クマさんのバイク専科

ビギナーライダーのペダリングを効率アップ!、パート1

初めてのスポーツバイクを手に入れたら、バイクを買ったショップで、体格や体力や走る距離に合わせて、サドルの高さやハンドルやステムの位置を調整して、快適に走れるポジションに設定するフィッティングを受けます。ビンディングペダルを採用ならクリートの位置も最適化します。昔から自転車には乗っていたので、ペダリングはもちろんできるし、バイクを右に左に操ることもできるし、スピードコントロールやしっかり止まることもできるはずと、走り出してしまうことが多いと思います。

 

スポーツバイクの乗り方を基礎から教えてくれるスクールはありませんから。我流で走ることになりがちです。スポーツバイクは重くても10kg、軽量なロードバイクは7kg前後です。ママチャリやパパチャリより、車重が2kgとか6kgとか、圧倒的に軽いし、クランクを踏み込んでみれば、スッとバイクが前に出て進んでくれます。まるで別の乗り物でスポーツの道具です。タイヤは23mmとか25mmと細いので、路面からの振動とかの伝わり方も、ハンドリングの軽さも違います。

 

ブレーキは止める力が大きく、ブレーキレバーを強く引いてしまうと、後輪タイヤ側のグリップ力を止める力が上回ってスリップさせやすく、ブレーキングはタイヤが細くなった分だけ、ブレーキレバーの引きがデリケートになります。ビギナーライダーがペダリングの基礎知識を知らないで走り出すと、心拍数も呼吸数も苦しくならない、毎分あたり60回転とか70回転の毎分あたりのクランク回転数(ケイデンス)で、少し踏み味を重く感じるギヤ比を選んでペダリングしています。

 

走り出して1時間とか2時間は、呼吸も心拍も苦しくならないところがこのペダリングの落とし穴なのです。最初は脚の筋力を頼りにする、軽く踏み込むペダリングを楽に感じてしまうし、クランクを踏み込んだ以上に、スーッとバイクが前へ進んでくれる、この感覚が気持ちよく、ついつい踏み踏みのペダリングが正しいと思ってしまいがちです。踏み踏みのペダリングは有酸素運動と無酸素運動のミックス状態になります。

 

有酸素運動は呼吸で体内に取り入れた酸素を、細胞内のミトコンドリアという器官を使って、体内に蓄積されているグリコーゲンをATPに分解して、筋肉繊維を収縮させる運動で、主な老廃物は二酸化炭素と水です。老廃物は血液に載せて呼吸や汗などで体外へ排出されます。緩やかな筋肉の収縮なので、無酸素運動のような、強く大きなパワーは発揮できませんが、時速20kmから25kmくらいの運動強度が中くらいのレベル以上だと、グリコーゲンを分解して行われます。運動を始めて20分から30分すると、時速15kmから20kmくらいの低い運動強度レベルでは、体脂肪をグリコーゲンへ変換して、運動エネルギーとして使い、いずれも、長く続けられる運動です。

 

無酸素運動は酸素なしで素早く大量のグリコーゲンを分解してATPを大量に作れて、強い筋肉の収縮をできるので、大きな力を発揮できます。高速走行やスプリントなどで強くクランクを踏み込んで力を発揮する、運動強度の高いときに有酸素運動に無酸素運動が加わります。爆発的なパワーを発揮できる無酸素運動ですが、老廃物として筋肉の収縮を妨げる乳酸が発生します。強度の高い運動では大量に乳酸が発生して、脚の動きが重くなります。時速25km以上、35kmくらいまでの走りが長続きしないのは、血液中の乳酸の濃度が高まって、脚の筋肉が収縮しにくくなるからです。

 

乳酸はグリコーゲンを無酸素で分解した、不完全燃焼させた老廃物ですが、体には発生した乳酸を除去・分解する機能があります。さらに、乳酸に耐えて筋肉を収縮させる能力の耐乳酸性があります。トレーニングによって能力に差が生まれます。無酸素運動で発生する乳酸の量が、乳酸除去能力を上回って、血中乳酸濃度が高まり、筋肉の耐乳酸性を上回るので、脚の筋肉の収縮が鈍くなって、クランクを踏めなくなるのです。時速25kmや27kmくらいで走る、ケイデンスが70回転や80回転以下のやや重く感じるペダリングでは、有酸素運動にわずかに無酸素運動が加わったペダリングになります。

 

じわじわと乳酸が発生するペダリングになりますが、脚の筋肉を頼りにするペダリングは、呼吸数も上がりにくいし、心拍数も上がらないので、ライダーにもよりますが、1時間から2時間ぐらいは楽に走れるので、時速25kmとして50kmも走れてしまうので、ついついこのペダリングでいいのだと思いがちです。なにせ体感的には楽ですから。ところが、踏み踏みのペダリングは、じわじわと乳酸を発生させて、乳酸除去能力を少しずつ上回って、耐乳酸性をも上回って、筋肉の収縮を妨げる血中乳酸濃度へ高まります。すると、それまでクランクを踏めて、気持ちよく、いいスピードで走れていたのに、突然、脚に力が入らなくなって、クランクを踏めなくなります。

 

体内に蓄積されている運動エネルギーのグリコーゲンを使い切ったり、糖質刺激がないのでグリコーゲンの供給を体のシステムが絞ったわけではありません。脚を踏み込めなくなった原因は、踏み込むペダリングで血中乳酸濃度が上昇して、筋肉を収縮させやすい閾値を超えてしまったからです。そういう経験があったり、ロングライドなどで繰り返し、脚が踏めなくなるパワーダウンをしていたら、軽く感じるギヤ比を選んで、ペダリングのケイデンスを、少なくとも10回転から20回転上げる必要があります。回転重視の疲れにくいペダリングの、ケイデンスの目標は90回転から120回転です。パート2へ続く。ではでは。