クマさんのバイク専科

スカイはプロサイクリングチームのスポンサー撤退ですね!

イギリスのテレビコンテンツの配信会社のスカイは、前々から買収が噂されていましたが、ついにフォックスの傘下に入りました。スカイはエースを立ててステージレースやワンデイレースで、個人総合優勝や優勝を目指して総合力で戦うチームでした。年間の最重要レースは、プロロードレースの世界で、特にアピール度の高いツールドフランスにはチーム力をフォーカスして、個人総合優勝をチームメンバーが継続していました。もちろん2018年もです。

 

50チーム以上あるプロチームの中で、スカイはここ10年くらいトップチームに君臨していした。だから、疑惑を残したままの状態でのスポンサー撤退はとても残念なニュースでしたが、買収を噂されていたいずれのファンドもアメリカの巨大メディアグループです。アメリカはセブンイレブン、モトローラ、USポスタルなどがプロサイクリングチームをスポンサードしましたが、いずれも現在は撤退しています。プロチームはスポンサーが変わっても、運営母体が残っていて、ジャージや機材が変わり、契約選手も主力選手が残ったり、他チームへ移籍して入れ替わるということがあっても、運営母体、監督、コーチ、メカニック、マッサージャーなど、実体は生き残ってレース活動を継続するパターンがよくあります。スポンサー契約も打ち切りの可能性に備えて水面下で2年も3年も前から運営母体や広告代理店が獲得に動いています。

 

アメリカの巨大メディアグループが投資するところが気になっていました。プロロードレースは広告媒体としてアメリカ企業の評価が低いことが予想され、いずれのファンドが買収したとしても、ヨーロッパ中心で活動するプロサイクリングチームのスポンサー継続は難しいなと思っていました。フォックスが傘下に収めたスカイの場合は、プロロードチームの運営会社と、広告代理店が運営をサポートする形式での運営でししたから、相当前からスポンサー契約の打ち切りは通知されていたはずで、いきなりというわけではないと思います。だから次のスポンサーも決まっている可能性があります。

 

プロロードチームのスカイの運営費と言われる50億円は、ヨーロッパのチームとしては巨額と言えるでしょう。フランスのトップアマチームはスポンサーを獲得して、年間運営費が2億円くらいです。プロチームでも弱小チームは2億円ぐらい、スポンサーも企業規模が小さいところが多く、10億円以下のチームも存在します。このチームの運営費の小ささから、ヨーロッパのロードレースが衰退していると言われたり、選手もスタッフも報酬が労働に見合わないプロスポーツになっています。年俸の未払いなどもいまだに横行しています。華やかなのは先進的な運営を行うツールドフランスばかりで、ツール以外はメディアへの露出、広告価値はどうなんでしょう。道をひたすら選手たちが走り、放送するという旧態然としたレースの運営で、レース時間が長い、広告収入の低迷、放映権料収入など、プロスポーツコンテンツとしての魅力は低下しています。

 

日本で開催されているツアーオブジャパン、ツール・ド・北海道、ジャパンカップ、さいたまクリテリウムも、全日本選手権ロードも、ロードレースは誰のために、何のために開催しているのか、そろそろ明確に考えていい方向へリードしていかないと、ヨーロッパでプロロードレースしているのを見て、補助金や自治体のお金を頼りにして、日本のチームも開催団体も、プロの真似事している場合じゃないと思うけどな。ヨーロッパのプロチームと契約して走れるプロ選手の育成、プロチームの運営母体と日本でもヨーロッパでもアピールが必要なスポンサーの確保、しっかり採算ベースに乗せて、プロロード選手とチームの価値を高めないと、日本のロードレースそのものが衰退してしまいます。

 

Jリーグの選手が海外のチームと契約して活躍が注目されたのは中田選手がパイオニアでしょう。セリエAのレッジオからローマへの移籍も果たしました。今や日本人選手は各国のリーグで年俸の上下はありますがレギュラーメンバーとして活躍して、パフォーマンスを高めています。日本のナショナルチームに海外組と呼ばれて召集されて主力メンバーとなって、ワールドカップでのベスト8が見えそうなところまで力がついています。ヨーロッパのサッカー市場で評価され、そこそこの年俸が支払われての日本人選手の海外移籍こそが、国内リーグの空洞化ではなく、国内のJリーグの選手モチベーションになっていたり、選手育成や選手市場の下支えをしているのです。

 

日本のプロロードチームの運営母体の実態は実業団チームの延長線上にあって、運営費用のかかるヨーロッパやアジアのリーグへ打って出ようというところは少なく、2020年へ向けて刺激を受ける場を失っているチームもあります。ドメスティックな活動に止まり、ステージをあげようというプロサイクリングチームのシステムになっていません。ヨーロッパのプロサイクリングチームは、マネージメントスタッフやヘッドスタッフが、元選手で監督ライセンスを持つことが多いのです。プロチームの運営によりスポンサーを獲得して、一攫千金を目論むジェネラルマネージャーが多いのです。最低契約金の保証制度も形ばかりで、不透明な資金運用のチームや、給与の未払い、契約の不履行が今だに横行しています。

 

しっかりしているのはチームランキング上位の20チームぐらい、ランキング下位のチームの中には、シーズン途中で資金切れで解散とか、上位チームでもトラブルを起こしている場合があります。チームバス、機材トラック、サポートカーなどが確保され。副監督、キッチンスタッフ、トレーナー、メカニックなどまともにペイされているチームはなんチームあるかな。日本人スタッフがプロチームに関わってノウハウを身につけても、ヨーロッパでレース活動を継続できないのは、まともな報酬が支払われないからです。

 

チーム運営資金の大きさでもプロサイクリングチームは問題を抱えています。チームでファームチームを持つなど育成に力を入れているところは少なくなっています。日本のGTカー500クラスにフル参戦するワークスチームや、メーカーのサポートするファクトリーチームの年間予算は、車の開発、エンジン開発、メンテナンス、サーキット使用料、ペイドライバー、スタッフの給与、運搬などで、80億円から100億円で走らせています。車のドメスティックなレースでもそれくらいの規模で投資されています。これが、インディカー、F1、Eカー、ラリーのシリーズ戦へのフル参戦、耐久のワールドシリーズのワークスチームになると、活動拠点はアメリカやヨーロッパになり、その2倍も10倍も投資することになります。

 

そうなると、Eかーなどは車の開発に関わるとは思いますが、化石燃料を使うエンジン車に未来はあるのかな。宣伝広告費としても、さすがに本業を圧迫するようになり、撤退という選択肢が実施されたりします。ブリヂストンタイヤがF1へのタイヤ供給から撤退して、その膨大な資金を2020年の東京オリンピックのスポンサー契約に投入しました。でも、グループ企業のはずのブリヂストンサイクルのロードレースチームの運営資金は減額されてヨーロッパ遠征は縮小されています。

 

2020年のピスト競技でメダルの可能性がある状況で、ルックのカーボンピストに対抗する、カーボンピストバイクを開発して供給するプランが実施されましたが、外国人コーチたちの評価は今一つで、今のフレームで勝てているのだから、換える必要があるのか?というコメントがあったとか。カーレースの世界の投資資金と比較すると、ロードレースのチーム運営資金は小さな規模です。それでも北米に限らず、世界的な宣伝広告効果の評価が低下しているので、ワールドワイドなスポンサーの獲得が難しくなっています。スカイのチーム運営会社が2020年からのスポンサーをフィックスしていることを祈ります。せっかくのメンバーがチーム解散でバラバラになるのは見たくないですね。ではでは。