クマさんのバイク専科

ブレーキパッドのチューニングは慎重に!

湯袋峠という峠道の上り坂を、インナーギヤ34T×28Tでえっちらおっちら走っていると、反対側の車線をいい勢いで下って来て、そこからアールが急になる場所です。
スピード出しているなと思った瞬間、シュシュシューとカーボンホイールでブレーキをかけたような音がして、振り向くと、後輪から滑り出してガシャッと音がして、転倒したまま道路を外れて枯れ草の中へ転んで行きました。


クルマの通りが多い道だから、引き返して転倒したライダーと自転車を安全な場所へ移動しました。
骨折はないようですが、頭を打っているように見えたので、ヘルメットを確認すると、側頭部が路面と接触して、アウターシェルがすり減って、発泡スツロール製の帽体にひびが入っていました。
手をアスファルト路面へついたらしく、ウインターグローブの手の平側がぼろぼろになっていました。
最大の金銭的な被害はアソスのウインタータイツに穴が開いたことでしょう。
左側のブラケットは変速レバーの先とブラケットフードがすり減って、しかも角度が内側へ曲がっていました。


バイクを立てて見るとハンドルのセンターサドルの向きがズレていました。
頼まれてもいないのに、バイクの点検を始めていました。ホイールの振れはないのでこのまま走れそうです。
タイヤは前輪は問題なし、後輪はトレッドゴム全体がかなりすり減っていました。
しかも、フラットスポット的な痕跡がそこら中にありました。
しょっちゅう後輪をロックして、路面をタイヤを滑らせながらバイクを止めている感じです。
そんな乱暴な走りをする感じのライダーには見えないんだけど。


シマノの3支点のデュアルピボットブレーキアーチで、ブレーキパッドがスイスストップの黄色のカーボンリム用です。
ホイールはカンパニョーロのボーラワン35mmクリンチャーの最新モデルの組み合わせでした。
タイヤはコンチネンタルのグランプリ4000の25mmでした。
この新しいカーボンホイールを買ったときに、ショップのスタッフにグリップがよくなるしショック吸収性も良くなると、25mmタイヤを薦められて、さらに、よく止まりますよとチューンナップを薦められて、イエローにブレーキパッドを交換したのだそうです。


25mmのタイヤは太くてグリップ力は高そうですが、後輪タイヤはトレッドゴムがフラットスポットだらけで、タイヤカーカスのコードが見えている部分もあり危険な状態です。
真新しい大きなフラットスポットが転倒の原因でしょう。
後輪から流れて転倒したように見えたのはこのせいです。
確かにイエローのブレーキパッドは、カーボンリムホイールとの摩擦抵抗が大きく、よく利くブレーキパッドです。カーボンリムをすり減らす攻撃性も低いようです。
でも、大きいストッピングパワーは重要ですけど、普通にブレーキレバーを引いて、すぐに後輪がフルロック状態になるのはオーバースペックです。


転倒したライダーは打撲による痛みとショックが少しおさまり、落ち着いて来て、新しい車輪とチューンナップの話をしていると、そういえば信号待ちの時に普通にブレーキをかけても後輪がロックして、後輪タイヤがヌルーと滑っている感じがあったそうです。
スイスストップのイエローはシマノの3支点のストッピングパワーが増したブレーキキャリパーと組み合わせると、ブレーキングを開始すると前輪加重気味になって、前輪タイヤは路面に押し付けられて、グリップ力が増します。


ところが後輪は、慣性の力で路面から浮き上がる方向へ力が働いて、タイヤのグリップ力が低下して滑りやすくなっているのに、強力になったブレーキアーチのストッピングパワーがそのグリップ力を上回って、後輪がフルロックして滑りやすいのです。
コーナーの奥のアールが急になっているのに気付き、オーバースピードを修正しようと前後のブレーキを利かせた瞬間に、後輪がフルロックしてバイクを倒し込んでいるので、路面をコーナーの外側へ滑り出して転倒してから、道路からはみ出して草むらに飛び込んだのだと思います。


旧型のブレーキキャリパーでストッピングパワーが足りないと感じたときには採用してもいいですが、最新の強力なストッピングパワーを発揮するブレーキの場合は、前輪ならタイヤのグリップ力が増すのでスリップしにくいですが、後輪はグルップ力を上回って利き過ぎるので採用すると危険です。
大きなケガもなく良かった、とりあえずデュアルコントロールレバーやハンドルを戻し、チェーンが外れたのも戻したので、走って変えるそうです。
帰ったらシマノのカーボンリム用のブレーキパッドへ交換すると言っていました。
後輪タイヤもコードが見えていて危ないので交換してください。ではでは。