クマさんのバイク専科

シマノのディーラーズマニュアル

シマノのホームページには、シマノのコンポーネントパーツの取り付けから調整、メンテナンスの方法、トラブルシューティングを説明する、ショップのメカニック向けのディーラーズマニュアルと、ユーザーマニュアルが掲載されています。知識と経験がないひとが、ディラーズマニュアルを見て、コンポーネントパーツの組み立てや調整をして、形にはなったけど自信がない場合、調子がおかしい場合は、プロのメカニックによる点検を受けることを推奨しています。

 

当然、自転車整備士などの資格や知識を持つひと向けの、ディーラーズマニュアルの方が詳しく細かく説明されています。ユーザーマニュアルは組み付けや調整をはぶいた、メンテナンスの方法が紹介されています。ショップで売っているパッケージに入った状態のパーツに、昔は詳しい取り付けや調整の方法が書かれた数カ国語の取扱説明書が入っていました。それが、最近のパッケージには、簡単な取り説だけが入っているだけになりました。

 

シマノのある時期からの本音は、知識と技術があるプロメカニックに組み付け調整してもらって乗ってほしい。その後もスポーツバイクは使えば消耗するから、プロのメカニックの目で消耗や交換の時期を見極めて、調整したりメンテナンスしてもらい、本来の性能を引き出したりキープすることを想定しています。これだけはっきり提供する情報を分けていると言うことは、ユーザーには組み立てや調整をして欲しくないと言うことでしょう。スポーツバイクの組み立て調整の不備は、命やケガに直結するトラブルの原因になる可能性があるからです。

 

確かにユーザーで深い知識や技術を持っているひともいますが、パーツの性能を引き出す知識も技術も確かなものがないのに、工具があれば取り付けや調整ができるので、形にはなるので、組み付けも調整も、できていると思っているひとがいます。例えばホイールの振れ取りですが、プロのメカニックがリムの振れたホイールを調整したといます。プロのメカニックはリムの見た目の振れの現象だけでなく、原因を探り、見極めて整備の方法を決定します。

 

回転部のガタや変形。リムの部分的な変形。広い範囲の変形。スポーク曲がりや切れやスポークテンションのばらつき。ニップルの緩みやリムへの食い込みによる馴染み。ハブのフランジの変形。リムの縦や横への振れに集中しがちですが、ホイールのトラブルは色々考えられます。ユーザーで振れとりをできると思っているひともいます。現場でリムの振れを修正して帰って来た経験があるライダーもいるはずです。

 

一からホイールを組める知識のあるひともいるでしょう。プロメカニックと同じように、リムの縦振れを10分の5mm、横は10分の2mmくらいに追い込めたとします。ホイールのセンターも左右で10分の4mm以内に収めることができたとします。見た目は同じようなホイールになります。では、腕っこきのプロメカニックが組んだホイールと、ユーザーが振れとりしたり、一から組んだホイールでどこが違うのか。

 

それは、50km、100km、200kmと走ってみれば分かります。ユーザーの調整した、一から組んだホイールは、10分の何mmに振れを収めたはずのホイールに振れが発生しやすいのです。ホイールの整備台にセットして、リムの縦や横の振れが収まるようにニップルを回して調整します。ニップルを動かして、リムの振れがぴったり解消されて,センターが出ていても、スポークのよじれ、ニップルとリムとの接触部分の馴染み、スポークテンションのばらつきなどによる、リムの振れの原因を内包したホイールになる可能性が大きいのです。

 

プロのメカニックによっても方法が違うことがありますが、前輪の場合は、縦横のリムの振れを、ニップルを回して、左右、そして全体のスポークのテンションがなるべく一定になること、リムの剛性に見合ったスポークテンションを意識して、10分の5mmから2mmを目指して振れ取り作業します。ニップルを少し余計に締め込んでスポークのよじれ分だけ微妙に戻す。スポークやハブやニップルに適度な負荷をかけて、馴染みを出す慣らし作業をしながらスポークテンションを上げて仕上げる、などのホイールの調整や組み上げるテクニックやノウハウが駆使されて、振れが出にくいホイールに仕上がります。

 

ディーラーズマニュアルを見れば分かりますが、細かい組み立てのポイントや調整のポイントがいくつも積み重なって、初めてそのパーツ本来の性能を発揮できるようになります。プロメカニックの目から見て本来の性能を発揮できていないなというのをよく見ます。プロのメカニックは、数々のスポーツバイクの組み立てや調整、メカトラブルの修理、オーバーホールなどのメンテナンスを経験しています。締め付けトルクに関しての知識もあります。旧モデルの組み立て調整の知識やノウハウがベースにあって、新モデルの取り扱い方法が加わり、多くの引き出しを持っているわけです。

 

そんな知識やテクニックをユーザー自身が作業できるように身に付けるには、ユーザーマニュアルをプリントアウトして熟読したり、作業する時に手元へ置いて、自分で組み立てや調整にチャレンジするしかありません。調整不良のリスクマネージメントとして、プロのメカニックにチェックしてもらい、ダメ出しをしてもらうというのを繰り返して、整備テクニックを身につけるといいでしょう。

 

ディーラーズマニアルはメーカーのスタッフが、製品開発からリリースまでに作成するわけですから、時間を制約されるでしょうが、あらゆる面から考えて、なるべく分かりやすく、イラストと文章で詳しく書かれています。でも、その詳しさをユーザーの知識と経験がベースになって理解できるか、分かりやすいかが問題なのです。時にはプロメカニックでも把握するのが難しい内容もありますから。でも、自分で愛用のバイクをメンテンンスできるのは理想的だな。プロのメカニックも初めはそこから始まるのだから。ではでは。