クマさんのバイク専科

フロントのチェーン落ちませんか?:パート2

トップライダーもタイムロスをするのでチェーン落ちを気にしています。
田代選手の基本的なやり方は、坂道の途中でインナーギヤが必要と判断したら、トルクがかかる前にインナーギヤへ変速して、チェーン落下のリスクを減らす方法です。
トップギヤに変速している場合、インナーギヤからアウターギヤへの変速でもチェーン落下の可能性はあります。
トップギヤへ変速してチェーンが斜めがけになる前にアウターギヤへ変速してチェーン落下を防ぐそうです。


チェーン落ちの原因は本当にいろいろあります。
チェーンケージとアウターギヤとの歯先間隔、チェーンケージの向きの調整、チェーンケージのオーバーストローク、チェーンケージの剛性不足、直付け台座の変形などが考えられます。
確かに、シマノもカンパニョーロも、あまりクランクを踏む力に配慮はいらなくなっていますが、アウターギヤへチェーンを上げるのですから、ややクランクの踏み込みを緩めてチェーンにかかるトルクを小さくすると、チェーンがアウターギヤの歯先へスムーズに移動します。


もう1つ重要なのがクランクとチェーンリングの剛性や、変速性能を高める歯先形状、スパイクピンの位置や高さ、アウターギヤの裏側のスロープです。
旧型の10段ならアルテグラクラス以上、11段のシマノなら105クラス以上、カンパニョーロなら4アームのカーボンクランクを採用すると、変速性能は向上するし、横へ押された時のチェーンリングの変形が原因によるチェーン落下のリスクを減らせます。


チェーン落ちしたら、あわてずにチェーンを戻しましょう!。
チェーンがインナーギヤの内側か、アウターギヤの外側に外れて落ちてしまったら、それ以上アクシデントの状況が悪くならないよう、すぐに踏み込む足を止めて停止します。
チェーンをチェーンリングの歯先へ戻す作業をしなければライドへもどれません。
まずは焦ってチェーン復帰の作業をしないことです。
チェーンの外れ方、すでにチェーンが挟まっているのか、こんがらがっているのか、リヤ変速機は無事か、フロント変速機は無事か、状況がどうなっているか見極めることです。


チェーンが落ちたときに経験豊富な上級者のライダーでもやってしまいがちなのが、チェーンが落下したまま乗り続けて、チェーンが落ちた側と反対に、変速操作して、ゆっくりクランクを回してチェーンを歯先へ戻そうとするテクニックです。
ベテランライダーが乗ったままチェーンをもどそうとして、何度か痛い目にあっているのを目撃しているので、すぐに止まって、バイクの後輪を浮かせて、手でチェーンを持って歯先へ戻すことを強くお薦めします。
乗ったままチェーンを復帰させるテクニックは、3つの危険を内包しています。


1つはチェーンをチェーンリングやくランクがからんで巻き込んで、チェーンリングとチェーンステーに挟まり、クランクが回らなくなって急停車することがあります。
2つ目はカーボンフレームのチェーンステーにチェーンが食い込んでしまい、表面の傷ならまだいいですが、クランクを強く踏み込んでしまうと、チェーンが深く食い込んで、カーボンフレームの割れの原因になってしまうことがあります。
こうなるとチェーン落下が大きな損害を生むことになります。
3つ目のアクシデントは、チェーンが食い込んだままクランクをさらに踏み込んでしまうと、リヤディレラーが引っ張られて、リプレースエンドが曲がったり、折れてリヤディレラーを巻き込んで走行不能になります。


チェーン落ちの原因はとにかく一杯あります。
外側チェーンケージの下端とアウターギヤの歯先との間隔の最適化、チェーンケージの向きの最適化、チェーンケージ内外のストローク調整の最適化など、セッティングのほか。剛性の高いチェーンケージのフロントメカの採用、剛性が高く変速性能を高める歯先形状やスロープやスパイクピンを採用したギヤクランクの採用、チェーンへの注油など、原因を解消することで変速性能を向上させて、調整することなどでチェーン落ちを防げます。


チェーン落ちしたらすぐに止まって、メカの知識があって、ライドの現場でチェーンが落ちてしまう原因を探して、その場で携帯工具を使って原因を解消できればいいんですけど、解消作業には取り付け設定の変更など、時間がかかってしまうこともあります。
だから現場ではとりあえずチェーンを歯先へ戻して、とっとと走りを再開してしまうパターンが多いんですね。
帰ってからプロメカニックに症状を話して、チェーン落ちしないように調整してもらったり、チェーン落ちしにくいパーツへ交換してもらいましょう。


現場でのチェーンの歯先への復帰は、手がチェーンの油で汚れることを覚悟することから始まります。
落ちたチェーンを手で持って、チェーンをチェーンリング側へ引っ張ってゆとりを作り、フロント変速機のチェーンケージを動かした位置のチェーンリングの歯先へチェーンをかけて戻します。
リヤ変速機のプーリーケージが短いレーシングゲージの場合は比較的軽くチェーンを引けますが、ロングゲージの場合は一旦チェーンを下方向へ引いて、ロングゲージを起こしてから前に引くとスムーズにゆとりを作れます。


チェーンリングの歯先の一部または全体にチェーンをかけて、自分で、または走っている仲間にバイクを支えてもらって、後輪を浮き上がらせて回るようにして、手でクランクを回せば、リヤのチェーンのかかりのズレも、変速していた本来の位置へ復帰できます。
ではでは。