クマさんのバイク専科

現役続行、いいチャレンジだと思いました!

トップアスリートが一般的に限界と思われている年齢を経験して、激しいトレーニングの積み重ねで故障が発生して、慢性化するようになったり、ピークパフォーマンスを発揮できなくなったからと、追求した競技者ほど燃え尽きてモチベーションを保てなくなって、現役選手を引退することにつながることがあります。もちろん自分で限界を見極めて現役を引退するのは自由です、個人的な考え方もあるでしょうから。そうではない、38歳で陸上競技短距離の現役選手の存在がNHKで紹介されていて、トップアスリートのセカンドステージについて、素晴らしいコメントをしていました。キャスターのフェンシングの元メダリストが衝撃を受けていました。

 

現役続行とかいう意味合いが、勝利できなくなったからとか、自己記録を更新できなくなったからというような、1つのゴールではなく、そのスポーツを好きだから日本のトップステージ出場を目指したり、筋力や回復力など、体力の変化に合わせてステージを変えてでもスポーツを続けることが楽しい。そう思えたら、限界を決めて引退しなくてもいいんじゃないかと思います。勝利至上主義の時代より、体力の変化に合わせて自然な流れで選んだ、セカンドステージの世界の方が広がりがあると思います。

 

もちろん体力の変化とともに、自己記録の更新や勝利は無くなっても、自分で考えたり、動作解析の専門家のサポートを受けて、効率のいいフォーム作りを考えたり、それを身につけるトレーニングとか、工夫を積み重ねる気づきを体験することも楽しくなるはずです。人間は生まれて15歳から30歳ぐらいまでが、高い強度のトレーニングで肉体を刺激して破壊したり、怪我をしても回復力が高く、肉体的にピークパフォーマンスを追求できたり、発揮できる年代ですが、肉体的にも精神的にもバランスが取れていないと、最高のパフォーマンスを発揮できないスポーツのピークは40歳に近づきます。その経験を次世代に伝えるのも重要です。

 

陸上競技の短距離の世界では、日本のトップアスリートといえども通用しない時代が続きました。世界のファイナリストに入ることが夢の話のような時があり、ここ10年でやっと光が見え始めていますが、そういう選手の登場には、ベースになる競技人口を増やして、しかも、その中から才能を持ったアスリートの卵をリクルートして最新のロジックで育成する必要があります。トップアスリートのセカンドステージが、そういうベース作りの指導者になってくれるのが理想的です。それは苦しい勝利至上主義の世界への入り口へのガイド役かも知れません。トップを目指さない子も大勢いて、陸上競技のクラブのトレーニングやセミナーに参加しています。

 

勝ち負けだけの物差しでしか考えられない指導者との出会いでは、そういう子は陸上競技を嫌いになってしまいそうです。そうなって欲しくありません。野球、自転車、テニス、バレーボール、サッカー、どんなスポーツでも、エリートを育てるだけではなく、そのスポーツを好きになってくれる子も育成する必要があります。誰もがプロになる訳ではありませんから。トップアスリートへ導くコーチでもいいし、陸上競技をエンジョイしたい子供たちのための指導方法を心得たコーチでもいい。幅広い楽しみ方がスポーツには存在するということを経験した、間口の広さを持った指導者であって欲しいのです。

 

スポーツはレクレーションではない部分で、プロアマに関係なく、競技として究極を求めてしまうと、人生を賭けた取り組みが必要になったり、体を壊してしまうところに到達しています。フルタイムワーカーが人生を楽しむツールの1つとしてのスポーツという面をもっと見てほしいですね。トップアスリートが存在して、注目されて、そのトップを目指すスポーツの影響を受けて取り組む、トップダウン的なものだけではなく、もっとエンジョイスポーツを追求しても良いのではと思っています。スポーツを気軽に楽しめる環境とエンジョイスポーツのノウハウの引き出しを持った指導者の充実が望まれます。ではでは。