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SRAMの12速ロードグループセット -351走目

7日はSRAMやZIPPなどを扱うインターマックスの展示会に参加しに北千住まで行ってまいりました。

いつもは水曜日に参加していますが、今回は木曜日にSRAMから重大発表があるということで僕1人で展示会巡りです。

 

昨年のさいたまクリテリウムのときからすでに選手向けにはリリースされていたり先日のツアーダウンアンダーでもいくつかのチームが使っていたりと、発表まで秒読み段階となっていたSRAM RED e-TAPの12速グループセットが正式発表となりました。

フロント2s又はフロント1s × 12sのワイヤレス電動ギアで、リムブレーキ用とディスクブレーキ用のラインナップ、トライアスロン向け仕様という7パターンのグループセットにて発売されます。

目玉は当然のことながら12sスプロケット…なのですが、ギアの組み合わせに要注目です。

スプロケット

現在11sスプロケットの最小歯数はシマノ、カンパニョーロ、スラムともに11Tが最小でしたが、新型REDでは10Tが最小歯数となります。

これによりギアの組み合わせが、

  • 10-26T(10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-26)→1T差変速7回
  • 10-28T(10-11-12-13-14-15-16-1719-21-24-28)→1T差変速7回
  • 10-33T(10-11-12-13-14-15-17-19-21-24-28-33)→1T差変速5回

となり、1T差で変速出来る数が増えました。

11sのスプロケットでは、

  • 11-25T(11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-25)→1T差変速6回
  • 11-28T(11-12-13-14-15-17-19-21-23-25-28)→1T差変速4回
  • 11-30T11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30)→1T差変速4回
  • 11-32T(11-12-13-14-16-18-20-22-25-28-32)→1T差変速3回

というように人気の高い11-30Tや11-28Tでは1T差で変速出来る回数がたったの4回と12sと比べてしまうと少ないため、12sのほうがよりストレスのなくスムーズな変速が出来るようになったことが分かります。

このトップ10Tというギアに関しては、レースシーンではトップスピードが上昇しつつある近年の需要と、グラベルライドなどでのフロントシングル仕様における最高速度アップが見込めます。

また、トップ10Tにすることで、フロントチェーンリングの歯数を減らすことが出来ます。

なんのこったとなりますが、順番に紐解きますので少しずつお読みください。

フロントチェーンリング

RED e-TAP AXSのフロントチェーンリングは、

  • 50-37T
  • 48-35T
  • 46-33T

というこれまではサードパーティ製のチェーンリングブランドなどで実現できる組み合わせをSRAMは提案します。

ここまでは説明会での受け売りです。

ギア比の比較

重要なところはここからです。ギア比計算を交えながら紐解いていきます。

最大ギア比で12sと11sを比較します。

シマノ11sコンポーネントのフロント最大歯数は53T、スプロケット最小歯数は11Tの時のギア比は4.81です。

スラム12sではフロント最大歯数50T、スプロケット最小歯数10Tの時、ギア比は5.00です。

700x23cのタイヤを装着し毎時100回転のケイデンスで走ったとすると速度差は2.3km/hです。

ほんのわずかですが、フロントチェーンリングの歯数を増やさなくてもギア比が増えるようになったのです。

今度は最小ギア比を比較します。

(11sのスプロケットは人気のある11-28Tを想定しています。12sのスプロケットはこれに似ている10-28Tを想定しています。)

シマノ11sのフロント最小歯数34T、スプロケット最大歯数28Tを装備するとギア比は1.21

スラム12sのフロント最小歯数37T、スプロケット最大歯数28Tの時、ギア比は1.32です。

700x23cのタイヤを装着しヒルクライムを想定したケイデンス70回転で走るとその速度差は1km/hです。

速度差に関してはケイデンスが上がれば上がるほど差は大きく開きますが、スプロケットの組み合わせも併せると中速~高速域に最適化されていることが分かります。

これだけ見ると、ヒルクライム向きではないのね…となりますが。

スラム12sの最もコンパクトなフロントチェーンリングセットは46-33Tです。

  • フロント33Tスプロケット28Tで使えばシマノのフロント34Tスプロケット28Tと比べてギア比が小さくなる(=坂道がより楽、ギア比1.17)ことは目に見えて分かり、
  • フロント最大歯数46Tリア10Tのギア比4.6は、フロント50Tリア11Tのギア比4.54をわずかに上回るため、

               ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 

結論

超コンパクトなチェーンリングセットに見えて実は十分見劣りしないどころか、リア1T差で変速できる回数が増えることを含めるとトップスピードとしても最小ギア比としても、頻繁に使う中間ギアにおける変速のスムーズさとしても、どれをとっても11sに勝ることが良く分かります!

スプロケットがたった1枚増えるだけなんですが、すごく大きな差だと思いませんか?

ってこれを書いている僕も、うおおすげえなスラムと思いながら書いていますw

スプロケットに10Tを採用するというただこの1点だけでまさかこれほど変わるとは。

 

ただし12sの導入には11sのe-TAPにはなかったデメリットが登場します。

  1. ホイールのフリーボディをRED e-TAP AXS専用のXDRボディに変えなければいけない=シマノホイールが使えない ※MAVICなどはフリーボディの交換で対応が可能です。
  2. ブレーキアーチを除くレバー、フロントディレイラー、リアディレイラー、クランクセット、スプロケット、チェーンは他社製品やSRAM 11sとは互換性がないため、ほとんどフルセットで購入しなければならない=コストが高い

 

どちらかというと2が大きいです。11sのeTAP REDではシマノ11sと互換性があるため、例えば現在シマノ105の11sを使っている場合、クランクセット、スプロケットをそのままにして前後ディレイラーとレバー、チェーンは繋ぎ直すなどで対応が出来たため、導入コストを下げることが出来ました。

12sは現時点では一切合切互換性がないためほとんどフルセットで購入しなければなりません。

無論、現在シマノホイールを使用中の場合ホイールも新調しなければなりません。

昨日インフォメーションで掲載した額はグループセット(左右レバー、フロントディレイラー、リアディレイラー、バッテリー、バッテリー充電器)の価格であるためクランクセット、スプロケット、チェーン、ブレーキアーチは含まれません。

SRAM RED eTAP AXSのリムブレーキフロントダブル仕様をフルセットで買おうとすると…451,500円に消費税が加わり487,620円(税込み)…!

おお…!

高い…!

これに12sスプロケットに対応させるための各ホイールブランドのXDRフリーボディと組み替え工賃が入るので確実50万は超えます。

50万以上の価値、メリットを見出すにはまず現在のギア比や頻繁に使うギアをチェックする必要がありますね。