職人マツナガ通信

2月23日

仮はめ。
ここ数年、チューブラータイヤがまた見直しをされてきているようです。
チューブをコードで包み込む、その構造から昔は丸タイヤなどと呼ばれていました。
チューブラーがクリンチャーに比べて乗り心地がよいというのも、その断面がまん丸からきています。
ボクがサイクリングを始めた頃は、ロードレーサーといえば、チューブラーしかありませんでした。
チューブラーは、リング状のタイヤをリムに接着剤で取り付ける構造なのですが、
このタイヤをリムにのせる作業が一苦労でした。
当時は、チューブラーテープというものはなく、リムセメントという接着剤で取り付けるしかなく、
これがいわゆるボンドと同じ状態なので、ベトベトで取り扱いがやっかいで、
新品のタイヤをベトベトドロドロにしてしまったり、服や回りの家具についてしまったりして、よくオフクロに怒られました。
なので、新品のタイヤを取り付けるときは、リムセメントを塗る前に、
一度はめてる仮はめをしてタイヤをのばすのがセオリーでした。
今も昔も、いいタイヤはコードしなやかでコンパウンドもやわらかいの、リムにとてもはめやすいです。
ボクが始めた頃は、とても高価なタイヤは替えないので、
安いゴムのかたまりのようなタイヤを使っていました。
これがまた、ゴムがかたいので全然のびないですね。
まず、普通のように作業をしたのではびくともしません。
そこで、仮はめをする前の、タイヤのばしをします。
タイヤ足に引っかけてひっぱたくらいではのびないので、
タイヤを木やガードレールの柱に引っかけて全体重を掛けて引っ張ってのばします。
そうやっても、体重40kgちょっとの非力な自分には、リムにはめるときはかなりかたく、
いれることができなく、かといって手伝ってもらえることもなく、
どうしたらいいんだ、っと何度泪をながしたことか。
でも、とにかくやらないと乗れないので、
なんだ、かんだと非力な自分でもできる方法を考えていれていました。

今でも、この仮はめは、いいタイヤの時もやっています。
一度はめて空気圧をマックスまであげることで、初期伸びをだします。
伸びをださないではると、リムにはめたときの張力バランスが悪い時があり、
張力バランスの悪いと縦振れの原因になります。
四十年近く同じ作業をしていることになるんですね。
でも、最近はいいリムテープがでてきたことで、
リムセメントの呪縛からのがれられたということは、今昔の感に堪えません。