クマさんのバイク専科

「やれることは全てやる」の信頼度の違い!

台風15号の被害に続いて、死者が70人以上出た台風19号の被害からの回復に関する国会の政府答弁で、総理大臣は「やれることは全てやる」と答えていました。でも、学校開設などの件で国民の期待と信頼を裏切ってきたし、国会中継でテレビカメラの向こう側で国民が見ていることを百も承知、確信犯的に野党議員の質問に対する答弁をはぐらかす名人の、この人の口から「やれることは全部やる」と聞いても、額面通りにこの言葉が、ストンと腑に落ちないのだ。

 

都内のある避難所で、ホームレスの人が避難してきて、住所不定だから締め出したという。その避難所を仕切っていた人は、区のルールに従って、区に在住の人しか避難所に収容しないというのを守っていたという。ということは住所のない人は当然ダメというわけ。でも、その避難所の人や物資の出入りを仕切っていた人も生き物でしょ。血は通っているわけだよね。奥さんや子供もいるんじゃないのかな。一方では命を守ることを優先してください。直ちに全員避難してくださいとインフォメーションをしていたわけです。

 

まるで、被害が出たとしても、私たちは皆さんに危険の高さをお知らせしましたからねという、自治体のアリバイ作りのようなインフィメーションとしか思えません。状況は場所によって細かく違う訳で、ふじみ野市に全員の避難命令が出たんですけど、高台もあれば駅周辺の低い場所もあるので、豪雨と風の中を安全な場所への避難を促進する情報は、すぐに、この大雑把な避難命令が不適切なことを理解できました。

 

大雑把も極まっていてすごいのは、大宮市、浦和市、与野市などの合併した広大な地域が、全員避難命令ですから、ハザードマップが全戸に配られているそうです。こんな各地の状況を反映していない、いい加減な避難命令が今後も行われるのでしょうか。もうとっくに台風は接近していて、大粒の雨が降り注ぎ、強風が吹き始めている時間帯に避難しなさいという、人騒がせで、いい加減なアラートならいらないと思いました。あの豪雨の中を車椅子の人や、高齢の人や子供に、どう避難しろというのでしょう。

 

避難所に逃げ込んで来たホームレスの人は、結局は逃げ帰りました。区の人は、生きている人の避難所への収容をどうして拒否したのでしょうか。困っている目の前にいる人の安全より、その人には区の定めたルールが重要だったわけです。人としてどうかという憤りを感じます。区長は謝罪会見をして不適切な対応だったと言っていましたが、台風の中に放り出されて人が死んだかもしれない可能性を思うと、不適切で済まされることなのだろうか。ヒエラルキーがどうかしているんじゃないか。

 

国会中継で「やれることは全てやる」と、5000億円の予備予算を投入して災害からの復旧に対応するいう、総理大臣であり、自民党の総裁の方のお言葉を聞きましたが、この人のこの言葉の真意は「やれないことは何もやらないよ」と広く国民に宣言しているとしか思えませんでした。多分そう思っていると推察、いや、忖度させていただきます。台風が過ぎて、ワールドカップラグビーのスコットランドと日本戦は、新横浜の遊水池の上に建てられたマルチユースの球技場で行われました。周辺の駐車場は水没して、川の溢れるのを防ぎ、街を守る場所になっています。朝、主催者がグランドをチェックして、今回の台風19号で溜まった遊水池の水を抜いて開催されたわけです。

 

交通も回復して、6万人を越える観客が集まりました。もちろん日本のホームゲームのようなものです。心配されたグランドコンディションも。遊水池、そういう場所なだけに、グランドの排水は十分に考えられています。日本チームのために入念に育てられた芝生は、排水のいい土壌を作るところから始められて、その土壌にくまなく芝生の根を巡らせて、グランドと足のグリップを高めるように、そしてめくれにくく、職人が入念に育てたものです。雨によって足元が滑るのではと心配していました。

 

日本の軽量フォアードは、スクラムを筋力と押す方向をコントロールするテクニックで、押されないスクラムやモールを実現していました。それにはグランドのグリップが重要なのです。新横浜の芝生は台風の雨を含んだにも関わらず、日本のスクラムを土台から支えてくれました。スコットランドとサモアとの戦いを見て、サモアが決勝リーグ進出の希望を失っていたとはいえ、スコットランドの2軍との試合で大差で負けたのを見て、3日後の日本戦に出てくるのは温存した1軍だから、これは勝ち目がなさそうだなと思っていました。

 

中盤、日本チームは強いスコットランドのサイドアタックに、ディフェンスが倒壊して2トライを許しました。スピードを誇るディフェンスも完全なパワー負けで、このまま同じサイドアタックを繰り返すパターンで攻められたら、ズルズル点差をつけられるのかと思いました。ところが日本チームは体力的なダメージを受けていても、誰も諦めていませんでした。タックル、モール、ラックに走り込んで、倒れてはすぐに起き上がって16人目、17人目のプレイヤーとなって「やれることは全てやる」を80分間通してやって、局面局面で数的優位を保っていました。

 

「やれないことだって仲間のために諦めないで全てやる」という勝つために自分がどうなろうと、勇気を持って挑む日本チームの一人一人の素早いプレーに涙が溢れました。殴る蹴るの相手をダウンさせる格闘技じゃこんな感動や興奮は感じたことがない。こんな究極のフルコンタクトスポーツはラグビーだけだなと思いました。すごい奴らだ!。ワールドカップで1勝もできなかったころ、いつになったらオセアニアやヨーロッパのラグビー強国に勝てるようになれるのか。アジアのチャンピオンが手も足も出ないとか、テストマッチのキャップ数を取り消された屈辱から立ち上がれるのか。

 

今大会は3勝してボーナスポイントも獲得して、臨んだスコットランド戦を見て、外国人ヘッドコーチを招聘して、日本がこの8年で挑んできたことが、おぼろげだけどその取り組みのすごさを感じることができました。おめでとうございます。ありがとうございます。いいもの見せてもらいました。リーチさん、もうこれ以上体を痛めつけないでいいよと言いたくなってしまうほどの善戦ぶりです。これから先はもうおまけでいい。次の世代の課題に残してもいいくらいです。南アフリカ、オーストラリア、ニュージランドなんて3強国を相手にどこまでいけるのか。いつ討ち死にしようとおかしくない領域にまで達しています。もう、勝ってしまったらどう喜べばいいのかわからない。

 

その「やれることは全てやる」という聞こえのいい言葉の真意を、「やれないことは全てやらないよ」というしか思えない、信頼できない総理大臣の発言は、コントラストとして恥ずかしいほどくっきりしている。できることは全て取り組んで築いて来た、日本チームの選手やヘッドコーチなどとの信頼関係と、俺たちはできるという自信が生んだ4勝の快挙。この先はどこまで行くかはわからない。この快挙を政治的なアクセサリーとして利用しようと、マスコミを集めて総理大臣は声をかけるだろう。見る人は何を感じるのだろう。ではでは。