職人マツナガ通信

8月31日

今日の作業はフォークの仕上げです。
曲げまで終わったフォークを専用の治具にのせ、
設計寸法通りエンドをロー付けします。
エンドの付け方もビルダーによってまちまちのようで、
専用の治具をつくり両方いっぺんつけてしまう人もいますし、
ボクのように片方ずつつける人もいるようです。

エンドをつけ終わった後に、
今回はカンティブレーキ用台座もロー付けをしました。
こうしてできあがったフォークです。
ご覧のようにオーダーでつくると、
手間のかたまりのようなものになってしまいます。
もう人件費の高いニッポンではなりたたなくなっていく作業かもしれません。
クロモリフォークとカーボンフォークと並べられると、
単純にカーボンの方が高いというイメージがありますが、
カーボンのようなプラスチック成型ものは、
一度型をつくると次からはそう手間はかからなくなります。
カーボンの高いフォークは、
使われている炭素繊維が高弾性のいいものを使っているための、
材料コスト高だと思います。
ですから、手間だけでいくと、
クロモリフォークの方が高いといことになるかもしれませんね。

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イタリア就職記 (20)

画像は与えられた治具で作業をしているところです。
イタリアの治具はこのように、
立てて使われる物がおおいようでした。
日本で使っていたのは、横型でまさに定盤の上でつくるという感じでした。
これは日本人の設計による日本人の製作品です。
このあたりにも、日本人とイタリア人のものつくりの根本的な発想の違いを感じま
す。
イタリアで使っていた治具は、
ベースになる鉄板はかなりしっかりしていますが、
立てて使えるぐらいの重さの物でした。
かたや日本で使っていた物は、
決して立てて使えるような重さのものではなかったです。
治具の面は、フレームの各部の寸法を正確につくるベースになる大元のところです。
この面が歪んでいたら、
フレームのどこがセンターかがわからなくなってしまいます。
ですから、几帳面な日本人としては、
限りなく歪みのない水平な面を出すために、
治具の裏面に、ものすごい井桁をいれて歪みを止めた設計をしたので、
とても立てて使えるような重さの物はできなかったようです。
アメリカに行ったときも、何人かのビルダーの治具をみせてもらいましたが、
今日本で使っている以上のものはみたことがありませんでした。
逆にアメリカのビルダーが買って帰ったという話を聞いたことがあります。

しかし、ここで考えるのは、
自転車のフレームごときに、
0.何ミリの精度がいるのかなということもあるような気もします。
ですから、一概にイタリアのものはダメともならないとおもいます。
実際に作業してみて、
縦型、横型、どちらにも一長一短がありました。
ボクとしては、どんな道具でも、
同じ物をつくりだすのが職人の腕と考えてましたので、
特別に不満もなく、工夫してこの縦型で作業をしてました。

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