クマさんのバイク専科

3、11からの復興五輪と言えるのか?

3、11から9年が経過した。ギリシャで聖火が点火されて、マラソン金メダリストが聖火を持って走り始める、2000人が立ち会うはずだったが、新型肺炎のパンデミックが原因で、参加人数が100人に縮小されたという。近くのイタリアでの流行により中止や延期の噂もあったが実施される。聖火はトーチに収められて、福島県へと移動して、聖火リレーが始まるのだ。3、11の地震の発生から9年が経過しての東京オリンピックだ。誘致の時にはプレゼンテーションで首相が日本のデレゲーションの一員として出席して、福島の原発事故はアンダーコントロールと発言した。

 

福島の原子力発電所群は、電力会社の社員や地震の研究者が大地震や大津波を心配していた、が電力会社の旧経営陣は危険を認識していながら、他の電力会社に大津波発生の可能性の検討書の記述に付いて共同歩調を取るように求めて、100億円規模と社内で検討されていた具体的な大津波対策を先送りして、3、11に大津波に襲われた。原子炉事故の責任追及の裁判で幹部が発言したように、大津波の発生を幹部が認識できていなかったのなら、社内で大津波対策が試算されたり、昔あった地震と津波の研究の評価とかの論文を過小評価したり、現状の改善点も社内で検討されているのだから、元幹部が認識はなかったとはつじつまが合わない。

 

当時の電力会社の元幹部が直面していたのは、トラブルを起こしていた別の原子力発電所の再稼働認可までにかかる莫大な費用のことや、福島の原子力発電所群の1つを、使用済み核燃料を回収して、東海村の原燃で再利用できるように処理して、燃やせば燃やすほど燃料が生まれるという、夢の核燃料サイクルというプルサーマル方式を採用した原子炉を作る方だった。政府がプッシュする、この試験プラントを福島県の原子力発電所へ受け入れると、福島県は100億円という助成金が転がり込むという話が進行していたので。いつ来るかわからない大津波対策よりそちらが優先されたのだ。

 

元幹部が認識していなかったという大津波が来てしまい、外部電源も緊急電源も水没して失って、原子炉の冷却水の供給が止まった。自衛隊の双発大型ヘリのバートルが水桶を抱えて注水したり、消防車ががはしごを伸ばして放水している動画が印象に残っている。原子力発電所の原子炉のカプセルが水素爆発で壊れて、核物質の燃料はステンレスチューブに収まって核反応を起こして熱を発生する臨界をコントロールされていたが、冷却水を失って、核燃料棒が溶けてしまうメルトダウンを起こしていた。当然、放射性物質は空気中に飛び散って、風の向きや強さによって拡散して放射線による汚染が始まった。

 

政府は福島県の原子力発電所周辺の住民に避難勧告して、立ち入りはもちろん、住むこともできなくなって、家族との日常生活や職業を奪った罪は重い。放射能は福島県だけでなく、南へ吹く風にのって関東地方を中心に広く降り注いだ。茨城県内の田んぼのお米も汚染されて放射線が異常値を示して廃棄されて補助金が農家へ支払われた。霞ヶ浦へも降り注ぎ、湖に生息する小魚が汚染されて、釣った魚は自己責任で食べてくださいという立て看板が、サイクリングする護岸の道路へ設置されていた。霞ヶ浦周辺の作物は大丈夫なのだろうか?。

 

大気中に撒き散らされた放射性物質は風に乗って、原子力発電所周辺だけでなく、各地に異常値を示すホットスポットが発生したので、学校のグランドの表面の土を取り除いて入れ替えたりの除染作業が行われたことを思い出す。除染作業をしにくい雑木林は取り残されたままだった。茨城では、もうそういう記憶は薄まっていて、収穫したお米が廃棄されたことも、まるでなかったことのように、この話題には触れられなくなっている。その後に汚染された田んぼが放射線チェックを受けていることも地元新聞やSNSメディアでもほとんど報道されていない。風評被害を起こしかねないと、デリケートな扱いになっていることは間違いない。

 

さて聖火リレーは福島県から始まる。3、11からの復興五輪として誘致したからだ。聖火リレーは東京五輪の盛り上げイベントだ、オリンピック憲章じゃないけど、参加することに意義があるらしい、本来、聖火ランナーは名誉なこととされている。韓国のNPO政治団体が防護服にガスマスク姿の聖火ランナーの放射性物質の存在を連想させる東京五輪のポスターを作っている。全く事実無根で不愉快だという見解が官房長官から発表されたが、本当に事実無根だったのだろうか。

 

