クマさんのバイク専科

パワー測定クランクとサイクルコンピュータ

シマノのデュラエースのパワー測定クランクが発売されました。しばらくの間は170mmが日本の市場に供給されて、順次、各長さのクランクがリリースされることになると思います。取り付けは左クランクの取り付けが少し違いますが、構造そのものは一般のホローテック2クランクとほぼ同じで、0設定(キャリブレーション)はとても簡単でした。現段階では、ケイデンスやワット数などの測定データを表示するサイクルコンピュータは、自社製品ではなく、ガーミンが推奨されているようです。

 

シマノのデュラエースのパワー測定クランクに組み込まれた、左右のクランクの歪みセンサーで計測したワット数やケイデンスのデータを、ワイヤレスで送信するシステムはアントプラスで、ガーミンやレザインなどのサイクルコンピュータが対応しています。ガーミンのサイクルコンピュータはGPSセンサーが搭載されていて、その価格は、5万円から7万円台までとけっこう高い価格帯の製品です。大き目のカラー液晶にGPS のマップが表示される1000系モデルや、ミドルサイズの液晶の800系や、コンパクトサイズの液晶の400系モデルもあります。

 

その中でもサイクルコンピュータとして、大きくもなく小さくもない820モデルが組み合わせるには最適です。ハンドルに付属の台座を取り付けてセットしても、大き過ぎてじゃまになる感じはありません。ガーミンと言えばモバイルGPSというイメージでしたが、充電池の消耗が早くサイクリングには稼働時間が問題でした。サイクルコンピュータが搭載するGPS センサーは小型化して省エネ化されましたが、まだガーミンのサイクルコンピュータの稼働時間が、ロングライドやブルベの時間に対して短いと感じたら、トップチューブなどのバッグにパワーユニットを付けて走り、走行中もつないで運営しているようです。

 

820はミドルサイズのカラー液晶で、GPS マップが表示されますが、地図としては少し画面が小さい感じです。ブルベやロングラドやツーリングのコースガイドのデバイスというより、走行位置の確認や目的地までの距離の確認に使える感じです。GPSの機能を重視するなら液晶の大きい1000系のモデルを選ぶことになります。ガーミンのサイクルコンピュータのいいところは、パワーモードとか,ペダリングダイナミクスのアプリのインストールで、機能のバージョンアップが可能なところです。さらに、表示する内容のカスタマイズができるところです。電子デバイスの操作が苦手な人は、ショップのスタッフに要望を聞いてもらって依頼すれば画面構成を仕上げてくれます。

 

デュラエースのパワー測定クランクに組み合わせるなら、820のミドルサイズを選びます。液晶画面には、パワーモードの表示が多様で、表示のカスタマイズも分厚い取り説を見ながら設定が可能です。820は出荷時の状態で左右のクランクのパワーバランスなど、ペダリングダイナミクスなどパワー測定機能付きのクランクと組み合わせるのに、最適な表示機能が盛り込まれています。

左右のペダリングを表すペダル軸の円2つに、左右の脚の踏み込みの強さを矢印の長さで、踏み込んだ方向を矢印の方向で表す、見やすく分かりやすい機能が追加されるとパーフェクトでしょう。

 

現段階で、もっとも完成度の高いパワー測定クランクとサイクルコンピュータのシステムはパイオニアでしょう。ショップで購入したチェーンホイールをパイオニアへ送り、左右のクランクに歪みセンサーを張り付け、データの送信装置を右クランクに設定して、それをマイバイクへ組み込むことで、1つのマグネットの設定で、左右のクランクのワット数やケイデンスをフィールドで走りながら、リアルタイムで測定して専用のサイクルコンピュータに表示してデータを記憶できます。

 

充電式のサイクルコンピュータも、パワー測定クランクの機能に合わせた自社開発品が用意されています。カラー液晶モデルとモノクロ液晶モデルが選べます。左右のクランクのワット数のバランス、ペダル軸の描く円に沿ってワット数の大きさを矢印の長さで、踏み込んだ方向を矢印の方向で表すモードも搭載されています。でも、ワット数のデータの活用には知識が必要です。

 

例えば左右の脚のワット数の差をどう活用するかです。右脚が150ワット、左脚が120ワットだったとします。左脚側を筋力強化してバランスを改善した方がいいことは分かります。では現段階ではどうすればいいのか。左脚を意識して強く踏み込んでサイクルコンピュータに表示されるワット数を大きくしても、そんな無理のあるペダリングが続けられるわけがありません。でも、左右差を埋めてバランスのいいペダリングをするには、このくらい左脚の力が不足しているのかを体験的に理解できます。

 

上死点を足が越えて、クランクを踏み出す位置を早くして、加えるパワーを大きくできるか、どの方向へペダルを押した方が効果的か、脚の伸展する力を有効に伝える区間が長くなって、ペダリングの効率が向上するかを視覚的に理解できます。毎分60回転で1秒に1回、毎分120回転で0、5秒に1回という短い時間に行う脚のペダリングの動作を解析できる、これは画期的なことです。

 

