クマさんのバイク専科

サドル、シートポスト、バイクパンツの合わせ技で快適に!

いつかも書いたけど、体を動かす才能のある人がいます。何も教えていないのに、最初から合理的で美しいフォームでパフォーマンスを発揮するアスリートです。動きを見ていると、そういう才能の光りをピカっと感じるものなんです。そのアスリートに筋力を強化したらとか、心肺機能や耐乳酸性を付けたらというコーチがいます。確かにその通りなんですけど。たいていの場合は、いわゆる天然物のジニアスなんですね。見てすぐに動きをできてしまったり、修正ポイントを第三者的な感覚で見つけて、こうすればできるじゃんとやってしまえるのです。

 

これは、普通の感覚ではありません。だからコーチがタレントを見出して、より高見に上れるのでは、よし、上らせようとして、今のバランスを崩す原因になる可能性が、トレーニングで発生してしまうこともあるんです。難しいところです。合理的で効率の良いフォームはバイオメカニクスや、動作解析で体の動きや使い方、重芯の移動、左右のバランス、発生するパワーなども解析されて、数学のように結果が導き出せるようになっています。だけど世界の頂点に立っているトップアスリートは、全く無駄のない動きや左右均等のバランスをしているかといえば、そんなことはありません。

 

ありきたりな言葉で言えば、荒削りな選手が存在して、今までにないパフォーマンスで従来の記録を破ったり、今は無理でも、近い将来壁を破る選手だと言われることがあります。でも、荒削りとは、パワーを無駄遣いしていたり、無駄な動きがあるということだと思います。果たしてどう無駄を削ればあら削りでなくなるのか。無駄と言われる動きを削り落としていいものなのか。無駄な動きでパワーを無駄遣いしているから、それを修正すればパワーを発揮できたり、温存できるのだろうか。

 

ダイナミックな動きの中にブレークスルーの可能性が秘められていて、削ると同時に可能性がしぼんでしまうことがないのか、そのアスリートの長所を伸ばして、短所は修正するという常識的なことが、すんなり通用しないのがスポーツの難しさです。個性として容認できるかできないかの難しい判断が必要になります。トップアスリートのコーチングはとっても難しいです。ペダリングが美しいとかスムーズとか評価されますが、パワーの無駄遣いがなくなり効率の高いペダリングが、果たして高いパフォーマンスにつながっているのでしょうか。

 

美しく足を回せるペダリングをできるライダーが、世界チャンピオンではないことも多いのです。太ももの上下を意識した、パワフルだけど踏み踏みのペダリングという現実も存在します。全力を発揮するために、バイクを小さく左右へ振っていたり、上半身をペダリングに合わせてリズミカルに動かして、脚のパワーを振り絞って走っていることもあります。きっと、長い時間効率よく走るには、荒削りなペダリングから、効率のいいペダリングへ移行するのは正解だと思います。でも、上半身がピタリと動かない、足がキレイに円を描いているフォームでなくてもいい気がしています。

 

左右のバランスが完璧なライダーはほとんどいないし、利き腕や利き足が存在するので、それはバランスが悪いのではなく、いい動きをリードする腕や足の動きだと利用すればいいのです。ペダリングは人間にとって不自然な動きですが、継続的にパワーを人間エンジンから引き出す動きです。だからこそ効率のいいペダリングの動きを知って、動きを身につけることを意識して、トレーニングメソッドに沿って。脚の動き、腕で上半身を固定したり、時間をかけて取り組む必要があります。

 

マッサンにその話をしたら、具体的にどうすればいいのか聞かれました。バイクの経験は5年くらい、足を円く回すことをペダリングの基本イメージと思って取り組んできたという。僕やマッサンの世代にはわかるんだけど、足踏み式の脱穀機の足を上下させるイメージでやって見てと伝えました。脚を動かすのに、体幹に近い太ももを上下させることを意識するペダリングです。足をペダル軸の描く円に沿って円く回すイメージを捨ててしまいます。足が上死点に近づいたら、足首の角度をそのままに保ち、軽く太ももを上げて、足はスムーズに上死点を通過させます。なるべく早く足を踏み込みたいと、斜め前へ足を押し出すというイメージも捨てちゃいます。

 

上死点を足が通過したら、太ももを押し下げればいいのです。すると、足を斜め前へ押し出すことを意識した時よりはるかに早く、踏み込む動作が始まります。2時、3時、4時の位置まで一気に踏みおろせるようになります。実際には5時から6時の位置まで足が踏み込んでいます。6時の下死点の位置を足が通過するときには、足を踏み下ろす力を抜いて、踏み下ろしてきた、それまでの足の勢いで下死点を通過させるイメージです。余計な力を入れることで、反対側の足がクランクを踏みこむ動作の邪魔をしないようにします。これ重要です。

 

前回の黒姫合宿でアドバイスして、2ヶ月ぐらい太もも主導のペダリングの改造に取り組んできて、9月の黒姫合宿では、足が上下にスムーズに動き、ケイデンスは上昇して、2ヶ月前とは別人のようにスムーズにクランクが回るようになって、黒姫高原周辺のアップダウンも上れるようになったし、巡行スピードも明らかに上昇しています。トップグループに付いて走れるようになっていて、参加者を驚かせていました。膝から下の筋肉群への負荷が減って、ペダリングが効率アップしています。ライドの後半でバテなくなっていました。

 

マッサン、今週のSRMで実施したクリートの取り付け角度の調整はどうでしたか。クリートのキャッチ&リリースもしやすくなったと思いますし。踏みこむ時に内外ヘ動いていた膝の位置も安定したと思いますが、どうでしょう。サドルの理想的な位置と、痛みが出ないサドル探しが今週末の課題ですね。WRのRSRのシートセットバックできるカーボンシートポストと、パッドが少し厚めの軽量なレーシングサドルと、アソスのS7パッド付きのバイクパンツの組み合わせの合わせ技で、お尻は快適になるはずです。ショップでセール中のアソスのMサイズのレーシングフィットのバイクパンツがフィットしたら、手に入れてみてください。快適走りを追求しましょう。お手伝いします。ではでは。