クマさんのバイク専科

回復トレーニングでスッキリ!

何でライドの後や、LSDトレーニングの後は、筋肉がドヨーンとした疲れ方になる時と、スッキリする時があるのか。ドヨーンは体に蓄積していた運動エネルギーのグリコーゲンを有酸素運動で消費したからだ。走った後で、炭水化物を多めの食事でグリコーゲンの材料を補給すると、血糖値が上がると緩和して、4時間とか8時間走ったとしても、3日くらいで元の蓄積レベルまで補給されて、疲労感も解消する。ライダーの体力によっては、有酸素運動レベルでも、運動の時間がその人にとって負荷になって、グリコーゲンの消耗だけでなく、筋肉線維の細胞レベルのダメージになって、筋肉痛などが発生して、タンパク質の補給も必要で、回復に4日くらいかかる場合もある。

 

野球、テニス、水泳、バスケットボール、自転車競技、陸上競技、サッカーなど、スポーツ選手が運動直後に、失った水分の補給だけでなく、筋肉や関節のアイシングをしたり、筋繊維の素材のプロテインパウダーやグリコーゲンの素材の糖質を、シェイカーで水や牛乳に溶かして飲んでいるのを見かけます。運動終わりの30分は栄養の吸収が高まる時間帯で、ベンチに下がったり、バス移動などの間に補給するのが重要なことは知られています。事前に用意しておいてすぐに補給すると効果的です。

 

プロテインも牛乳の乳清などから精製した動物性のプロテインと、大豆などから作るソイプロテインの植物性があります。瞬発性の筋肉には動物性、持久系の筋肉が目的なら植物性のプロテインが向いていると言われています。パッケージにプロテインの素材は書かれています。飲み物を作るのが面倒な場合は、ドラッグストアやサイクルショップで売っている、チョコバーみたいな補給食を背中のポケットに入れておいて、ライド中やライド直後に食べておくと、プロテインと糖質の塊なので、回復を早めるのに効果があります。普通の食べ物で補給したい場合は糖質はおにぎり1個、牛乳やヨーグルトやハムや魚肉ソーセージでも大丈夫です。できれば400キロカロリーくらい補給すると理想的です。

 

無酸素運動と高いレベルの有酸素運動のミックス状態のトレーニングでは、グリコーゲンも消費した疲労感と、乳酸が発生して、残留乳酸が血液や筋繊維や肝臓に残っている疲労感が発生する。さらに、筋繊維が細胞レベルで疲労していたり、大量に発生した活性酸素で傷ついていることもある。食事で炭水化物の補給をしてグリコーゲンの消費による疲労は解消できる。活性酸素はビタミンCとE、ベータカロテン、ポリフェノールなどの抗酸化物質で無害化できる。日頃の食事やサプリメントで補給しておくとダメージを最小限にできる。筋繊維のダメージは、運動後30分以内の吸収力の高まっているゴールデンタイムのタンパク質、プロテインの補給で、筋肉の回復を早くできる。

 

問題は有酸素と無酸素のミックス状態の高速走行しているときに、無酸素運動で大量に発生した乳酸だ。高い運動強度で走ってきて、急に止まってしまうのが最も良くない。いきなり心拍数が低下して、血流量が減ってしまうので、筋繊維の奥に乳酸が除去されないまま止まってしまうのだ。これが、疲労感や筋肉痛になったり、筋肉の硬直になったりするのだ。フィニッシュしたプロ選手が、宿までゆっくり走って帰るのは、乳酸を除去するアクティブレストだ。レース後に軽いマッサージを受けるのは筋繊維の奥に残った乳酸を血流で洗い流すためだ。体液や血流を動かすセルフマッサージやストレッチングも効果がある。

 

乳酸を除去して回復させるには、ハードに走った後、そのまま20分から30分、起きた時の平常心拍数の2倍くらいの心拍数で走るのだ。60拍なら120拍の運動強度で、くるくるクランクを回して、回復走をしてレースやトレーニングやライドを締めくくるのだ。こうすると、血流に乗せて乳酸を肝臓へ運び出して、血中乳酸濃度が低下して、体感的にスッキリする。実際に乳酸が肝臓で還元されて、グリコーゲンとして送り出されるには時間がかかるので、肝臓の疲労回復にはタイムラグがある。ハードに走ったり、長く走った時はビールなどのアルコールは、アセドアルデヒドの分解で、肝臓の負担になるので、少量に止めよう。

 

実は、血液中の乳酸値を測定すると、低い運動強度でも、乳酸がわずかに発生してる。一般的には、2ミリモルという乳酸濃度が、脚がスッキリして動くのと、動きが重くなる境目といわれている。4ミリモルで脚の筋肉の収縮がかなり鈍くなる。6ミリモルで動かなくなると言われている。だけど、乳酸に耐えて脚を動かせる能力を、耐乳酸性というのだが、ライダーによって個人差が大きいのだ。僕の知っているベルギーのプロ選手は何と14ミリモルでオールアウトで動けなくなった。選手は走りながら乳酸を発生していると同時に、血液に乗せて乳酸を運び出し、肝臓へ送り込んで、乳酸を除去しているのだ。

 

無酸素運動と有酸素運動のミックスで走っていて、少しずつ乳酸の血中濃度が上がってきて、脚の筋肉の収縮が鈍くなってきたら、運動強度をLSD以下へ落として、乳酸の発生を低下させて、乳酸除去を優位にすると、筋肉内や血液内の乳酸濃度が2ミリモルに近く低下すると、乳酸による筋肉の収縮の抑制が解除される。ハードなトレーニング後に、平常心拍数の2倍の回復走を20分から30分すると、乳酸が2ミリモル以下になって、スッキリするのだ。LSDトレーンングもツーリング後にも、回復走するとスッキリ気分がいいので試してみよう。ハードなレースの翌日は完全休養ではなく、回復走を1時間というのがセオリーになっている。ではでは。