クマさんのバイク専科

時速40kmのDHバーポジション:パート1

DHバーポジションで空気抵抗はどのくらい減るか知っていますか。
実際のフィールドを走るのとは、速度域やフォームの違い、
風の向きや強さなどの要素の違いによる誤差はあると思いますが、
シミュレーターで予測できるようになっています。
レーシングカーやレーシングバイクのエアロダイナミクスを追求するために、
大容量のコンピュータを採用した空力解析シミュレーションが開発されていて、
自転車もシミュレーションできるようになっています。
 
最新のシミュレーターでは、単独のCD 値の測定だけでなく、
リアルレーシングではテーツツーノーズやサイドバイサイドの競り合いもあるし、
ドラフティング走行での空気の流れを想定して、
複数の前走者の作る乱流(タービュランス)の空力への影響も想定して、
細かい大量のデータを検証して解析できるようになっています。
 
単独走行の空力特性だけでなく、より実戦的な前のクルマやバイクへのドラフティング走行を利用した走り方、
時速何キロの場合、何mまで接近すると有効か、コースレイアウトと風向きを配慮してどう抜けばセーフティーかなど、
各レーシングチームは、レコードラインを外して走行してタイヤカスを拾うことによるグリップ力の低下のリスクなども
要素に入れて、どう走るとそのサーキットを効率良く走れるのか、
エンジニアだけでなくプロドライバーも細かく研究しているそうです。
しかも、マシンやタイヤや路面状況を設定すると、使用機材のデータを入力すると、
レース本番とタイムアタック時の予測タイムも出てしまうそうです。
 
スポーツバイクも競技団体の強化部門が依頼して、本格的なシミュレーションが行われています。
無風状態を想定して、時速30kmで走るのから、60kmで走った状態を想定した。
低速流体力学の速度範囲だと、風洞実験室でのCD 値の測定データの精度を上回る、
コンピュータシミュレーションのデータは出ています。
それに、F1チームや開発エンジニアには自転車好きが多く、
個人的な興味で空気抵抗のメカニズムを解析したデータも存在します。
 
 
 
ドロップバーの下を握った時の空気抵抗と、DHバーポジションとの比較では、1%前後軽減されているというのです。
CD値をライダーとバイクの形状と、移動の速度を入力して診断できるシミュレーションのデータがあります。
前面投影面積を左右する最大のDHバーでも1%台ですから、完成車やパーツのカタログに踊る、
フレームのエアロ化による形状変更やエアロホイールによる空気抵抗が5%とか10%の軽減というのは実現が難しく、
明らかに過剰なセールストークと言えるでしょう。
 
 
 
エアロ系フレーム開発のメーカーのカタログデータで10%軽減とか表示されていたら、
フロントホイールが無いか、フロントフォークのブレードが無いか、と言うくらい前投影面積を減らす必要があります。
かなり不可能に近いことが想像できるでしょ。物体に空気が当たり押しのけられると最初の空気抵抗が発生します。
押しのけられた空気は物体の形状に沿ってスピードが上がり、空気は逃げ場所を探します。
物体が途切れたところでクルクル回る気流になって、大きな空気抵抗を発生します。
 
 
 
だから、前面に空気が当たると、それより後ろは乱流になってしまい、
それ以降の部分の形状をどうしようが、乱流になった空気を整流することはできません。
物体が押しのけた乱流をテール形状で受け流したり、物体の後ろにできる渦を物体の後ろ端から、
素早く引きはがせる形状にする必要があります。
その1つの例がティアドロップ形状(水滴)で、飛行機の翼断面などに採用されている形状です。
ただし、自転車の速度域の低速流体力学では、高速流体力学での流線型などの正解が当てはまらないことがあります。
 
 
 
正直言って、自転車の形状による空気抵抗より、ライダーの体の方がより大きな空気抵抗のファクターです。
バイクのフレームのデザインやパーツのデザインは、デザイン性重視とかルックスのインパクト重視な製品が溢れています。
でも、DHバーはそのライダー側の空気抵抗を本当に軽減する機材だからこそ重要なのです。
ドロップバーの下のポジションの空気抵抗を算出するモデルライダーはトップロードレーサーです。
ロードTTやトライアスロンなど、いろいろなDHポジションのライダーをピックアップして、
真横と正面のシルエットを数値化して、空気抵抗の数値をシミュレーションして、1%軽減という数字をはじき出しています。
パート2へ続く、ではでは。