クマさんのバイク専科

Oくんからの質問にお答えします!

Oくんはタイムに乗ってトレーニングしています。少し腰痛が出ているらしいです。ホビーレーサーだけど、できる限り時間を作ってトレーニングへ取り組んでいます。LSDトレーニング、トレーニング仲間とのフルーツラインなどでの高速トレーニングなど緩急を付けて、走るようにして効果を上げているみたいです。だけど、真面目に取り組む性格なので、ハードな走りに取り組みがちでしょう。心肺機能を開発するLSDトレーニングを重視して走ること、ハードな走りの後や、翌日は回復走、疲れから回復することも考えて取り組みましょう。回復するときに強く速くなるんですから。

 

Oくんはフルタイムワーカーだから、速くなりたいと焦らないで、回復のことを考えて、ストレッチングやアイシングなど、時間の使い方がとても重要です。土曜日や日曜日に、トレーニングに取り組めば、4時間とか5時間走れば、平均ケイデンスが100回転とすれば、1時間で6000回、4時間で2万4000回、6時間で3万6000回ペダリングしている。無酸素と有酸素のミックス状態ではグリコーゲンと筋繊維の回復が必要で、LSDトレーニングではグリコーゲンの消耗が消費します。体内に蓄積されていたグリコーゲンを、消費した疲労感もあるし、細胞レベルでのダメージもあって、ハードなトレーニングからの回復には、グリコーゲンが3日、筋繊維は4日、回復走や体の手入れをしても、回復には時間がかかります。

 

無酸素系の負荷の高いトレーニングをすると、スピードや耐乳酸性が向上する一方で、筋肉や靭帯や関節への負荷になるし、活性酸素が大量に発生して、酸素を体内に取り入れて、有酸素で運動エネルギーのATPを作る、ミトコンドリアの酸素を取り入れる能力を低下させます。回復にはLSDが効果的です。運動エネルギーを作り出すことをクエン酸サイクルと言います。体内に酸素を取り入れる能力を、最大酸素摂取量と言います。空気を呼吸ですって、肺に入れて、酸素を赤血球に結びつけて、細胞の中にあるミトコンドリアへ運び、グリコーゲンを酸素で分解して、クエン酸サイクルでATPを取り出して、筋肉を収縮させるのだ。酸素を使うことから有酸素運動という。

 

瞬間的に大きな力を発揮できる無酸素運動は、グリコーゲンを無酸素で急激にATPへ分解するので、血液中に筋肉の収縮を抑制する乳酸が発生して、そのライダーの耐乳酸性によって違うのだが、乳酸の濃度の上昇とともに、筋肉を収縮させにくくなる。つまり、負荷の大きいペダリングをすると、脚の動きが重くなるのだ。スプリント的な激しい運動をすると、血中乳酸濃度が爆発的に上昇して、だいたい30秒も続けられない。時速40kmとか35kmキープの高速走行の時は、呼吸数と心拍数を上げて、酸素をより多く体内へ取り組み、高いレベルの有酸素運動を行いながら、無酸素運動とのミックス状態で走っているのだ。

 

少しずつ血中乳酸濃度が上昇して行くのだが、ライダーの耐乳酸性の上限までは、負けたくないというメンタルも含めて、乳酸による筋肉の収縮の抑制に耐えて、脚を動かしてペダリングするのだ。乳酸が発生する運動強度で走っている間も、体には乳酸除去能力が働いて、少しずつ筋肉や血液に蓄積している乳酸を、血液に乗せて肝臓へ運び出して、血中乳酸濃度を低下させているのだ。肝臓は運び込まれた乳酸を分解還元して、グリコーゲンへ戻して、再び血液に乗せて、筋肉や血液に戻して、運動エネルギーとして供給されるのだ。これは乳酸パワーと呼ばれている。有酸素運動はグリコーゲンを、酸素で分解してエネルギーを取り出すのと、LSDなど低い運動レベルでは体脂肪を分解してグリコーゲンにして、それを有酸素でさらに分解してATP
に分解する2系統がある。

 

