クマさんのバイク専科

ゴアテックスとエントラントのレインウエア

梅雨入りともなると、気になるのはレインウエアのこと。ロードレース、ロングライド、ツーリング、ブルベなどのイベントでは、雨でも走ることがあります。どの程度の雨の侵入を防げれば満足かで、軽量なマイクロシェルのウインドブレーカーの撥水性を頼りでいいのか、ゴアテックスのレインウエアの上下が必要なのか。自分の走りに合ったレインウエア選びが必要です。バイクライドに最適なモデルは、ライド中に風をはらまないタイトフィットのものがいいですが、体の動きが大きいアウトドア用では、動きやすいルーズフィットの方がいいので、自転車ライド用とレースサポートや見物用の日常使いの2つを用意しています。

 

ゴアテックスのフィルムには、1cm平方あたりに14万以上の小さな穴があり、レインウエアの中へ雨水は侵入させないけど、汗の蒸散した水蒸気は通すから内側の蒸れを防いでくれるというのが売りもので、40年以上も前に開発されたゴアテックスという樹脂製の多孔膜フィルムを表生地と裏生地でサンドイッチして接着した生地でした。この生地で作ったレインウエアは、大雨が降ろうと、雨水の侵入はなく、内側からは蒸散した汗を発散して蒸れを防ぐという、夢のような、レインウエアや高機能の防寒ウエアに、最適な生地で作られているというセールストークでした。アウトドアスポーツの悩みの種の、雨の日を快適に過ごせるウエアということです。

 

当時のゴアテックス製のレインウエアは、上下で3万円から6万円くらいで、むちゃくちゃ高く、トレッキングやバックパッカー用に開発されたマウンテンパーカーをアメリカの通販で手に入れてみると、カッティングは直線的で、四角い袋に袖とフロントジッパーを付けたようなデザイン性もへったくれもないウエアでした。雨漏りの原因になる縫製は最小限に抑えられていました。まさに生地がゴアゴアのウエアでした。ゴアゴアだからゴアテックスなんじゃないのとまで悪口を言われました。

 

日本では雑誌がトレンドセッターとして機能していた時代で、、企業と広告代理店がバーター記事を仕掛けて、記事的なまとめで売り込みたい商品の特集を組んで、新たなブームを作っていました。世の中は右肩上がりで経済的に豊かになって消費へマインドは上に向かって傾いていました。アーバンジャングルとか自然回帰、ラブフォーネイチャーとか言われて、ヘビーデューティーとか、トレッキングばやりで、不整地走行に使うような、ジープとかレンジローバーとかゲレンデバーゲン、パジェロとかランドクルーザーなどの、4輪駆動車とかを街乗りに使ったり、アウトドアウエアを街で着こなすのがオシャレという時代でした。

 

銀座や渋谷や新宿で無骨な4輪駆動車を本当によく見かけましたし、高速4輪駆動車のスバルレオーネの流れを汲むレガシイとか、アウディのクワトロ、ルーフレール付きやキャリヤやスキーケース付きのステーションワゴンや、サーフボードを乗せるような、ピックアップトラックなどもおしゃれな車という扱いでした。そんな車が六本木のハードロックカフェ近くの駐車場に溢れかえっていました。今のSUVほどには車が洗練されていませんが、アウトドア派を気取ることが大ブームみたいな感じでした。

 

ちょうど、シェラデザインの60・40のマウンテンパーカーが流行っていた頃です。その頃の雨具といえば、ゴム引きの生地のレインウエアでした。通気性がないので、保温性はありますが、汗による蒸れがすごくて、雨で濡れたのか、汗で濡れたのかわからないくらいのすごい製品でした。シェラデザインの60・40のマウンテンパーカーには、雨にあうと生地の糸が水を含んで目が詰まって、雨の侵入を防いでくれて、しかも通気性があって蒸れにくいという、都市伝説的なまことしやかな話がありました。当時はネットがないから、ポパイ、ブルータス、ビーパルなどのアウトドア系の雑誌のライターたちがそんなこと書いていましたね。

 

