クマさんのバイク専科

日本のロードレースは大丈夫か!

東京オリンピックが決まって、IOCの調整委員会や競技を統括するUCIには、日本の自転車競技団体が調査して、プレゼンテーションも終わって、ほぼ決まっていた奥多摩周辺のロードレースのコースの提案を、突然却下して、これぞ日本という富士山がTV画面に映り込むエリアへのコース変更をIOCが求めてきた。東京開催のオリンピックはコンパクト化を売りにしていたはず。IOCの提唱していたセーブマネー、エコ、エリアのコンパクト化というお題目はどうしたんだろう。やっぱりもっともらしい建前を全面に押したてて、集金に執着する集団なんだね、アスリートファースト、世界平和と言ってるけど、リスペクトとは程遠い感じがする。

 

富士山があるのは東京から100km以上ある、静岡県や山梨県にあるのをIOCは本当に知っているのだろうか?。「フジヤマ・ゲイシャ」アメリカ人やヨーロッパ人が知っている有名な観光スポットをロードレースのコースに入れて、沿道の応援に芸者や舞妓さんでも動員することで、日本への観光誘致を世界へアピールできるでしょというのが日本の実行委員会へのコース変更へのポイントだとでも言うのか。富士山は同じ日本列島にあるけど、ホストシティにはほとんど関係ないだろう。

 

事前のIOCや現場へ役員を派遣して自転車競技を統括するUCIへのプレゼンテーションは、コースのビデオも公式の書類も添えられて、とっくに終わっているんだから、「今更、や〜だよ、もう知らない、自分でやって」と、実行委員会はIOCに言ってやればいいのにと思っていました。それまでの日本側の取りまとめの苦労をなんだと思っているんだ。IOCはオリンピックという錦の御旗を掲げているからこれくらい大丈夫でしょ、言うこと聞いてねと、手間暇かけて調査したり、道路管理者との調整があって、IOCとのミーティングが行われて、普通の手続きを経て一旦まとまったことが、簡単に覆されて、ということがまかり通っているとしか思えない。

 

IOCのご意向だか、北米の放映権料をいっぱい支払うTVネットワークのご意向だか知らないが、マラソンの札幌移転も、北米時間のゴールデンタイムに合わせてロードレースのバイクにライトを点けて、深夜開催だって言い出しかねない。なんでも受け入れちゃいそうな実行委員会の元総理だから、大会招致都市で持ち出し金の大きい都知事の東京アピールの意向をすっ飛ばしても平気なわけだ。日本の自転車競技連盟の実施団体の今までの努力をかえりみず、危惧も聞く耳持たぬで、「うん」と言ってしまい、急遽、コース作りが行われたわけです。

 

TV映えする映像作りのために場所は大きく変更されたわけです。東京をスタートして都知事の顔を立てて、トンネルの多い道志道を通って山梨県へ入り、ここでの中継電波は中断しない方法があるのかな、空が見えていれば、上空にジャイロ付きアンテナ装備のヘリを交代で飛ばして、マイクロウエーブでリアルタイムで繋げることはできるのだが、どうなるのかな。民放なら、トンネルに入る寸前にコマーシャルを流して、出るまで流せばいいか。

 

周回コースでの展開は、腕っこきのバイク乗りとカメラマンの組み合わせが何組も、ヨーロッパから連れてこられ、きっちりホローすることになるでしょう。山中湖畔へ下るワインディングロードを、時速70kmくらいで集団はスリリングなスーパダウンヒルをすることになる。富士五湖周辺のアップダウンの激しい、日本人選手のもっとも苦手とするパワー比べの周回コースを走って、トヨタの運営する富士スピードウェイへゴールする。どう見ても日本人選手にメダルを取らせよう、入賞の可能性をと配慮したコース作りではなさそうだ。

 

しかし、IOCはレース当日の富士山周辺の天気をコントロールできる魔法でも知っているのだろうか、世界への富士山の映像の配信は思惑通りにいくのだろうか。確かに、晴れていれば山中湖に映る逆さ富士の美しいビューポイントがあるけどね。曇ったり雨なら何にも見えないだろうね。もちろん走っている選手は、富士山を眺めているどころの騒ぎじゃない。山中湖への下りは油圧のディスクブレーキ装備でコントローラブルになっているとは言え、勾配もきついし、コーナーも急なので、リスキーな走りを要求されることは間違いない。

 

富士山周辺の周回道路は、風の強さや方向がコロコロ変わることで知られている。しかも風を遮るものもほとんどない。湖を過ぎる度に急勾配を上って下るコースで脚をどんどん削られる。逆に言えばどこもかしこもアタックポイントだらけだ。コースの厳しいワンデイレースだけに、どの逃げが成功するのかわからないから、常に集団の前で展開して、トップ集団に残るには緊張を強いられる。日本人選手の出場枠は2人だから、誰が選ばれようとチームプレイも何もありゃしない。

 

有力国のような、レース状況に合わせて繰り出せる複数のエースを立てられるような、有力なタレントもいないし、人数を使ってアシストするような戦略も戦術も必要なく、他力本願寺の住職を決め込んで、集団内で力を温存して走るしかないだろう。このコースレイアウトでは、自分で動けば相当厳しい状況になるのは間違いない。これぞ本物のアタックだと思ったら乗っていくしかないだろう。流れを読み間違えれば無駄脚を使ってメダルどころか完走も難しくなって、レース終了だ。浅田監督も指示の出しようがないとうのが本当のところじゃないかな。

 

ところで、パンデミックの終息が見えないこの状況で、IOCはオリンピックを開催する方向へ進んでいるように見えるけど、本当のところはどうなのだろうか。ここで選手ファーストの選択をしないIOCがいたとしたら、スポーツで世界平和をと言うオリンピックが、大会の継続の意義が問われることになりかねない。開催されれば、どういう状態で行われるのだろう。開催が中止か延期なら、これもリセットまでがまた大変だ。放映権を獲得しているNHKも民放も、スケジュール通りにやらないとなれば、ぽっかり放映コンテンツが無くなるのだから大変だ。NHKは大河ドラマアーカイブとか、ドキュメンタリやプロフェッショナルの流儀でも流したらどうだろう。

 

7月のオリンピックの中止や延期された時を想定して、TV局や高校代理店は動き始めていることは間違いない。オリンピックの穴埋めをする番組作りか、穴埋めコンテンツの契約が進行しているはずだ。オリンピック番組のスポンサーはどうなるのだろう。昔の映画でもでもかき集めて視聴率は玉砕覚悟でガンガン流すのかな。放映枠が長いから、海外人気ドラマシリーズのシーズン1から最新版まで連続放映でもいいかもね。パンデミックは想定外のまさかの出来事だったろうな。ではでは。