毎日海外へ向けて発表されている福島の放射線値は本当に信用できるのだろうか。国内向けには国民がパニックを起こす可能性があるからと、わざわざ税金を投入してスーパーコンピュータを導入して構築した、放射性物質の拡散情報の予想画像を日本では見ることができないようにした。放射性物質の拡散情報の予想画面は海外には公開されていたので、海外からの情報で、日本国内で暮らしていた外国人が、慌ててチケットを手配して、国外へ退去して行ったのだ。日本の政府は共産党支配の中国で行われている情報操作を指摘している場合じゃない。

 

都合の悪いことを国民の目から隠すということでは、日本政府のやり方は、世界の情報の透明性から考えると、情報公開のガバナンスの世界ランキングで上位にランキングされないどころか、下位に低迷している理由が見えてきた。国民は自由に感じていて不満を感じていないかも知れないが、これこそが真実なのかも。聖火リレーがスタートする福島のコースは、果たして安全なのだろうかと思って、注目していると、コースの放射線量はなんと自然な状態の平常値の7倍の数値が出ているという。いまだに立ち入り禁止や滞在不可の地域が残っているのだから、当然といえば当然の結果なのかも知れない。

 

聖火リレーを、通常の放射線量の7倍という環境の地域を走らせて、福島の復興を東京五輪を契機にアピールすることが、本当の復興につながるのだろうか。7倍の放射線量が直ちに体調に影響が出るのか、将来のリスクになるのかは知らないが、この地域の聖火ランナーには首相と奥様が手を繋いで走られてはどうだろうか。7倍という環境の中で聖火リレーのランナーを走らせていいのか悪いのかの判断は科学的にはできないけど、レントゲンとかMRIで被曝するのとどれくらい違うのだろうか。きっと専門家の見解では7倍の環境でも問題ない数値なんでしょうね。

 

撤去技術も確立されていないので方法も決まらず、お役所の発表した根拠のない撤去期日だけが一人歩きしているが、いつまでに分解撤去できるかわからない、デブリの撤去先も決まらず、原子力発電所のメルトダウンを聖火リレーで風化させようとでもいうのだろうか。2020年の3、11に向かってだったのか、9年目の福島は復興していることをアピールするTV番組みが増えている感じがしませんか。試験操業して全品検査を受けた魚介類を販売しているという、市場近くに開店したお店が紹介されていました。

 

放射線チェックされているシーンはなく、試験操業している漁師の魚を獲る喜びが語られて、魚影も濃く豊漁という。そりゃ、試験操業以外の船が出ていないのだから当然の結果だろう。他県から来たという若い店主が魚をさばいて、店内のテーブルに刺身の皿を置いて、若いお客さんに提供していた。「安くて美味しい、また来ます」という復興を示唆するコメントが聞かれた。牡蠣や貝類の養殖をしている漁師も登場して、1年育てた牡蠣を見せていた。「常連客が楽しみに待っていてくれる」という。でも、その平穏に帰った湾に向かって、壊れた3基の原子炉への注水で発生しているトリチウムの残った放射能汚染水を基準値に薄めて大量に海洋投棄したらどうなるのだろう。

 

魚を獲る試験操業もなぜ行われているのか。魚の獲れる量や種類のチェックでもない、獲れた魚の放射能汚染の数値のチェックが行われているのだ。そして、検査を受けてパスした魚が市場に出される。どこの海で獲れたかは仲買人も百も承知で値を付ける。卸しもそれを百も承知で値を付けている。試験操業で水揚げされた魚がいくらで取引されるかの市場調査が行われている。原子力発電所のメルトダウン前の市場価格と、メルトダウン以降の魚の市場価格との差を確認することで、この漁港の漁協に所属する漁船の補償金の金額が査定されているのだ。その差額こそがメルトダウンの被害の真実を物語っている。

 

TV番組はお店で刺身を食べていたグループのコメントや、市内の寿司屋さんの職人の「回復してよかった」や。お客さんの「美味しい」というコメントも重ねるようにフューチャーする。仲買人の「魚は美味そうだし復活したね」と、魚の入ったカゴを引きずって行った。全てのコメントが復興をアピールする肯定的なものだったことが、返って不自然だった。原子力発電所のメルトダウンも、放射能による汚染が無かったかのような、疑う余地もないというような人ばかりが画面に登場していた。復興支援というテーマが貫かれた番組み作りで、住んでいた場所へいまだに戻れない、地元の人の心の中に秘められた心配や恐れや怒りにはまるでお構い無しの番組み内容だった。

 

こういうのも情報操作の一貫なのかな。福島スタートの聖火リレーは、観客もなしで、7倍の環境の中をランナーがトーチを運ぶだけにイベントは縮小された。放射線量の話なんか取り上げられることもない。そしてIOCとの話し合いがあって、2020東京大会のほぼ1年延期が決まり、聖火リレーは中止された。新型肺炎の世界的な流行のためだ。7倍の放射線量のためではないというのが公式見解だろう。福島の現場で危険な撤去作業を行う人の苦労を思い、本当の復興を願って見守らなくては。でわでわ。