クマさんのバイク専科

実際のLSD!トレーニングはこうだ!

LSDトレーニングは、モチベーションを保つためにも、できれば、同じくらいの体力のトレーニング仲間と一緒に走れるといいのだが、ライダーごとに体力差があるので、なかなかそうはいかない。LSDトレーニングは、自分の体力レベルに合った負荷で走らないと、毛細血管が伸びたり、ミトコンドリアの酸素を吸収する能力、体脂肪の燃焼、グリコーゲンの蓄積量の増大、筋肉細胞の再生、関節靭帯の故障の予防など、心肺機能向上のトレーニングの効果が得られないのだ。

 

LSDレベルの低い運動強度をキープして1時間以上走らなければいけないんだ。スタートして30分はインナーギヤをくるくる回してウオーミングアップする。体温を上げてうっすらと汗をかくまで、筋温を上げて、呼吸や心臓の動き、血流や体液を活性化させて、関節の潤滑も保つ。LSDレベルで30分間走っていると、体脂肪をグリコーゲンへ分解して、有酸素運動のエネルギーとして使われ始めるので、ダイエット効果がある。1時間走ったら実質的なLSDトレーニングは30分だ。できれば2時間以上、4時間ぐらい、距離にすると80km〜100km走ると理想的だ。運動強度がLSD レベルを上回ってしまうと、体に蓄積されているグリコーゲンが運動エネルギーになってしまう。

 

運動強度と言うと、頭に浮かぶのは走行速度だろう。平地でゼイゼイハアハアしない、ギリギリの速度がLSDの速度だが、追い風の場合と向かい風の場合で速度は違う。上り坂でも下り坂でも、LSDの速度は違ってしまう。走行速度はLSDトレーニングの参考にはなるが、LSDレベルを保って走るには絶対的な数値では無い。そこで、LSDレベルをキープして走るには、運動強度を客観的に測る指標が必要なのだ。それには、運動中の最大心拍数の70〜75%の運動強度をキープして走る必要がある。最大酸素摂取量のコンコーニテストの測定をできる機会は少ないので、速くなりたい場合は、サイクルコンピュータと心拍計を用意しよう。

 

最近ではクランクにパワー測定できるものを採用しているライダーもいる。心拍数でLSDレベルを管理して、LSDレベルの時に何ワット出ているかを確認して、ワット数でLSDレベルを管理してもいい。こうして、客観的に運動強度を管理して走ると、体感的に、こんな感じの時はLSDだなとか、乳酸が蓄積してきているなとわかるようになる。だから、ロングライド、トライアスロン、ブルベライダーも効率よく走るために、サイクルコンピュータ、心拍計、パワー測定クランクを採用するライダーが増えている。特にパワー測定クランクは、ここまでパワーを発揮すると、血中乳酸濃度が上昇して、脚が動きにくくなるとわかってくるので、ペースメーキングの有効な指標になるのだ。

 

シマノはパイオニアのパワー測定クランクと、リアルタイムで踏み込むパワーの大きさと、方向を表示できてデータを記憶できる、優れたサイクルコンピュータの部門を吸収した。シマノもパワー測定クランクを開発してリリースしていたが、サイクルコンピュータは他社にお任せだった。次期モデルはパイオニアのノウハウが加わって、どんなコラボレーションが展開されるのか楽しみだ。クランクとサイクルコンピュータの高価なキットだけど、今までのガーミンとの組み合わせより、はるかに見やすくて操作が簡単なシステムになるはずだ。効率よく走るためのペースメーカー、ペダリングの評価や修正に役立つ、これからパワー測定クランクの採用を考えているライダーは絶対注目のモデルだ。

 

客観的に、速度、心拍数、ワット数でチェックしていると、同じ速度で走っていても心拍数が低下して、心肺機能が向上しているのがわかる。発揮できる速度やワット数で筋力の向上もわかる。もがける時間や上り坂で発揮できるワット数や時間で耐乳酸性の向上も分かる。

プロ選手の場合は春先に血液検査して、貧血はないか、栄養バランスや、赤血球量などをチェックしておき、食事の内容などを管理栄養士やスポーツドクターと相談する。LSDトレーニングを3ヶ月ほどして、再度血液検査して赤血球が増えていることを確認する。そのほかにも残留乳酸値や、ガンマGTPなどで肝臓の活性化も確認する。

 

LSDレベルを知るために、平坦な周回路でテストする。時速20kmで20分走りウオーミングアップを終わり、その時の心拍数をチェックする。時速21kmで2分走り、心拍数を確認する。1kmずつ速度を上げては2分間走り、心拍数を確認する。これを時速30kmまでやってみる。呼吸がゼイゼイハアハアした速度の前の段階が、体感的なLSDレベルだ。その時の心拍数がLSDの運動強度だ。平地を走る時も、上りを走る時もスピードを落として軽いギヤにして、その心拍数で走ればLSDトレーニングになる。下り坂では脚をくるくる回して心拍数がなるべく落ちないようにする。信号待ちでも心拍数が低下してしまうので、なるべく信号の少ないコースを選ぶのだ。

 

心拍計によっては、上限と下限の心拍数を設定して、ターゲットゾーンから外れるとアラームが鳴る設定をできるものがある。LSDレベルの心拍数の上下5拍に設定しよう。LSDトレーニング中に、やってはいけないのは、運動強度を上げてしまうと、無酸素運動とのミックス状態になってしまい、有酸素のLSDモードへ戻すのに10分とか20分かかってしまい、時間の無駄になってしまうからだ。風邪をひいたり天候の関係や仕事の関係で、トレーニングを1週間とか2週間休んでしまうと、LSDレベルが低下していることがあるので、心拍計で運動強度をチェックしながら、休み明けは、LSDレベルを確認しながらトレーニングしよう。

 

プロチームによっては、マルチ機能のサイクルコンピュータに、ケイデンス、速度、距離、心拍数、GPS、パワーを記憶させて、トレーニングやレース後に、パソコンへデータをインストールして、専用のアプリで解析できる。選手自身や解析専門のコーチやスポーツドクターが解析してアドバイスする場合もある。体力のあるライダーと一緒にLSDトレーニングをする時は、ずっと後ろに付かせてもらって走るのだ。後ろに付いて走れば10%くらいの体力差ならカバーできる。先頭が時速30kmがLSDレベルのライダーなら、27kmのライダーは一緒にLSDトレーニングできる。

 

ただし、前を走るライダーがLSDトレーニングの意味を理解していないと、運動強度の上げ下げがあったり、効果的なトレーニングにならない。モチベーションの低いライダーは、LSDの意味を忘れて、前に見えるライダーを追ってしまったり、上り坂でスピードを保とうとターゲットゾーンを外れたりする、速度が速すぎる場合はちぎれて、自分のLSDレベルで走ればいいのだ。ミドルの強度も、スプリントの強度も、トレーニングの効果がそれぞれあって、心拍数やワット数で運動強度を管理することができる。

 

アップダウンのあるコースでLSDトレーニングする場合は、フリーのスプロケットは必ずワイドギヤを取り付ける。上り坂では負荷が大きくなるので、軽いギヤ比でゆっくり走って、ペダリングする脚の負荷を小さくして、心拍数やワット数で管理して、LSDレベルを超えないように調整して走るために、大きな歯数のローギヤが必要なのだ。ビギナーライダーなら34Tなどの採用も検討しよう。見栄を張る必要なんかない。効果的なLSDトレーニングには必要なのだ。ではでは。