クマさんのバイク専科

ビンディングペダルとバイクシューズの組み合わせ

フレームサイズが最適サイズより15mm大きい、シェイクダウンしたばかりのピナレロ・パリのシートポストを、
もっと見えるようにする方法がないかとあれこれ考えていると、
脚を今更長くはできないし、できるなら教えてほしいけど、下駄をはいてバイクに股がるとか、
あれこれ邪悪な事を思いつきますが、決定的な解決策は見つかりませんでした。
それでも諦めが悪いから考えちゃうんですよね。そんな不純なことまで考えていて、
ビンディングペダルのロープロファイル化を考え直して見ました。

シマノのSPD-SLのアルテグラは、ペダル軸中心から踏み面までの距離が10mmでクリートの厚さが5mmだから、
ペダル軸の中心からソールまでの距離が「15mm」、マヴィックのカーボンソールの厚さが11mmなので
足の裏までの距離は「26mm」でした。
ルックのデルタクリートを使うモデルは、ペダル軸の中心から踏み面までの距離が12.5mm、
クリートの厚さが9mmでソールまでの距離は「21.5mm」、ソールの厚さが11mmだから
足の裏までの距離は「32.5mm」となり、6mmの差があります。
さらに、ソールが厚いモデルを使えば10mmプラスで42mmとなります。
そうなれば16mmの差になります。
さらにシマノの純正シムをソールとの間に入れれば5mm遠くできるのでその差は21mmになります。
これでペダリングのフィーリングがどうなるか分からないけど、シートポストが20mm以上見えるようになるかも。

そんな思い付きの中でまともそうなのが、ビンディングペダルとバイクシューズの組み合わせを変える事でした。
フィジークの2005年頃に発売された旧型のバイクシューズは、ブランドがどう言おうと、
どうみてもソールがぶ厚くて不評でしたが、ペダル軸中心からの高さをかせげそうでしょ。
カーボンソールなのに厚さが20mm近くあります。
厚さがあるプラスチックソールのバイクシューズは試しましたが、駆動トルクがかかる場面で踏み込んでみると、
カーボンソールと比較して、ペダルの食い込みを感じてしまって、まるでソールが曲がっている感じでダメでした。

ちょっと昔のビンディングペダルシステムの主流と言えばフランスのスキービンディングブランドのルックのPPシリーズでした。
ルックのビンディングペダルの初期モデルは、バイクシューズのソールに3個の雌ねじを埋め込み、
ビンディングペダルとバイクシューズを連結するクリートという小物をネジで固定して足とペダルとクランクを連結させる構造でした。
ライダーのペダリングで生まれるパワーをバイクへ伝える重要なインターフェースの革命でした。

初期モデルは、デルタクリートというプラスチック製で、
バイクシューズのソールに3点ボルト止めのけっこう大きいクリートでした。
現在ルックの主要モデルはケオシリーズで、3点止めは同じですが、プラスチック製のクリートは小型になっています。
現行のビンディングペダルは、ペダル軸中心から足の裏までの距離が近いロープロファイル設計が広く採用されています。
最初に提唱したのはシマノでしたが、ルックもタイムもスピードプレイも
ロープロファイル化されて踏み下ろす足が安定する事をセールストークにしています。

ペダル軸の中心からバイクシューズのソールまでの距離、ソールの厚さ、インソールの厚さ、
ソックスの厚さで、足の裏からペダル軸の中心までの距離がきまります。
この距離は近い方が踏み下ろす足が安定します。
より低くという設計が正しいとされて、その方向性で動いてきました。
樹脂ボディ化されたシマノのSPD-SLビンディングペダルの構造も、105やアルテグラより、
デュラエースの特殊な軸受け構造を採用したモデルが1mmほど近くなっています。
バイクシューズもカーボンソールを採用するようになって、
7mm台の適度なしなりを持つ薄いソールのモデルが上位モデルの定番になっています。

ペダル軸の中心から足の裏までの距離が24mmあったルックとバイクシューズの組み合わせと、
距離が近くなる代表のような、15mmのデュラエースとマヴィックのシューズの組み合わせで比較すると、
ペダリングのフィーリングがまるで変わってしまいました。
天狗様がはいているような高下駄をはいているのと、草履をはいて歩いているくらいの差がある感じです。
足の安定感や膝から下のすねやふくらはぎの筋肉への負荷がまるでちがいます。
高さがあるペダルではふくらはぎとすねの筋肉への負荷が増えますが、ほんの少し足の角度を変化させるだけで、
ペダル軸の中心と母指球の位置を変化させることができます。

カカトを少し上げると、ペダル軸が深くなり足が安定して踏み出しやすくなり、
踏み出す方向も変える事ができて、接線方向へ踏み出しやすくなりペダリングの効率がよくなります。
結果として膝から下の筋肉を使う事になりますが、筋肉が発達したライダーが無意識で使えるようになるペダリングテクニックで、
この遠さの要素が成立していると、ロープロファイルの組み合わせより、このテクニックを反映しやすいのです。

ルックのペダルを輸入しているユーロインテグレーションの岡部さんに、
選手にこの体験をさせて見た糸思い、デルタクリートの旧型ビンディングペダルが残っていないか確認の電話を入れてみました。
試乗に使っていたものがあるそうで送ってくれる事になりました。
そのときのやり取りで、このペダル軸の中心から足の裏までが遠いモデルを愛用して板のが、
故人になった森幸春さん、そしてアンカー事業部の元ソールオリンピックのロード日本代表だった鈴木光宏さんだそうです。

2人はこのビンディングペダルシステムのペダル軸から足の裏までの遠さを利用して、
ほんの少し足の角度を変えて、接線方向に力を加える効率のいいペダリングテクニックを駆使して走っていたんでしょうね。
ロープロファイルのビンディングシステムは、踏み込む足は安定しますが、
亜芯角度を変化させて接線方向への踏み込みが難しくなっています。
ペダリングテクニックが発揮しにくい組み合わせになっています。
もちろんお互いにメリットとデメリットがありますから、
ビンディングペダルの構造のトレンドはロープロファイル設計になっていますが、
遠さは悪い事というイメージは見直してもいい要素かもしれません。ではでは。