クマさんのバイク専科

素材だけじゃフレームの特性を語れない!

 

チタン合金、カーボン、アルミ合金、スチール、マグネシウム合金、スカンジウム、フレームの素材や組み合わせは色々あるけど、フレームの素材で大まかにくくってロードバイクの乗り味を単純に表現するのは難しいと思います。アルミフレームは剛性が高すぎるとか、カーボンは振動減衰性が高くしなやかとか、クロモリは粘りがあると言われていますが、同じ素材でもグレードがあるし、形状や肉厚などの使いようで、フレームの特性は変化するので、フレームやバイクの傾向はあると思いますが、フレームの特性を素材だけでくくって語るには無理があると思います。

 

例えばアルミ合金でも素材はいくつも種類があります。フレームチューブの肉厚や外形をコントロールするテクノロジーも進化して、ライダーのパワーや体にストレスを与えるような、能力を上回る剛性とかを調整して、乗り味をコントロールしたアルミバイクがリリースされています。基本的には母材と母材の接合部を溶かし、ロー棒も溶かして合金化して接合する電気抵抗溶接のTig溶接で接合されます。大まかに言っても6000系の溶接後の母材劣化が少ないアルミ合金と、7000系の抗張力特性があり、溶接後に接合部の強度が高まるよう熱処理できるアルミ合金素材がバイクフレームには採用されています。

 

アルミ合金チューブのバテッド加工による肉厚の調整や、ハイドロフォーミングのような成型テクノロジーやフォーン加工、フレームの構造解析技術も進化して、外観のデザインの大口径化も含めて、フレーム素材やバイクフレームに求められる剛性やショック吸収性のデータを投入して、剛性の最適化や軽量化によるコンフォートアルミバイクの製造も可能になっています。キャノンデールやブリヂストンなど、15万円から10万円のボリュームゾーンのリーズナブルモデルのコンフォートアルミバイクに採用されています。

 

溶接後の熱処理が必要のないもの、溶接後に炉に入れて指定温度と時間を管理した熱処理加工が必要なものなど、アルミ合金チューブによって全くフレームに組み上がった時の特性が違ってしまいます。MTBやロードバイクに使われている1、2mmから1、6mm肉厚のオーバーサイズのアルミ合金チューブで組まれたフレームと、デダチャイやコロンブスの0、5mmから0、7mmのバテッドチューブで組んだものとは、フレーム重量も500gくらい違いますし、モデルや溶接技術や熱処理技術のばらつきがあり、乗り味や耐久性もまったく違います。

同じ肉薄チューブで組み上げても、加速性能や剛性感など違ったフレームになってしまうことを体験しています。チタン合金やスチールの素材のフレームでもそういうことがありました。

 

カーボンフレームは成型技術も重要ですが、フレームの有限要素法による事前のシミュレーションが可能になって、製造前段階でおおよその外観的な形状や重量、グレードの違うカーボン繊維の素材の配置や重ねる数などで、製造するフレームの剛性や部分特性など、どうすれどうなるかが解析されていて、特性を設定することが可能になっています。フレームを設計するプランナーの知識や技術や経験、トップライダーや一般ライダーからのフィーリングのフィードバックを反映させることもパイロットモデルを製造する前の段階で可能になりました。そして、ほとんどがアジアに集中するフレーム成型工場の技術レベルもフレームの性能に反映されます。

 

フレームの素材はチタン合金、アルミ合金、スチール、カーボン、スカンジウム、マグネシウムなどトップグレードから汎用品まで細分化されています。社内のデザインチームやプランナー、例えばピニンファリななどアウトソーシングもありで、時にはアジアの製造工場のプランナーがフレームを設計してブランドに提案しているケースもあります。ブランド本国の自社ファクトリーでの生産、国内協力ファクトリーの生産、アジアの協力工場の生産などで供給されています。同じ素材でも多様化しているので、乗り味も重量も大きく違います。だから素材で一括りでは語れなくなっています。

 

バイク選びは、誰もが試乗できて選べるわけではありません。経験や知識が豊富で、一緒に走ったことがあって、自分の走りを知ってくれているショップスタッフとのコミュニケーションで、これはマッチしているかなと探り出したり、試乗会へ参加して自らバイクやフレームを体験して、フィーリングを読み取る方法があります。モデルは数年単位でマイナーチェンジやモデルチェンジされるので、欲しいと思った時に手に入れないと手に入れられなくなります。数ヶ月待ち、時には1年待ちというモデルもあります。フレームの素材も重要なファクターですが、1台1台でプロフィールが違うということも知ってマイバイクを選びましょう。そうやって迷うプロセスも楽しんでしまいましょう。ではでは。