職人マツナガ通信

8月30日

久しぶりにフォークの製作シゴトです。
今やりかけているロードバイクフレームを、
タイヤサイズ26×15.0サイズがはいるツーリングフレームへの改造車用です。
まずは、バラバラのフォーク材です。
精密にいうとクロモリのフォークもいくらでも、オーダーメードのものが作れます。
各部材に肉厚、外径のバリーエーションがありますので、
ライダーや使い方にマッチしたものを製作可能です。
今回は、ツーリング用であまり大柄なライダーではないので、
フォークブレード(フォークの鞘)は23mm、肉厚9.5mm、
クラウンはプレス加工の柔らかいものでいくことにしました。

次は、このバラバラのものをロー付け(溶接)でつなぎ合わせます。
この状態では、真っ直ぐにのびた状態ですね。

そして、次にフォークブレードを指定寸法に合わせて曲げます。
このベンディングという作業は、
フレームビルダーのシゴトのなかで特にカンを要するシゴトだと思います。
今回は、ツーリング向けということなので、
ショック吸収を考えて、わざと先の方で大きく曲げました。
曲げる時は、バーナーで素材がほんのり赤くなるまで熱して、
分子間の繋がりをよわめてまげます。
昔は、熱を加えるともろくなったり弱くなったりしていたようですが、
現在の溶接構造用クロモリは、900度くらいの熱でしたら、
なんどかけても強さには影響がなくなりました。
こうして、赤く熱したブレードを、
ベンダーにのせて片側ずつ曲げていきます。
ビルダーによっては、日本一緒に曲げるヒトもいるようですが、
ボクは片方ずつ曲げていきます。
こうして左右殆ど誤差のないようにまげましたら、
次はエンドのロー付け作業となります。

こういう作業をするたびに、
クロモリというのはホントに優秀な素材だなと感心してしまいます。

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イタリア就職記 (19)

まずは、工房にある機械の説明を受けました。
まあ、基本的には日本でつかっていたものと変わりはなかったです。
ただ、イタリアはこういうレーシングバイク産業がさかんなので、
専用の加工機械がありました。
日本のように(あくまでボクの作業経験の範疇です)、旋盤とフライス盤で、
作業によっていちいち刃物を付け替えるという作業は必要ないような、
能率的な設計の機械がありました。
でも、この単一機能だと同じ作業で数をこなすのには大変いいのですが、
一品物を作る時にはちょっと応用が利かないと思いました。
その後これは、レーシングフレームの需要スタイルの違いだな思うようになりまし
た。
イタリアには、日本でいう細部まで寸法をするオーダーフレームという感覚が殆どな
いようでした。
P工房では、プロ選手のオーダーを除けば、
一般ライダーからのフルオーダーフレームは、
年に10台あるかなかだといっていました。
一通り機械の説明をうけると、
製作用の治具を一台、
おまえ用だと与えてくれました。
これをつかってミラノショーまでにフレームをつくらなければならない。
さあ、いよいよイタリアでのフレームつくり開始です。
アマンダスポーツで色々な作業の経験をさせてもらったので、
どうんな道具であろうとも、
カタチにする自信はありました。
治具を前にちょっと武者震いをした記憶が残ってます。