クマさんのバイク専科

体力の変化に合った前へ進むバイク!

ホイールを変えるとバイクの前へ進む感じが変わります。ショップが最初にオススメするチューニングがホイールなのは、費用対効果、走りの体感がまるで変わるからです。もちろんフレームを交換しても進み方が変化します。その走りの変化の効果は今までの経験では、車輪もフレームも同じくらいかな。人間エンジンは年齢やトレーニングの内容によって体力が大きく変化します。最も平坦コースを走れていたのは26歳から27歳でした。元気な頃は1000mを1分9秒台、平地での最高速度は67kmでした。でも、ただのジジイの自転車乗りになりましたから。

 

1000mを1分9秒台、200mを11秒台前半でコンスタントに走れていた時期がありました。1時間の平均になると時速36kmキープで、250ワットくらい、ゆるい上り坂では450ワット近くを出せていたと思います。その頃作ったのがアマンダスポーツのカーボン&スチールラグ接着フレームでした。記憶では中くらいの剛性の寸法が長めと、ギリギリまで詰めたのを2本に、当時最も剛性の高いのの、3本を作ってもらったと思います。マツナガビルダーが作ってくれた最も剛性が高いフレームを、イタリアのアンドレア・ペゼンティの工房へ持ち込んで北イタリアのロマーノ市周辺で試乗してもらいました。

 

ホイールは32本スポークで、リム重量435gのカンパニョーロのパリルーベ、マヴィックのSSCパリルーベ、マヴィックのGP-4で組んだものに、250gのクレメンのクリテリウムが標準仕様でした。踏み出しの軽さを求めて軽量リムのホイールも使いましたが、踏み出しは軽くても、駆動トルクが大きくなると剛性不足でパワーロスしてしまい、スピードの伸びを感じませんでした。剛性の高いフレームとのバランスは、剛性の高いホイールがマッチしていました。試乗したペゼンティもカーボンフレームのしなやかなイメージが変わったと言いました。実は、これはカーボンフレームの製作アドバイザーとしての、マツナガ氏のイタリアの工房への売り込みの一貫でした。

 

マヴィックの軽量リムのGL330やGEL280で組んだホイールでは、50kmくらいの距離で、時速43km平均くらいで走る集団からアタックが繰り返されるクリテリウムを、走り終わるたびにホイールの振れ取りが必要になるので、軽量ホイールは止めてしまいました。リム周辺重量の軽さは踏み出しの軽さには重要ですが、それ以上に駆動トルクが高くなった時に、ホイールの変形が少なく伝達効率のいいパワーロスがない、ホイールの剛性の高さが重要なことに気がつきました。フレームも軽量化が重要ですけど、それ以上にパワーを効率よく伝える剛性や反発力がそれ以上に重要と言えます。特にカーボン繊維のチューブを採用したフレームでは、弾性率と呼ばれるカーボン繊維のグレードや特性を表す数値が重要です。

 

三菱や東レとフレーム用のカーボンチューブを開発していた、アマンダスポーツの千葉洋三さんは、高弾性のカーボン繊維を使うこと、チューブのねじれを止めることが、クロモリチューブ製のフレームの剛性や強度やスプリングバックの特性を上回る要素で、石渡の022レベルをカーボンフレームで超えるのは大変だと言っていました。当時最先端の80tのカーボン繊維まで、フレームチューブに採用していました。まだまだカーボン繊維が開発されてアップデートして、チューブの性能が向上していく段階でしたから、何本かアマンダスポーツでカーボンフレームを作ってもらいました。3本目のロードフレームで当時最強の前3角のカーボンチューブと、チェーンステーとシートステー、フロントフォークにクロモリを採用したフレームを作ってもらったわけです。

 

2本目までのオーダーの経験で、クロモリラグは最も肉厚の厚いものを指定して、接合部分はフィレット溶接でロー材を盛り上げてスロープを作って補強してもらいました。カーボンチューブの接合部の根元から変形しないようにするためです。515mmのホリゾンタルのフレームで1150gありました。クロモリのフロントフォークは550gです。総重量は1700gになりました。フレームが1000g以下、フロントフォークが400g台が登場しているカーボンフレームとしては重い方です。カーボンフロントフォークに交換しても1550gです。パーツを組み込んで走って見ると、剛性が高くて踏み込むたびにスピードが伸びて、ライダーのパワーへダイレクトに反応するフレームでした。

 

描いていたイメージにぴったりのクリテリウムマシンに仕上がりました。これをシマノのデュラエースで組み上げて、イタリアのペゼンティの工房へ持ち込んだわけです。たまたまフレームサイズがぴったりだったので、ペゼンティ氏の愛用のバイクと交換して、ポジションを微調整して、工房のあるロマーノ市の郊外から、車の少ない道を一緒にドロミテ方面まで走ってみて、舗装路や石畳の道やアップダウンを走ってみた感想を聞いてみました。

 

当時のペゼンティ氏は毎週末100kmから150km走っていて、コロンブスのフレームチューブの開発エンジニアとして働いていました。ルックやタイムのアルミラグ接着のカーボンフレームに抱いていた剛性不足は感じなかったそうです。ハンドリングも癖がないし、ショック吸収性もよく、当時最強のカーボンチューブとフィレット溶接のラグ、その乗り味にはクロモリの剛性重視のベンディングフォークも貢献していると思います。そのバイクはペゼンティ氏が気に入ってしまい、彼が乗っていたチネリ・レザーMSと交換してしまったので手元にありません。

 

今の体力に合わせてカーボン&クロモリラグ接着フレームのプロジェクトMを体力の低下に合わせて作るとしたら、ダウンチューブはオーバーサイズの軽量モデル。トップチューブとシートチューブは80tの軽量な高剛性モデルを組み合わせ。チェーンステーとシートステーはクロモリの軽量モデルの組み合わせです。フロントフォークはオーバーサイズコラムの450gくらいのカーボンモデルが良さそうです。油圧のディスクブレーキの採用を考えるとしたら、フラットマウント台座仕様の採用も考えられます。組み合わせるホイールはカンパニョーロのボーラ35mmのオールラウンダーでしょう。

 

スポーツバイクつくばマツナガのショップの運営も忙しいので、フレームビルダー松永氏が年間に製作できる本数は、頑張っても月に3本くらい、1本の製作に設計から、材料選定、材料の加工、クロモリラグの溶接、接着、仕上げ、塗装、パーツの組み付けまで、松永氏が一貫して行って、オーナーに渡すのが恒例になっています。年齢から考えて、詰んだ経験も頃合いだし、溶接も接着もテクニック的にもピークを迎えています。今が他の見頃と言えるでしょう。もう少し仕様を考えてからオーダーカーボンフレームの相談をしてみようかな〜。ではでは。