クマさんのバイク専科

ロードの日本代表の選考方法は!

どうやら2020東京オリンピックのロードレースは、日本人男子選手は2人出られるらしい。プロチームに所属してジロやツールで走っているのはご存知の2選手だ。ステージレースを完走できるし、場合によっちゃ逃げも決めてみせる脚もある。UCIポイントも獲得していて、日本人選手としてはUCIポイントランキングの上位にランクされている。世界選手権やオリンピックのロードレースをプロが走るようになって、対応して集団に入って走るには、ヨーロッパでのレース活動をこなし、レース展開の読みも含めて200kmオーバーの厳しい走りに慣れていることがレースを完走する最低条件だ。

 

ジロやツールなどのメジャーレースのステージ優勝、世界選やオリンピックやクラシックなどのワンデイレースの優勝も、半端な走りではたどり着けない場所だ。東京でメダルは力を付けている新城選手にしてもかなり厳しい課題と言える。ワンデイだからこその金メダルを取りに行く集中力は半端じゃないのだ。地元の新城選手にしたって、ハンドボール選手からの転向で、体のダメージ的にはまだ伸び代が残されているだろうが、レース経験を積んでいるし、ピークへ持って行く体調管理も把握しているように思う。

 

気持ちの強さは何度もアクシデントにあって、這いずり上がって成績を出して証明している。実力を信じてくれる浅田監督や、復帰を支えてくれるドクターやトレーナーなどのスタッフとの信頼関係も確立していて、レースに出れる幸せを噛み締めているだろう。年齢的には35歳と普通ならピークを過ぎているはずだ。トレーニングやレースからの回復の早さなど、ギリギリに来ているだろうけど、経験値は日本人選手に限らずバーレーン・メリダの中でも圧倒的だ。東京で活躍するぞという、その思いは半端じゃないはずだ。

 

個人的には日本代表を決めるなら、UCIポイントのランキング通りに選ぶのが妥当と思っている。実業団チームの人数によるレース展開への影響が大きいので、日本のロードレースで上位に入ったとしても、トッププロとの展開になるので、オリンピックの完走も難しいだろう、メダルの可能性など語れない。それは日本で走っている選手自身が最もわかっているだろう。例えばロードレースは個人競技では無いことは知られている。チームがアシストしてこそのロードレースだ。全日本選手権を見ればわかる。新城選手はバーレーン・メリダ所属で単独で参加している。

 

新城選手の動きを日本をベースに活動している有力チームはチームでマークして走ればいいのだ。エースを決めて温存させれば、流石に単独で走っている新城選手と、かなり力の差があっても、なんとか対抗できるというわけだ。その包囲網を破って勝ったこともあるがそれはなかなか難しい。もし、そういうレースで日本代表を決めるとしたら、本当に日本で最も強い選手を選べているのだろうか。対外的には全日本選手権の一発勝負の勝者が日本一の選手で日本代表だと、最も説明しやすいだろう。ところが世界の主要レースに出ている経験が少なく通用しないとしたら、この方法で選抜していいのだろうか。

 

単独対チームでの戦いで、全日本選手権で優勝した国内主戦場の選手は、見かけの強さはあったとしても、オリンピックで戦う場は世界のトッププロが相手なのだから、手も足も出ないどころか、集団の隊列にも入れてもらえず、序盤からちぎれる可能性もある。プロの走りは終盤50kmくらいに本格的なスイッチが入り、時速50kmオーバーという展開もある。世界選やオリンピックのワンデイレースの場合は、序盤に顔をみたことも無い、怪しい走りの選手を振り落とすために、いきなりスピードを上げて揺さぶりをかけることもけっこうある。

 

プロの走りは時にエリートのレースより集団のペースが遅くて勘違いされることもある。ジロで日本人選手が100kmを超えた逃げを決めた日がそうだった。平均時速40km前後で、ドロップバーの上の直線部を持って走る大集団の前で泳がされていた。その日は比較的平坦コースで、集団の力を発揮しやすいという了解がピンクのリーダージャージを着ているエースがいるチームも、ライバルリームも、このステージではタイムのやりとりの可能性は低いという読みもメイン集団にはあったわけだ。

 

個人総合に全く関係のない日本人選手は、単独で序盤から逃げて、メイン集団はこの動きを容認した。時速40km程度で走って、メイン集団との差をどんどん広げているように見えて、かなりの時間差になって、あと60kmになってもメイン集団はドロップバーの上を握ったままだ。ところが、残り60kmを切ったところから、監督からの指令が出たのだろう、メイン集団の選手がハンドルをお持ち替えて、チェイスのスイッチが入ると、どんどん間隔が縮まった。時速40km対時速55kmの追いかけっこだから当然だ。そのステージをリアルタイムで見ていた日本のファンは喜んだはずだ。

 

盛り上げ役の解説者も、日本人選手が逃げていると煽るアナウンサーも、心の中ではわかっているのだ、そりゃ平坦コースを単独で走っている時速表示を見ればわかるじゃないか、チェイス集団のスピードがどこまで上がるかを知っているのだから。数分離れていても、このスピードじゃ、あと60kmもあるのに、逃げ切りは無理だと。これが、逃げのスピードが単独で時速50kmキープなら、ちょっとは焦ってくれたり、やるな〜と感じてくれたかもしれない。日本選手でもタイムトライアルの1時間なら50kmをキープできるライダーはいる。だけどプロのロードレースの終盤の勝負所で、その力を有効に発揮するのは難しい。ましてや時速40kmでは絶対に逃げきれない。

 

レーススタート直後のふるいをかけるような高速走行は、安全に道中を走るためにもよく行われるし、いざアタックという場合も、逃げ集団をキープするために協力しあえる選手を見極めるためにも利用される。ヨーロッパのレースでメイン集団を走っていないと対応できないのはこういうところにも理由がある。さて、まだ内定も出ていない、ロードレースの日本代表選手はどういうプロセスで選ばれるのだろう。いずれにしろ、全日本チャンピオンとかの見た目の強さではなく、内外のレースで海外の選手と戦っていて、上位に入ってUCIポイントを獲得している選手で、オリンピックのワンデイレースで前を走れて通用する選手であってほしい。

 

だってロードレースの中継を見ていて最後までメイン集団で日本人選手が走って、富士スピードウェイに現れて、あわよくばメダル獲得や入賞という夢を見たいからね。ところで日本の地上波や衛星放送で、ロードレースの中継はあるのかな。このコースに行って生で見たい気もするが、集会コースの沿道に行っても、最大で2回集団を数秒見れるだけだから、やっぱりテレビ観戦がいいかもな〜。

 

ところでこのコースが雨に弱くて、ここ数年で2回も倒壊して、大修復工事をしている。この間も台風で土砂が崩落して、道路が流されて、7月のオリンピック開催へ向けて、地元の自治体がもう手を出せなくて、国のオリンピックの特別予算で、大慌てで修理したばかりだ。2020年の7月までに台風が来ないことを祈るしかない。世界の雰囲気は延期に傾いているけど、どうなることやら。どうせなら涼しい季節に延期したらどうだろう。東京でマラソンも可能になりますよ。ではでは。