クマさんのバイク専科

チューブレスレディのチームが増えたけど!

 

一般ライダーの場合は、軽い走りを求めるか、パンクしにくさを求めるか、パンク修理の簡単さを重視するか、グリップ力やショック吸収性などの乗り心地かで選んで、プロチームの使うタイヤやホイールと、必ずしも一致していません。プロチームはスポンサーの意向に従って機材を採用しますから、必ずしも選手やメカニックが望んだ機材が使われていないこともあります。クリンチャーホイール全盛の時代に、山岳ステージとか、タイムトライアルでは、選手からの要望でチューブラータイヤに、カーボン製リムのチューブラーホイールと言う組み合せを採用していることもありました。

 

プロチームのバイクに装備されているタイヤは、時代によって構造が変化しています。昔はチューブラータイヤの決戦モデルに手組のアルミリムのホイールでした。軽量なラテックス系(天然ゴム)チューブを天然繊維コード採用のタイヤの中へ縫い込んだ構造で、専用のアルミ合金製のリムに、リムセメントという乾きの遅い接着剤で張り付けて固定する、チューブラータイヤの時代が長く続きました。ロードの決戦モデルの材質は天然繊維のコットンや絹でした、60年代から70年代に入ると軽量で抗張力が高く、水分を含みにくい、化学繊維のポリエステル系のポリコットンやアラミド繊維のケブラーやハイテンションナイロンなどの、化学繊維がタイヤコードに採用されます。

 

フランスのミシュランが先駆けて開発したのが、チューブラータイヤに対抗する軽さの決戦用のハイテンションにロンコードのクリンチャータイヤでした。中にはブチルチューブが組み合わされました。ビードワイヤーには軽量なケブラーが採用されて折り畳めるタイヤでした。パンクしたらその場でリムからタイヤを外して、パンクしたチューブを新品に入れ替えてパンク修理して、その場から全力の走りを再開できる、高圧設定のロード決戦タイヤのクリンチャータイヤを開発、クリンチャーリムの完組みホイールとの組み合せの時代がありました。

 

予備ホイールをサポートカーから供給してもらえるレース以上に、ロードバイクの一般ユーザーにとって、タイヤレバーでリムから脱着して、予備チューブと入れ替える、現場でのパンク修理の手間や、修理にかかる時間は重要な課題です。パンク修理の簡単さや、予備チューブを何本か持って走れる安心感などで、ハイグリップコンパウンドのトレッドゴムを、高圧設定やブチルチューブを採用して、タイヤサイドを変形させないで、路面へ押し付けてスムーズな路面で高いグリップ力を発生させる構造なので、多少硬い乗り味になる傾向が指摘されますが、クリンチャータイヤはチューブレス、チューブラー、チューブレスレディが選べる現在でも多くのライダーに使われています。

 

現場でのチューブラータイヤのパンクによる張り替えは、チューブラータイヤユーザーの、パンクしたときの悩みの種だったのです。チューブラータイヤの張り付けは、リムとタイヤの接着面にリムエメントを塗って、指先にべたっと付かなくなるまで乾かしてから、少し空気を入れたチューブラータイヤを引きながら、リムにセットしてセンターを出して、タイヤがよじれないように4気圧から5気圧くらいにセットして、できれば24時間置いて圧着させます。最近の合成ゴム系のリムセメントでは20分ほど乾かして張り付けたら、3時間ぐらいで実用強度になりますが、メーカーでは24時間以上置くことを推奨しています。

 

リムセメントはすぐには乾かないので、一般ライダーの場合は、リムセメントをタイヤの接着面に塗って乾かしてから折り畳んで持って行ったり、接着して使っていたタイヤを外して、リムセメントの付いたままの物を折り畳んで、予備タイヤとして持って走っていました。空気圧を上げてリムと圧着させるまでは慎重に走り出していました。乾きの遅いリムセメントの実用接着強度が高まるまでの時間がかかるリスクは、ミヤタの両面粘着の感圧接着剤を採用したリムテープが解消してくれました。

 

リムに両面粘着のりムテープを張って、フィルムの付いたままの状態でタイヤをリムにセットして、センターを出したらフィルムを抜き取って、炭酸ガスカートリッジ式のポンプか、携帯ポンプで7気圧まで上げて、慎重に3kmも走ればタイヤは圧着されて実用強度になって問題なく走れるようになります。予備タイヤがかさむので1本くらい持つのが普通ですね。パンクしたタイヤをナイフで輪切りにして、指を入れてリムから引きはがし、新しいリムテープを張って、タイヤを張って、炭酸ガスカートリッジ式ポンプで7気圧にして、慣れてくると5分くらいで交換できるようになります。手順を教われば、女性ライダーでも簡単にできます。

 

クリンチャータイヤとチューブレスタイヤの時代も、空気抵抗の軽減、転がり抵抗の軽減、ショック吸収性のタイヤの特性にプラスして、軽量なのに剛性が高くパワーロスが少ない優位性がある、チューブラータイヤのカーボンディープリムホイールは決戦用に使われていました。クリンチャーとチューブレスのプロチームのユーザーが少なくなり、チューブラータイヤへ一斉に戻って、23cから25cや28cの太いタイヤの採用がありました。

 

チューブレスタイヤは転がり抵抗が少なくショック吸収性も優れた物がありました。でも、リムからのタイヤの着脱がきつくてパンクした現場での作業が専用タイヤレバーを使っても大変なので、一般ライダーに受け入れにくい製品でした。マヴィックが手でタイヤを脱着できる、パンクを防止するシーラント剤を入れて使用するチューブレスレディタイヤ対応になって、プロの世界もクリンチャータイヤやホイールが登場した時のように、スポンサーの意向もあって、チューブレスレディタイヤと対応したホイールのプロチームのユーザーが増えています。チューブラータイヤとチューブレスレディタイヤでの戦いとなります。

 

プロチームのスポンサーである、ホイールやタイヤメーカーが販売促進するために、プロチームがチューブレスレディタイヤと完組みホイールを採用する、新しい動きになっています。そのバックボーンにはカーボンリムの成型の自由度が高まり、チューブレスやクリンチャータイヤに対応した、2ウェイフィットの複雑な断面形状のカーボンリムを成型できるようになって、チューブがなく、チューブに変わる層がコーティングされた、チューブレスタイヤとリムとの密着度を確保できる精度も向上しての、チューブレスレディタイヤとホイールの登場です。

 

チューブレスタイヤのリムからの着脱の大変さを解消したチューブレスレディタイヤ。転がり抵抗も小さく、ショック吸収性が高い特性が生かされています。パンクしにくいようにシーラントを注入するのが必須で、いざパンクした時には現場ではクリンチャーやチューブレスと同じく、予備チューブを入れて復帰します。現場でタイヤをリムから外すと、中からシーラント剤が出てくるので、ティッシュでふき取ったりのけっこう面倒な作業になります。ではでは。

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