クマさんのバイク専科

クイックレリーズの重さの差はけっこうある!

あるハブ&ホイールメーカーのホームページやカタログに公表しているデータはひど過ぎる。ホイールを試乗してみたり、少し落ち着いて常識で考えれば、数ワット、二桁近くまで違うってことは、重量や明らかに差のあるものを選んで比較して測定しない限り、あり得ないことが分かります。タイヤや車輪の転がり抵抗の測定数値や、セラミック球と鋼球のベアリングの違いによる回転抵抗に関するテストデータの測定値が、数ワットの差になって表れるという。その数値を見たら明らかに踏み味が変わり、ライダーが走って分かる差のデータでした。色々試乗したけど、そんな体感差はまったくしなかったな。

 

まるでモーターをセットして電動アシストしているほどの差ですよ。それほど大きな差がホイールやベアリングの違いや、チューブラーとクリンチャーのタイヤやりムの構造の差であるというのです。しかし、それぞれ、どんなタイヤとホイールでデータを比較しているんですか?、ってことです。まともな決戦タイヤで、ライダーの体重を60kgから80kgに設定して、一般的なフレームの設計の前輪荷重40%、後輪荷重60%のバランスで室内試験しているのかな。

 

それぞれのタイヤの推奨空気圧で比較したら、ドラムテストによる転がり抵抗の数値は、円い断面のタイヤが路面(ドラム)に接地して、小指1本分の面積が接触して、トレッドゴムが平に変形して、路面を離れると円い断面に戻ります。その変形しやすさこそが転がり抵抗を減らす要素です。バイクの走行速度が時速25kmから50kmの範囲の測定データでは、タイヤの部分的重量差のワウフラッタによる抵抗の発生を含めても、タイヤそのもの要素だけなら、しなやかなチューブラータイヤのホイールが小さくなるはずです。ドラムの接触面をアスファルト張りや、荒れた路面の想定にすれば、その差はより大きくなって、チューブラータイヤが優位になります。

 

もしホイールによる転がり抵抗の差があるとすれば、比較しているタイヤやリムの重量差や、タイヤとチューブのしなやかさの差があるとしか思えません。ドイツ系のボールベアリングの開発エンジニアに確認しましたが、直径約675mmの700C ホイール、セラミック球にしろ鋼球にしろ、高性能モデルのベアリングの回転抵抗の差や、スポークの空気抵抗の差が、自転車の車輪のモーメントと回転数レベルで、ワット数の差になるほど発生する可能性はないそうです。と言うことはタイヤやリムの重量差が原因か?。

 

外周に近いリムの30gの重さの差や横剛性、タイヤの30gくらいの重量差やしなやかさの差なら1桁のワット数の違うほどの差が発生する可能性はあります。でも、ベアリングの種類や高性能なハイエンドのモデルのホイールで、重量差や剛性の差がないモデルを比較してワット数がそんなに変わる?、そんなバカなことを科学的に信じられません。データの取り方がおかしいのか、データがねじ曲げられている可能性が高いですね。

 

しかも、ホイールに求められる剛性に関する認識が違っていると思います。前後のホイールにかかる力は確かに違いますが、ホイールにかかる横方向や斜め方向からの力を軽視している前後ハブのフランジ幅の狭い設計もどうかと思いました。後ろ側はスプロケットが11枚収まるわけですから当然フランジ幅は前輪より狭い設計で、ホイールのスポークの張り構造としてはアンシンメトリックになりますが、左右方向の変形量を抑えて、しかも立ち上がり加速やヒルクライムでのパワーロスを考えると、ホイールの左右の変形量を高い次元で同じになるように、ハブのフランジ径や幅、スポーク本数や太さのフォーメション、スポークテンション、アンシンメトリックのリム形状、そういう設計や構造にするのが理想的です。

 

ブレーキキャリパーのところでホイールに横方向から力を加えてみてください、リムは思っているより簡単にブレーキパッドにリムが接触すると思います。それがホイールの横方向への剛性です。軽量なカーボンリムの2等辺三角形の長い2辺が指で押すとぺこぺこ変形するモデルは、ホイールとしての横剛性が低い可能性があります。力がかかった時の変形量が大きいアルミ合金製のリムは、指先で押しても変形しませんが、横方向の荷重テストをするとだいたいのホイールとしての変形量や剛性が分かります。

 

ライダーがペダリングで発生するトルクは、どんなにテクニックのあるライダーでも、左右2本の脚で踏み込むたびに変動して、タイヤが変形したり、リムの横方向への変形によるパワーロスにつながります。シッティングやダンシングの時に、クランクを踏み込むたびにサイクルコンピュータとマグネットセンサーが接触した経験がありませんか、ブレーキキャリパーのセンターがずれている状況で、リムサイドにブレーキパッドが接触した経験はありませんか。ホイールの左右方向の剛性が低いと、クランクを踏み込むたびに変形してパワーロスが発生することになります。

 

変形量は、トルク変動が少ないシッティングでは小さくなりますが、トルク変動が大きいダンシングではかなり大きくなります。駆動トルクがかかる後輪の剛性も大事ですし、パワーロスをしないでバイクを進ませるためには、前輪の横剛性もとても重要で、スポークの横への出っ張りによる空気抵抗より切実な問題です。だからハブのフランジを狭くする構造は問題ありです。このハブ&ホイールメーカーのあまりに自社製品をよく見せようとするデータのでたらめさにあきれた年末でした。

 

そんなホイールのことを色々考えていると、クイックレリーズのことも気になりました。車輪の中心のパーツだからクイックレリーズの重さなんか走りに無関係だけど、フレームやフロントフォークの剛性を確保するには、しっかりエンドへ固定できれば良いわけですが、やっぱり自転車乗りは重さの差は気になります。昔々のカンパニョーロのクイックレリーズのシャフトを持って、最新のクイックレリーズを持って相当の差があることに気が付きました。

 

カンパニョーロのクイックナットがカン付きの三角のテーパー状のモデルでリヤが84g、フロントが80gでした。マヴィックのスチールのリヤで60g、フロントで57g。マヴィックのチタンシャフトでリヤが42g、フロントが40gでした。ライトウエイトホイールに付いていた、カンパやマヴィックと同じエキセントリックカムレリーズ式の超軽量のチタンモデルはリヤが20g、フロントが17gでした。どういうこと、カンパとの差はリヤが64g、フロントが63g、どうですこのクイックレリーズだけの重量差。マヴィックのチタンモデルでもリヤ42g、フロント40gですから、それでも半分の重量差です。凄くないですか。これだけの重量差があると、やっぱり気になるのは、ホイールをエンドへしっかり固定できるかどうかですよね。

 

もちろん試してみました。超軽量のクイックレリーズだからと、試乗するのに容赦はしません。普通に締めて壊れるなら壊れてしまえというスタンスで使っていました。90度チタン製のクイックレバーを閉鎖方向へ動かした時、しっかりレバーの動きが重くなるまでクイックナットを締め込んで、そこから90度締め込んで固定して走っていました。まったくキシミ音も発生しませんでした。軽量性による強度を気にして、優しく締めるとかえって音が出ます。というわけでちょっぴり軽量化できることになりました。フロントの木リムホイール、リヤのボーラー50mmに採用します。しかし、それにしても空しい軽量化だな(笑い!)。ではでは。