有酸素運動は、運動エネルギーを作り出すのに、酸素を使って、二酸化炭素を吐き出すが、乳酸は発生しないので、継続的にそのレベルの運動をできるのだ。ただし、体脂肪を燃やすには、20分から30分のLSDレベルの運動のウオーミングアップを続けないと、体脂肪をグリコーゲンに変換できないし、大きなパワーは発揮できない。同じ有酸素運動でも、グリコーゲンを直接分解する方が大きなパワーを効率よく発揮できる。つまり、無酸素も有酸素も、大きな力を発揮するには、体内に蓄積されているグリコーゲンがエネルギー源なのだ。ライダーによってグリコーゲンの蓄積量は違っていて、おおよそ2時間分から6時間分が蓄積されている。

 

自転車の世界で言われているハンガーノックは、蓄積されていたグリコーゲンを消費すると、体がグリコーゲンの供給システムを絞って、血糖値が低下して、思考能力が低下したり、お腹が空いたと感じて、生命活動を守るための、体からの糖質を食べなさいという信号のことだ。補給食などで糖質を食べて体を刺激すると、糖質が供給されることを体が感知して、10分から20分で、まだ残っているグリコーゲンの供給を回復して、踏めるようになる。レースだったらその瞬間にキレてしまうので、スタート直後から補給食や糖質入りの飲料を食べて、糖質刺激した方がいい。

 

ヒルクライムとかクリテリウムとか、時間が2時間以内なら、イベントの3日前から、3食に400キロカロリーの糖質をプラスして食べる、カーボローディングで、通常の2倍くらいのグリコーゲンを蓄積する方法もある。低体温症や低血糖など生き死に関わる医療のハンガーノックとは違う。最近、スピードの維持に脚を踏み込まないとダメになっているという。これは、実はポジションの問題が絡んでいると思う。体重と脚の踏み込む筋力を頼りにするペダリングを実現するために、サドルを前に移動して、踏み込むペダリングで走っているのではないだろうか。

 

空気抵抗を避けるために、上半身を低くして走っているだろう。すると太ももが上半身の近くにまで上がる。お腹と太ももの空間が狭くなり、脚を踏み降ろす時の股関節の角度がきつくなり、筋肉の可動域がきつくなる。同じパワーで踏み込んでも効率が悪くなるのだ。それでも強く踏み込まないと、クランクを踏み込めないのだ。しかも、臀筋や前後の太ももの筋肉を使うための、骨盤の角度を支えている体幹の筋肉もより使われることになる。ゆるい上り坂で、トップギヤなどにセットして、ハンドルバーやブラケットを引くことなく、マイふん55回転くらいでペダリングして、骨盤の角度と、使う筋肉を意識してトレーニングすると、腰の位置や効率のいいペダリングを意識できる。

 

その時の腰の位置をサポートするようにサドルの前後位置や取り付け角度を調整しよう。体重を利用して脚を踏み込むことばかり意識すると、どんどんサドルを前に移動したくなりますが、股関節のつまり感が発生して、太ももの動きが効率悪くなって、ペダリングは前もも主導になって、より踏むだけのペダリングになりがちです。そして、この股関節周りの靭帯、筋肉へのストレスがじわじわと蓄積しているはずです。股関節を痛くないギリギリの可動域で旋回させてほぐすストレッチングを入念に行ってください。なかなか気がつかないところですが、脚の動きに大きく関係しています。1日脚の動きがスムーズになります。トレーニングの休憩時間にもやったほうがいいです。踏み踏みのペダリングの後は、必ず膝裏にアイスパックを固定して、アイシングしておきましょう。

 

膝関節にも大きな力がかかっています。1日のライドで2万回以上動かしています。膝関節を支えている靭帯や小さな筋肉群が複雑についています。走り終わってすぐにアイシングで膝回りの炎症を止めて、体温を部分的に下げて、体温を戻すために自然に血流を増やして、疲労物質を肝臓や腎臓に排除するのに効果的です。30分以上の時間がかかって面倒だけど、ホビーレーサーも体の手入れは絶対必要です。ではでは。