クマさんのバイク専科

ハブやヘッド小物やハンガーのベアリング

ハブ、ヘッド小物、ハンガー、フリー、ペダル、自転車のパーツの回転部や摺動部にはボールベアリングやニードルベアリングが採用されています。ボールベアリングには鋼球とファインセラミックが採用されています。製品によっては衝撃などに強いカップアンドコーン形式と、本体に圧入されていて高精度で消耗したら交換で対応するシールドベアリングがある。バラ玉を一定間隔でホールドして交換が簡単なリテーナーなども採用されています。

 

独特のベアリングシステムを採用しているのが、初代のデュエエースのトウクリップ&ストラップモデルに始まる片持ちのペダルシャフトだ。ピストのスプリンターだった長義和氏が開発したペダルだ。

ヨーロッパの周長の短い333m以下のバンク角が急なトラックででもペダルの外側が路面に接触しにくいことを考えて開発されている。そのためにテーパー状のペダルシャフトで、先端部分のベアリング数を減らしている。

 

当時のペダルと言えばカンパニョーロのロードタイプか、ピストタイプで、内外に同数のボールベアリングがセットされていて、クリテリウムで直角コーナーを曲がって、いち早くペダリングを始めるとペダルの外側が路面をかくので、ピストペダルを採用しているライダーが多かった。ピストでは日本の500mや400m周長のバンクより、バンク角が急なので、出すとキャップを外してピストペダルのプレートやベアリングが収まるバレルの外側を削って使っていた。

 

これがピストやクリテリウムを走っていた長さんの経験から、ロードクリアランスを大きくしたいと設計したのだ。後のSPD-Rビンディングペダルになっても、最新のSPD-SLになってからも、デュラエースグレードのシャフトにこの構造は採用されている。ベアリングシステムは、外側が少数のボールベアリング、中間に圧力に強いニードルベアリング、内側がボールベアリングで、分解してグリスアップできる。

 

アルミボディやカーボン混入プラスチックボディにねじ込まれている、内側にあるロックリングとカップの締め合せで回転部の玉当たり調整を確実にできます。この構造はペダル軸から足の裏までの距離を近くするロープロファイル設計を実現しています。最新のSPD-SLにもこの構造は受け継がれて踏み込む足の安定化を実現しています。バイクシューズのソールとの接触面積の大きい設計ロープロファイル設計は、ルック、タイム、スピードプレイのデザインに影響を与えています。しかし、ボールベアリングは小径のシールドベアリングが圧入されています。発生したガタを完全に解消するのは結構難しい構造です。

 

最近の回転部分の傾向としては、ハブもハンガーのボールベアリングの径を小さくして、ボール数を増やして、カップ&コーンの場合はベアリングとボールレースとの接点を増やし、シールドベアリングはケーシングを小さくしても接点を多くして、圧力や衝撃を分散させる構造です。回転部分の小型軽量化が可能になります。気になるのは回転部の耐久性で、ボールベアリング径が小さくなって、定期的なグリスアップをしていても、ややスムーズに回転する時間が短くなったような気がします。スモールパーツの交換やシールドベアリングの打ち替えで対応します。

 

スチール製の鋼球は真球度がかなり高精度で追求されたものが採用されています。セラミックボールベアリングは軽く高硬度で、高回転や耐熱性に優れた毎分当たり2万回転などの高回転や高熱下で作動する、ターボチャージャーやタービン向きのボールベアリングです。毎分当たりの回転数が200回もないし,荷重も小さく、高温にもならないので、自転車パーツの回転部として採用するには、特性が少しオーバースペックな感じもしますが、軽量化を実現できます。セラミックボールベアリングで気になるのは金属製のボールレースや、ケーシングへの攻撃性です。

 

鋼球のベアリングは、組み合わせるボールレースやコーンは、表面硬化処理したスチール製で表面のみを硬化させる、浸炭焼き入れされたものが採用されて、かなり長期間使えます。セラミックベアリングの場合も浸炭焼き入れされたボールレースと組み合わせる場合もありますが、特殊なステンレスに表面硬化処理した、強化したボールレースを採用して、耐久性を高めているものもあります。セラミックボールベアリングは、ボールレースに対して攻撃的で、通常のスチール製のボールレースでは、ボールベアリングの接触する部分が消耗しやすい傾向があります。セラミックボールベアリングを組み込んだシールドベアリングも、ボールの触れるケーシングは強化されたものが採用されています。

 

カンパニョーロもシマノも、ハブはカップ&コーン形式や、玉当たり調整ができる形式を採用しています。マヴィックのハブは初期モデルからシールドベアリングを採用していましたが、最近のモデルはシールドベアリングでありながら、カバーを専用ハブスパナで締め込むだけで玉当たり調整できる特殊構造になっています。それでもマヴィックのシールドベアリングが玉当たり調整ができなくなってガタが発生するようになると、シールドベアリングを専用工具でハブから抜き取って、新しいシールドベアリングを専用工具で押し込んで、交換して対応すると解消できます。1度引き抜いたシールドベアリングは使用できなくなります。

 

ボールベアリングの寿命は、カップ&コーンタイプなら、1万kmくらいでグリスアップやベアリングやボールレースの確認が必要で、3万kmくらいでベアリングの交換が望ましいでしょう。シールドベアリングなら5000kmから1万5000kmと言われています。いずれのメーカーのハブのボールベアリングも鋼球の径が小さくなってベアリング数が多くなっています。カンパニョーロはカルトなどのセラミックボールベアリング採用のモデルが用意されています。マヴィックもシールドベアリングにセラミックモデルが用意されています。

 

セラミックボールベアリングは、グリスやオイルがいらないそうですが、回転時のシャラシャラという音が気になるので、粘度の低いグルスを入れると静かになります。カンパニョーロはセラミックボールベアリングに、ステンレスカップの耐久性性を高めるコーティングを施した上級モデルのカルトと、通常のスチール製カップのUSBの2モデルがあります。フレームのハンガーシェルの規格は、イタリアン、BSC&JISでしたが、現在はオーバーサイズ化されて色々なものが採用されています、当然ハンガーの多様な規格に合わせて、純正品やサードパーティからボールベアリングとカップが用意されています。しかもシマノ用、カンパニョーロ用、スラム用が用意されています。現在主流の規格は30mm径ハンガーシャフト対応のオーバーサイズで、86mmハンガー幅のBB386 ですね。専用カップモデルを用意すればシマノもカンパニョーロの24mmモデルも、スラムの24mmモデルもセットできます。

 

軽量化や回転のスムーズさや耐久性を求めて、メーカー純正とサードパーティー製のセラミックボールベアリングモデル採用のチューンナップパーツも増えています。シマノやカンパニョーロはパワー伝達効率や剛性や強度は十分と、24mm径のハンガーシャフトを採用していますが、フレームのハンガー規格の多様化には、各規格に合わせたカップを用意してクランクをセットできるように対応しています。クランクの剛性アップや、フレームのハンガー周辺の剛性アップやコンポーネントパーツメーカーの製造スケジュールの支配を避けるために、完成車やフレームメーカーは、オーバーサイズハンガーの規格を提案、BB30という規格の中には構造上回転部にガタが出やすいハンガー小物もあって、ウイッシュボーンなどガタ防止が目的で左右のカップを締め込んで固定する構造のモデルも用意されています。ではでは。