クマさんのバイク専科

木リムホイールで学んだこと!

天然素材の木材はセルロース繊維と樹脂の塊だ。工学的な測定値によれば振動減衰性がカーボン繊維の7倍というデータが出ている。振動減衰性とは素材が持つ、振動を吸収してしまう特性で、この特性は先端素材と言われるカーボン繊維やケブラー繊維が注目されていた。エポキシ樹脂で熱成型硬化処理で形を作ったのがカーボン成型品で、カーボン繊維のグレードによっても強度は違ってしまうが、鉄やコンクリートより高強度で軽いという特性を発揮する。ケブラー繊維はナイロン繊維と同じアラミド系の繊維で、引っ張り強度はスチールよりあると言われている。

 

車のタイヤのビードワイヤーやタイヤカーカスなどにも採用されている。防弾チョッキの素材としても採用されている。破断強度や衝撃吸収性能にも優れた繊維だ。自転車用の高圧タイヤのタイヤカーカスや、折り畳めるクリンチャータイヤやチューブレスタイヤビードワイヤーに採用されている。ホイールのリムの素材は、木材、アルミ合金チューブを台形やエアロ形状へ変形させたもの、クリンチャータイヤやチューブレスタイヤになってアルミサッシのようにア、加工しやすいルミ合金の引き抜き加工の成型品になった。

 

アルミ合金製のリムは、チューブを変形させたリムの製造方法の時代の素材の方が、変形過程が単純なので、アルミ合金に7000番代の硬質の素材を採用できて、さらに熱処理の可能な素材だったために、熱硬化処理によりリムの強度を高めることができたのだ。カンパニョーロのレコード、ビクトリー、マヴィックのSSCなどがチューブラー用の高性能リムだった。ジップ、カンパニョーロ、コリマ、エンビィなど、カーボンファイバー成型品へとアップデートされている。カーボンリムは当初は成型技術の問題でチューブラータイヤ用だけだったが、コリマがカーボンクリンチャー、カンパニョーロ、マヴィック、エンビィなども、クリンチャーやチューブレスタイヤ対応のカーボンリムを製造してい

る。

 

リム、ハブ、スポーク、ニップル、オリジナルデザインで製造できるし、素材だって、カーボン、アルミ合金、なんでもござれ、そんなハイテクの完組みホイールの全盛の時代に、手組みのホイール、それも天然素材の木材製のリムのホイールなんて、ノスタルジックなだけで実用性なんかないと思うでしょう。僕も使うまではそう思っていた。1950年代のロードやピストで使っていた古い機材だと思っていた。当然木材だからアルミ合金より強度がない。カーボンリムと比べれば強度も低いし重い。それでも千葉氏は木リムでディスクホイールやコンプレッションホイールを作り続けていた。カーボンリムにすればいいのにと思っていた。

 

それでも何かがあるんだろうなと、興味が湧いてジョバンニのアマンダスポーツオリジナルの木リムで前後輪自分で組んでみた。仮組みから仕上げまで驚くほど手間がかかった。普通の車輪の2倍から3倍の作業時間がかかった。木リムは部分部分で剛性が違って、スポークテンションの調整が微妙なのだ。残念ながら後輪はフランジ幅が狭く、踏み込むとぐにゃぐにゃで使えなかった。振れとりは本当に大変だった、ニップル1回転の影響が大きいのだ。センターもリムの縦横のフレも、10分の2mm以下に収めたいので、粘って調整したが、50kmも乗ってくると、リムがグラグラし始める。ブルベライダーはいきなり慣らし走行なしで600km走って5mm以上の振れを出して帰ってきたこともある。

 

木リムにはニップルの収まる穴を補強するスチール製のワッシャーが付いている。ニップルは25mmくらいの長さがある専用の真鍮製の専用ニップルが用意されている。ニップルを本組の段階で締め込んでも、ワッシャーと木リムのニップル穴との食い込みが始まって、そっと走っても50kmくらいでリムの振れが出るのだ。木リムホイールを何本か組んでみて分かったのだが、木リムの場合は無理に馴染みを出す作業をするより、普通に50km、100km、500kmくらい走って馴染ませながらテンションを上げた方が、時間はかかるが一旦振れが落ち着くと、狂いが出にくくなる。手はかかるが半年間くらいはメンテナンスしなくても大丈夫になる。

 

ホイールは回転して路面に接地した場所に力がかかって、リムやタイヤが上方向へ押されて変形して、スポークの張りが緩む。路面を離れるとリムやタイヤが元の円に戻って、スポークのテンションは戻る。駆動輪の後輪は接地の力に駆動トルクが加わる。ホイールが回転するごとにこれを繰り返しているのだ。このスポークの力が抜ける瞬間にニップルが少しずつ回転してしまうのが一般的なホイールの振れの原因だが、木リムホイールの場合はニップルと木リムとの抵抗が大きくて振動ではほとんど回らないので、ワッシャーと木リムの食い込みの方が振れの原因と思われる。

 

スポークテンションホイールは、スポーク全体で放射状に張って支えている構造で、ホイールにかかった力を分散するわけだが、接地している部分はスポークのテンションが下がり、その周りのスポークのテンションが上がって支えているのだ。リムの変形量や振動減衰性が木リムは大きいので、ショック吸収性が抜群だし、細かい路面からの振動も伝えにくくなる。木リムのしなやかさを発揮するにはスポークのテンションが高すぎても低すぎてもダメなのだ。

 

20cm以上の段差を飛び越えてみると、木リムホイールのすごさが分かった。木リムが大きく変形して復元しているのだ。カーボンリムだったら割れたり、アルミ合金リムなら曲がってしまう可能性がある。そういう無茶な走りをしてもカバーしてくれるのだ。普通のライドで100km走れば、手のひらが痛くなったり、肩が凝ったりするものだが、路面からの振動も嫌にならないし、木リムホイールを採用するだけで、明らかに乗り心地が改善されている。7倍の振動減衰性は乗ってすぐに体感できる。

 

木リムでダッシュした時にホイールの剛性不足を感じないか不安だろうが、時速63kmでダッシュしても全く不安はなかった。黒姫高原のスーパーダウンヒルを走っても安心だ。ブレーキングも問題なしでカーボンリム用のブレーキパッドがマッチする。ジョバンニのアマンダスポーツオリジナルデザインの木リムのホイールは、スポーツバイクつくばマツナガで組んでもらえます。乗り味をキープするための、その後のメンテナンスもばっちりやってくれます。ではでは。