職人マツナガ通信

7月30日

固着。
古いバイクのレストアをお受けするとき、
まず確認しなければならないのは、シートピラーが動くか、ハンドルステム(ノーマルヘッドの場合)が動くかです。
各部品の素材の組み合わせがアルミとアルミ、鉄とアルミ、カーボンとアルミという組み合わせですと、
はめあい部分に水や汗の進入が原因で腐食接着してしまうことがあります。
ひどい物になると、溶接したくらいつよくついてしまい、てこでも動かなくなってしまいます。
そうなってしまうとほぼお手上げ状態となってしまいます。
この手の対応作業としては、
浸透性のよい油(ラスメペなど)ごめにする。
朝夕に固着部分に油を入れて二・三日油をなじませて作業をする。
それでも動かないときは、固着部分に熱をかけて、素材を膨張させてうごかす。
それでも動かないときは、ピラーをぶった切って、フレームの中にのこったピラーを削りとばし、最後にリーマーして仕上げをする、
ですが通常はここまではやりません。
フレームを破損させてしまうこともありますので。
なぜ、こんな荒技をやったことがあるかといいますと、
エキップアサダの浅田顕監督と選手育成チームを立ち上げたとき、
チームのメカニック的なことをやってました。
選手は乗るのが仕事で、なかなか自分のバイクの整備まで手が届かず、
(駆け出しの頃はそれではいけないのですが)
ちょっと、目を離すとピラーとフレームを固着させてきて、
”うごきませ~ん”
と泣きついてきてました。
こんな理由でいろんな修理をしました。
まあ、結果的には自分のキャリアを上げる事になっていますので無駄な経験ではありませんでしたが。

前置きがながくなりましたが、
少し前にお受けした、オリンピック号、
見た目は、かなりやばい、状態でしたが、
油ごめ作戦でピラー、ステムともに動かす事ができました。
古いバイクレストアの第一関門突破です。