では、上死点を越えた足が、より早くクランクを踏み込む効率のいいペダリングの動作へ移行するには、どうパワー測定クランクを活用すればいいのか。上死点の足の通過を意識したり、踏み込みを早くすることを意識しても、なかなか踏み出す位置を改善できません。ペダル軸が描く円をイメージして、足を円く回すといいというのが定説でしたが、それでは踏み出す位置を早くすることはできません。脚の末端の足を回すイメージを捨てて、太ももの上げ下げを意識してペダリングします。

 

膝から下の脚は踏み込んだり回すのではなく、軽く支えて、太ももの上下の動をペダルに伝えるイメージです。すると自然に上死点を越えた足がより早く踏み出せるようになります。体の構造、ロードバイクの構造から自然に導き出される効率のいいペダリングです。「太もも主導」のペダリングを意識すれば、踏み出しを早くしてペダリングの効率はアップします。これは比較的簡単に意識して動作できるようになります。普段のペダリングでは意識しなくても、向かい風、上り坂で少し意識するとスピード維持に効果的です。

 

この縦方向の動きの動作に加えたいのが、クランクの長さをテコとして生かしてペダリングして効率をアップするために、ペダル軸が描く円の接線方向への踏み出しを意識することです。これは1秒から0、5秒に1回のペダリング中、それも踏み出しの区間で足を踏み込む方向を意識して、足が動作するので上級のテクニックです。上死点を足が越えたら斜め前方向へペダルを押し出すと、より早く踏み出せて、クランクを加速する区間を長くできて、しかもペダル軸の描く円の接線方向に近く、クランクの長さをテコとして有効に生かせて、強く踏み出すことができます。

 

上死点を越えた足を素早く斜め前方向へ踏み出し、3時の位置から下死点へ向かって縦方向へ踏み下ろし、さらに、上死点を越えようとする反対側の脚の動きをサポートするために、下死点へ向かって踏み下ろさせる足を後ろへ押し出す動作を加えるという、パワーの抜けの区間をなるべく小さくするペダリングへとつなげられます。一気にこんな複雑な上級ペダリングを実現することはできません。最初は太もも主導のペダリング、斜め前に踏み出すことを加え、最終的に下死点で足を後ろへ押し出すという動作を加えるという段階を、1年くらいかけて身に付けることになります。

 

効率のいいペダリングは1つではありません。筋力や体重や心肺機能や耐乳酸性、ペダリングテクニックにより違いますが、基本的には、平坦コースや無風の区間で、バイクの慣性を生かして走れるときは、太もも主導のペダリングで縦方向に踏み込むペダリングで走ります。踏み込む以外の区間では脚の筋肉を休ませることができます。向かい風や上り区間、高速を維持する場合は高いトルクに打ち勝つために斜め前方向への踏み込みや、下死点へ向かう足を後ろへ押し出す動作を加えた、パワーのぬけの少ないペダリングで対応します。

 

いずれのパワー測定クランクにしても、計測したデータをどう生かすかの知識が重要ですし、シリアスライダーがトレーニングに活用するには分かりやすい解析ソフトも重要です。ハードのメーカーがそういう使いこなしの情報を、シリアスライダー、トライアスリート、ロングライド、ヒルクライマー向きなど細分化されたソフトを広めてくれるといいですね。データの解析まではしなくても、ペダリングの効率アップを目指したいライダーは、効率のいいペダリングとはどういうことかを知って、自分の実走データと比較して、踏み出しの位置の早さを意識したり、ペダルを踏み出す方向など、ペダリングを修正して効率アップすることもパワー測定クランクの採用で可能になります。

 

だけど、パイオニアが表示しているペダリング効率というのはどうにも理解できません。パーセンテージで表示されますが、何に対してのパーセンテージなのでしょうか。理想的なペダリングとはこういうペダリングですという、バイオメカニクス的なアプローチの理想のペダリングがベースにないと、それに対して効率が高いとか低いという評価はできないと思うのですが。まさかモーターのように、円の接線方向に常に力を加えるのが理想的なペダリングという想定はしていないとは思うのですが。

 

人間の左右の脚で行うペダリングは、どんなにテクニックが磨かれていても、モーターのように間断なく接線方向に力を加えて、クランクの長さを有効に使って力を加える、そんなことできません。サイクルショップのスタッフはそういう部分でも、パワー測定クランクの使いこなしの知識を身に付けてアドバイスする必要に迫られます。しかし、電動メカのプログラム変速、多機能サイクルコンピュータ、スマホとの情報共有やサイクルコンピュータ化、ワイヤレスメカ、パワー測定機能付きクランク、電動メカプラス油圧ディスクブレーキ、Eバイクコンポーネント、色々なデバイスが登場しています。

 

ワイヤレスでコンポーネントやサイクルコンピュータやスマートフォンが連動したり、パソコンに機能変更のソフトをダウンロードして、コンポーネントの頭脳部分へインストールして、インデックス変速やプログラム変速の設定をアップデートするようになりました。ソフトを書き換えるなど、サイクルショップはいよいよ家電屋さん化していきますね。ではでは。