クマさんのバイク専科

ビンディングペダルのセッティング!

フランスのスキーのビンディングメーカーだったルックが、デルタクリートのビンディングペダルを発売して、グレッグ・レモンやベルナール・イノーのラビクレールチームが使い始めて、数年でトウクリップ&ストラップのペダルシステムは採用されなくなった。同時にバイクシューズのソールにはビンディングペダルと連結するクリートという小物をボルトで取り付ける、ルック3穴という規格で、ネジ穴が付くようになった。底から引かれるようになるので、バイクシューズのアッパーの強化や、トウカップやヒールカップやカウンターの補強、ストラップの開閉方法も、走行中に締め付けを調整しやすい構造に改善補強される。

 

もちろん、ルックの初期の60番台のモデルも、ペダルボディがアルミ合金製の舟形にななって、固定した足を、0度、3度、6度と切り替えてかかとを振るような感じで動かせるようになった200番シリーズも使ってみた。グランドクリアランスもほんの少し大きくなって、立ち上がり加速やコーナーリングでやや路面と接触しにくくなった。クリートはプラスチック製の大きなデルタクリートで、踏み面は大きい、黒い固定、グレーの3度の可動、赤の6度可動があり、ペダリング中の足の動きに合わせて、踏み込む脚の筋肉のどこに負荷がかかるか、前後位置、内外、取り付け位置をmm単位で最適化する必要がある。

 

ルックのペダルは小型軽量化のためにデザインが変更されて、KEOシリーズになって、クリートも小型のKEOクリートになりました。ペダルボディーも樹脂化されて、上級モデルはカーボンチップ補強されているという。ペダル軸もスチールやチタンも用意されて、シールドベアリングもコンパクトになり、ロードクリアランスも大きくなり軽量化されました。ペダルの踏み面は、やや小さくなりましたが、十分な安定感もあるし、キャッチ&リリースもスムーズさで定評がある。小型化されたクリートも黒、グレー、赤が用意されて、固定してからの足の動きに対応できる。小型のクリートは歩行による消耗が激しいので、滑り止め兼消耗止めの樹脂が付いたモデルが市販されている。

 

カンパニョーロも小型のプロフィットペダルを開発するがメジャーなペダルとして生き残れなかった。タイムはルックを離れたエンジニアが創設した会社と言われている。最高峰モデルに踏み面の大きいチタンマグネシウムというモデルをリリース、足をペダルにセットしても横方向、つまり内外へ3mm動かせる、走りながらでも左右の足の開きのQファクターを変えられる構造を採用したことで注目される。ペダル軸の前後位置の調整こそ走りながらできないけど、ペダリングのケイデンスが高まれば狭く、踏み味が重くなって低下すれば広くと、左右の足の位置を移動してQファクターを走りながら調整できるし、クリートの中心を軸に、かかとを内外に振るように動かせる構造だ。足の可動範囲はクリートの左右の入れ替えで大小の幅を調整できて、リリースの足の角度を好みに合わせて選べる。

 

ペダリングする脚の上死点への引き上げの屈曲や、下死点へ向かって踏み下ろす伸展の時の、脚のひねりの自然な動きを妨げないので、膝関節周りの筋肉や靭帯へのストレスの蓄積を防いで、長く走っても痛みの発生や故障を予防することができるという。タイムのチタンマグネシウムは、軽いのだが、コーナーリングの立ち上がりでボディが路面と接触しやすく、リヤのキャッチ部のプラスチック製のカバーが破損したり、マグネシウムボディーが削れたりして、まるっきりデザインが小型化されたマグネシウムインパクトに変更され、最上位モデルはチタンシャフトが採用された。

 

さらにタイムのペダルはボディーを樹脂化して小型軽量化されて、キャッチ&リリースも改善されて。ロードクリアランスの大きい舟形の樹脂製ボディへ変更された。キャッチメカニズムのバネも、バネレートを3段階に調整できる金属製のコイルスプリングになり、その後に変更されて、カーボンプレートがバネに採用されるようになった。ビンディングペダルへ足を収める時に、カーボン製の板バネを踏んで割ってしまうトラブルが発生したために、最新のモデルは裏面に樹脂製カバーがついたモデルに改善されている。ビンディングペダルは転倒時に路面へハードヒットして割れることもある。樹脂製の舟形のボディーは、カーボンチップ補強されたモデルも用意されている。

 

タイムのペダルの回転部は、小型のシールドベアリングが内外へ圧入されていて、しばらくするとシャフトにガタが出る。この程度のガタは気にしないでいいという設計のようだ。回転の調整は自分ではできないので。気になる人はショップに相談してみよう。スピードプレイはポップキャンデーのようなボディザインで、バイクシューズに固定した少し重いクリートの丸い穴に収める構造で、足をセットする。ボディーとクリートの接触面が小さいので、踏み込む時には不安定だが。クリートの金属製のCリングが樹脂製のペダルボディの溝にハマり込むのだが、やはり、ルック、シマノ、タイムよりキャッチして踏み込んだ足は不安定だ。

 

