クマさんのバイク専科

踏まなきゃ置いて行かれちゃうよ!、まさに!!

黒姫合宿に参加した大王のNさんの走りを見て、力んで踏み込むペダリングをしているので、それでは長くは走れませんよとアドバイスすると、「踏まなきゃ置いていかれちゃいよ」、と言われて、なるほどと思いました。他のスポーツをやっていた経験があって体力に自信があったり、そのスポーツと平行してロードバイクに乗り始めたライダーにありがちなのが、平地も上りの走りも、体力と筋力で解決できるはずという思い込みです。

 

あるスポーツに集中してトレーニングしていると、そのスポーツに適した筋肉が発達してボリュームが増すこともあります。筋肉の質という意味でも、スポーツの特性で遅筋や速筋の発達のバランスが変わることもあります。さらに、有酸素運動が得意、無酸素運動能力が高く俊敏に動けるという、選手としての特性となります。自転車選手でよくいわれるのは、あれほどの距離やスピードで自転車で走れるのに、16歳くらいからロードレースを選んでトレーニングやレースに取り組むので、脚の筋肉がペダリングに特化して発達しているために、歩くのが苦手という選手がいるのです。

 

コーチもトレーナーも脚への負担を考えて、移動はバイクを使うように指示することもあります。他のスポーツを頑張って取り組んでいた選手は、運動することや筋力が発達していて自信があるので、自転車に乗っても速く、長く走れると思っています。ところがロードバイクで走ってみると、瞬間的な速度では負けないのに、筋肉がそれほど発達していないライダーに、平地や上り坂で置いて行かれたりします。筋力頼りのペダリングは爆発的に乳酸が発生して、筋肉の収縮は抑制されて、長くは続けられません。

 

Nさんもアイスホッケーで鍛えられた筋肉を持ったライダーでした。ボクもラグビーのトレーニングでインターバルをかけて、耐乳酸性が高まり、中学時代からの持久力も継続していて、筋力や心肺機能や耐乳酸性にも自信がありました。平行してロードバイクやツーリングバイクに乗っていました。ロードバイクで平地を踏み踏みの筋力頼りのペダリングで、時速36kmで2時間ぐらい走れました。でも、ロードの当時の日本トップ選手と走ると、時速36kmキープして一緒に走っていても、彼らの走りがまったく内容が違うことが分かりました。特にペダリングのスムーズさに圧倒されました。上死点を通過した足の踏み出しの位置は早いし、腰の位置がぴったりサドルの上で決まって動きません。

 

後ろから見ていて、臀筋が盛り上がり、太ももを上下させているだけに見えました。まったく力みを感じませんでした。平地では110回転から120回転で、カンパニョーロレコードの167、5mmのクランクが、くるくる回るのです。前を走るライダーは森幸春選手でした。千切れないように、毎分90回転から95回転で走っていると、重いギヤを踏み過ぎだよとアドバイスされました。ケイデンスを上げる、脚の筋肉の速い動きは心拍数が上昇して呼吸数を増やして苦しいけど回復が早いこと、踏んでいる感じが少しでもあると、心拍数や呼吸数が低下して、しばらくは楽に走れます。

 

スピードを維持するための、踏み込むペダリングは、乳酸が大量に発生して、じわじわ蓄積して脚が動きにくくなって、筋力頼りでペダリングしていると、結局は1時間とか2時間は頑張れても、踏めなくなってスローダウンすることを教わりました。ではロードレースで勝負している時はどんなイメージで走っているのだろうと思い聞いてみました。ボクは体格が小さい森選手をヒルクライマーだと思い込んでいました。周りの選手も長い上りが得意で強いと思っていたと思います。

 

ところが「それは違う」というのです。もちろん、そこそこのスピードで上れるそうですが、上りでロングスパートして振り切るタイプではないそうです。上り坂の苦しい区間であえて足を使って、集団の前に出て余裕があることやスピードをアピールして、ここでは逃げられないからねと、コントロールしていたそうです。体格が小さく、筋力とのバランスのパワーウエイトレシオの良さによる、加速の良さという武器を生かした走りで、上り坂では仕掛けられないと思わせたり、上り坂が得意と思わせていたのだそうです。1000mタイムトライアルは1分12秒をコンスタントに発揮できて、ピストではポイントレースでも活躍しています。

 

森さんにロードレースを走るイメージを聞くと、チームメイトの高橋松吉選手や三浦恭資選手のように世界レベルでも通用する、最後までパワーで押し切るような走りをできなから、省エネルギーで走って、脚をためて、ためて、最終曲面でフルパワーの切れ味で勝負するという感じで走っていたそうです。という話を聞いて筋力頼りのペダリングからの脱出方法を考えました。まずは100kmから150kmのLSDトレーニングに取り組んで、毛細血管の発達を狙いました。時間はかかりますが、速く長く走るベース作りは重要です。ケイデンスを毎分100回転を目標に高く保って、脚の筋肉が早く動いて呼吸数や心拍数の上昇に慣れて、ストレスにならなくなりました。それが自転車生活を続けているベースになっています。ではでは。