職人マツナガ通信

4月18日

踏み際の魔術師。
先日プロジェクトMを納車した、ご近所のSさんからインプレッションを頂きました。

Sさんの目論見どおりのバイクに仕上がったようで、大変良かったです、ホッ。
ご希望だったしなるフレーム、これも今までの経験があるので作れました。
以前にも書いた事があるのですが、
むか~しに、キングミラウこと、元プロロードレーサー、現在は日本ナショナルチームの監督などもやられている三浦恭資さんのフレームを作ったことがあります。
当時全日本チャンピオンのタイトルもとって、
飛ぶ鳥を落とす勢いの全盛の頃でした。
ものすごい筋力で重いギャを踏み倒すペダリングしていたので、
当時としては最強のカーボンチューブを使い、キンキンに堅いフレームをつくりました。

自信満々でお渡ししたのですが、ほどなくして乗らなくなってしまいました。
その理由を聞いたところ、堅すぎるということでした。
いろいろ調べていくうちに、どうも、立ちこぎしたときのペダリングリズムと、
フレームがしなってもどってくるタイミングが同調してないのが原因ではないかということになりました。
かたけりゃ、いいってもんでもないだな、ということを学びました。
ペダリングリズムとしなりの同調に関しては、
自分自身で、ヘロヘロの薄肉クロモリチューブでやわやわのフレームをつくって体験してみました。
非力なボクでも、確かにダッシュをしていくと踏んでいる時に、フレームのしなりが戻ってくるのか、
同調せずに、バックフレームが踊り出して後輪が跳ねたりしました。
ライダーの持っているエネルギーを、
いかに有効につかえるようにするか、
自転車をつくる上で、重要なファクターですね。

”昨日(4月17日)、PROJECT M2号機で今期のヒルクライム初戦、ツールド八ヶ岳に参戦してきました。
記録は1時間9分48秒。
昨年の1号機の記録、1時間12分15秒より2分以上の短縮ができました。
体力的にはそろそろ限界を感じていましたが、まさかの2分短縮には驚きでした。
ヒルクライム専用に作って頂いた、PROJECT M2号機の感じですが、よくしなり、スプリングバックもしっかりしています。
重いギヤを力を入れて踏んでも、跳ね返される感じがなく、軽くクランクが回ってくれます。
そのため、1号機より後半の疲れを心配することなく、思い切って前半から踏み込んで行くことができます。
さらに踏んだ後に、バネが戻ってくる感じで良く進んでくれます。
1号機よりゆっくりとした周期で、大きく進む感じです。
逆にケイデンスが高くなる平地の高速巡航などは、しなったフレームが戻ってくる前に、クランクが次の回転に移ってしまうので、進む感じがなくなってしまいます。
このような走りは1号機の方が得意なようです。
まさに2号機は、注文通りのヒルクライムに特化したフレームに仕上がったと思います。

八ヶ岳はヒルクライムの中では、斜度が緩くハイペースな大会です。
おそらく2号機の場合、もっと斜度が急なコースに向いていると思います。
斜度が急な大会では、さらに良い記録が期待できると思っています。
今後の大会が楽しみです。
2004年に1号機、そして今回2号機を製作していただきました。
1号機の時は、ほとんどお任せで作って頂きましたが、2号機はかなり具体的な注文をしたと思います。
今回、注文通りのフレームを製作していただき、さらに記録も更新できて、とても嬉しい思いです。
ありがとうございました。
今後も宜しくお願いします。”