どんなメリットがこのペダルにあるのかといえば、丸いペダルボディなので、キャッチしてから大きな範囲で抵抗なく足を動かせる構造だ。足の踏み込む角度にクリートの向きを合わせる必要がないのだ。他の3ブランドと同じく、クリートの前後位置、内外の調整は必要だ。Cリングの移動幅を調整するネジで、足のリリースする角度を調整できる。ペダリング中は、自然に脚をひねる動作が大なり小なり行われている。この足のひねりの向きを見抜いて、クリートの向きを合わせるフィッターの技術が最も難しいことなのだ。スピードプレイペダルはそこに間違いが起こらない構造なのだ。膝関節周りの痛みの発生や故障が起こりにくいのだ。

 

ほとんどのペダルを長期間クリートが消耗するまで試乗してみての、個人的な意見ですが、スピードプレイと他の3ブランドのペダルを、クリートの位置を、前後、内外、取り付け角度を最適化して、実際に使って比較すると、踏み込んだ時の安定感が全く違うので、試乗体験してから、好みに合わせてビンディングペダルを選ぶことをお勧めします。と言ってもなかなか試乗はできないので。黒姫合宿ではスピードプレイユーザーに、ルックやシマノのペダルとクリートの試乗体験をできるようにしています。

 

シマノはビンディングペダルの開発プロセスで苦労している。ルックパテントのモデル。改良型の足をセットしてからも動かせるモデルでルックパテントモデルが終了して、金属製クリートを組み合わせる、SPD-Rになって、現行の3点ルック穴止めの樹脂製クリートのルックパテントにに近いデザインの、ランス・アームストロングとジョイントして開発したというSPD-SLの初期モデルに変わる。次にアルミ合金製の蹄鉄のような形状のモデルのSPD-SLにチェンジされ、現行モデルの樹脂製ボディーのSPD-SLにマイナーチェンジなっている。シマノのシェアは大きいですね。

 

シマノのビンディングペダルは、常に先進の設計思想が採用されている。べらぼうに軽いとは言えないが、最上級モデルでも2万円台で、価格と性能がバランスしているライダーフレンドリーと言える製品だ。バイクシューズのソールもカーボン製が増えて、厚さが7mmくらいと薄くなって、ロープロファイル化を後押ししている。例えば踏み込む足が安定する、ロープロファイル設計は。トウクリップ&ストラップ時代に、急角度のバンクでペダルが路面へ接触しないようにボディーが考えられた、デュラエースペダルのために開発された、特殊なボールベアリングとニードルベアリングの採用と、テーパードのペダル軸の、中心から足の裏までの距離の低いロープロファイル設計をそのまま採用したものだ。

 

軽量コンパクト化したいところだが、コンタクトによるパワー伝達効率に目を向けている。踏み面を大きくして安定化させる設計でありながらロードクリアランスは大きい。クリートによる足の可動幅を調整できること、クリートの前後・内外・角度の調整幅が広い。キャッチ&リリースの強弱の調整を確実にできる。全グレード回転部の調整をできる構造。上位モデルの中空のスチール製ペダルシャフトの耐久性の高さなどが、特性と言える。ペダルの比較テストの重要なポイントは、シマノ、ルック、タイムは、ライダーによって違う脚の動きを見抜いて、mm単位でクリートの取り付け角度を調整できる技術が、クリートの位置を見極めて固定する人にあるかが問題なのだ。取り付け角度でまるでフィーリングが変わってしまうからだ。固定してからも足を動かせる構造だから取り付け角度は大体でいいんだなんて、とんでもない。それはフィッティングを受けたことがあるライダーなら頷いてくれるでしょう。

 

延べで4000人ぐらいのライダーのフィッティングを行なっていいます。その場での足踏みや、20分ほどウオーミングアップして、固定のローラー台での、負荷やケイデンスの違うペダリングを見たり、実際の上り下りを見て、サドルの高さや前後位置や角度を調整したり、疲れが蓄積してからもクリートの位置のフィッティングをしていました。ペダリング中の脚のひねりの動きと、クリートの取り付け角度の関係を見て調整するようになりました。1回でぴったり合うこともありますが、選手も一般ライダーも、10分の2mmくらいの差で、ペダリングの違いを体感できるので。その精度を追求してセッティングしたいと思っているので、実際のフィールドの平地や上りの走りで、確認しながら時間をかけて煮詰めていくようにしています。

 

快適にペダリングできるクリートの位置が決まったら、それは間違いなく自転車生活するライダーの貴重な財産です。クリートの周り全体を細い修正ペンで、クリートの淵にぴったりの線で取り囲んで印を付けておきます。消耗して交換するときにはぴったりの位置につけ直すことが重要です。今までのクリートの位置に、筋力の変化など何らかの理由で、もし違和感を感じたら、この細い白い線を基準に、クリートをどう動かしたかが分かり、どう動かすとどうなるかの基準にすることができます。本当に10分の2mmくらいの違いで、ペダリングに違いを感じることもあります。ベストなクリート位置はこうして辛抱強く探すしかありません。ではでは。