんのタイムのサイロンのヤグラは、強くボルトを締めてあったはずなのに、緩んでサドルの取り付け角度が、知らぬ間にわずかに前上がりになって鼠蹊部の圧迫が増していたわけです。ライド中に気がついていたので、分解してサドルの角度を変えようとしましたが、今度はヤグラが固着していて動かせませんでした。

 

サイロンの問題児のヤグラの構造が分からなかったので、その場では軽くプラスチックハンマーで叩くだけにして、宿へ帰ってからつくばのショップへ電話して、松永店長に、左右から挟んでいるだけの構造で、ヤグラの金具が固着していることがわかったので、サドルを外してから、タガネのような小物を固着したヤグラ金具へ当てて、ハンマーで打ち出して外すことができました。サドルを前上がりから、中央から先端にかけての面を水平にセットして、前傾姿勢になっても鼠蹊部が圧迫されないようにセットしました。これでだいぶ快適になったはずです。しかし、このヤグラの固定力はやっぱり問題ですね。注意しなくちゃ。

 

もう一つ重要なのが手や手首や腕へのストレスに関わる、ハンドル周りとDi2ブのラケットの設定でした。ドロップバーはSワークスのカーボンシャローでした。手首や腕にストレスを感じて走っていたそうです。Di2のブラケットの位置を動かして、握りやすい位置を自分で探していたみたいです。ブラケットを少し動かしたことで、プラグが抜けてしまっていたようで、ライドのスタート前に、フロント変速機が動かないという変速不良が発覚しました。

 

プラグを専用工具でクリック感があるまで差し込んで、電動メカはすぐに動くようになりました。少しブラケットが動いてもプラグが抜けないように、エレクトリックコードをS字にしてゆとりを持たせてバーテープの下へ巻き込んでいるのが普通です。でも、ドロップバーの肩の部分までしかバーテープが巻かれていないので、ケーブルにゆとりのループを作りにくく、ブラケットを動かしたり、落車してブラケットが動いてしまった時などに、ケーブルのプラグが引かれて抜けやすい状態だったのです。

 

ドロップバーの取り付け角度が前上がり気味の設定でした。手首や腕にストレスが発生しています。ドロップ部分の握りやすさと、下を持った時のブレーキレバーへの指の届きやすさを実現して、10kmを超えるスーパーダウンヒルでも、ブレーキレバーを楽に引ける設定に変更しました。Di2のブラケットの上の面の、手のひらへの当たりを調整をして、腕をまっすぐにして、ブラケットを押して、上半身を支えて走るときも。肘を軽く曲げてブラケットを引いて、パワーを発揮しやすい設定です。

 

なかなか見つけにくい、固定ボルトをちょっと締め込むと変わってしまうような、微妙な位置にブラケットの上の面の角度を設定しました。悩んでいたマサローさんには、このいくつもの要素を含んでいる難しさを理解してもらえると思います。固定式のローラー台でペダリングして最適化するだけでなく、アップダウンのあるハードなフィールドを走って、地面を蹴って進み、疲れた中でのフォームやペダリングを見て、フィッターとして感じたことを反映して、これでだいぶポジションを煮詰めることができて、走りやすくなったと思います。ではでは。