ブルーのマウンテンパーカーを手に入れて、雨傘をさして歩くのが嫌いなので、ニットの帽子をかぶって、フィードをかぶって期、待して雨の中を歩いてみると、首筋や肩のあたりからザザ漏れでした。中にシェットランドセーターを着ていなかったら風邪を引いてしまいそうでした。撥水くらいはすると思っていたので、超期待はずれの性能でした。スキーウエア用のトコとかホルメンコーレの防水スプレーをかけて、カピカピに乾燥させてから、雨の中を歩きましたが、最初は撥水していましたが、しばらくすると浸みてきて、ほとんど効果なしでした。

 

ゴアテックスのウエアは憧れの新製品でした。ゴアテックスのフィルムは、水蒸気を通すサイズの孔が無数にあいたフィルムを、表生地と裏の生地でサンドイッチして、熱処理ラミネートしたものでした。巨大な多国籍企業になっているデュポン社のブランドじゃなかったかな。デュポンは大きな資本力を投入して新素材や薬品などを開発して、ナイロン、プラスチックなど、産業の基礎的な素材を開発して、そのパテントの応用範囲をも研究して、世の中の企業に提供して稼いでいる会社ですが、ケミカル分野は火薬の開発製造、殺虫剤の開発製造でも大きなシェアを持つ会社です。

 

最初に手に入れたシェラデザインのゴアテックスのマウンテンレインパーカーは、膝までの長さがあって、6回目くらいまでの雨は侵入を防いでくれましたが、7回目くらいから首筋あたりのラミネートがダメになったらしく、ダダ漏れの状態になりました。体にフィットさせることより、雨の侵入を警戒して、縫製箇所を減らす裁断も採用されていたし、縫い目を潰すシームシーラーの溶液で手当もしたけど、ダメでしたね。当時のラミネート技術は未熟で、サンドイッチ状態がすぐにダメになり、数ヶ月で、ただのゴアゴアのマウンテンパーカーになりました。

 

その後も、ゴアテックスのレインウエアや、防寒ジャケットを、モンベル、ザノースフェイス、ブルックスブラザースなどのウエアを手に入れましたが、だいたい2年くらいで、よく動かす部分から、ザザ漏れになりました。ゴアテックスのウエアは、生地だけのレインウエアでも、グースダウン入りでも、洗うのが難しいですね。最近では、レーザーによる接着技術も採用されて縫い目がなくなりました。アークテリクスなどのアウトドアウエアや、クロススポーツ用の軽量なサロモンのレインウエアのゴアテックスウエアを愛用しています。アークテリクスの3層のラミネートでも柔らかくなっていますし、サロモンの究極の軽量モデルは表生地の裏側にゴアテックスフィルムをラミネートした、超しなやかで軽量なモデルも登場しています。

 

バイクライドで使いやすいレインウエアは、撥水、防水などの求める機能をよーく考えて、バイクショップやアウトドア洋品店やスポーツショップでチェックしてみてください。ゴアテックス素材でも、バイクライドの発汗を放出することは無理で、汗で蒸れたり、濡れたりします。ラミネート技術も進化しているし、紫外線に弱かったゴアテックスフィルムの耐久性も向上していて、3年や4年くらいはキープできるようになり、ウエアの手入れも、走り終わってすぐにホースで水をかけて洗い流して陰干しすれば、ラミネートやゴアテックスフィルムの防水機能に、ダメージを与えないで済むことが分かりました。

 

雨の中を走ってみて、大汗をかくと、結果はゴアテックスのレインウエアでも中は汗でビショビショになりました。ということは、防水性もかなり高く、多くの小さい穴をコーティング幕に施して通気性も確保した、価格設定の安い、エントラント系の素材のレインウエアでもいい気がしてきました。バイクライドに特化したモデルもいろいろあります。特殊なフィルムをコーティングした、レインウエアもあります。完全な防水性ではありませんが、ウインドブレーカーに撥水とか耐水性を持たせたモデルもあります。透明なビニール的な素材を縫ったモデルもあります。走行時間や軽量性、風の受け方、フィット感で選びます。

 

そのほかにも雨対策はあります。サングラスへの雨粒の付着や吹き付けによる視界不良を防ぐレインキャップ。足が濡れにくく、濡れても冷えにくいシューズカバー。指先の保温性を確保する指付きグローブ、濡れても冷えにくいスーパーファインメリノウールのアンダーやソックス、簡易泥除けなどの装着などの雨対策が考えられます。滅多に雨の中を走ることはないでしょうけど、ブルベやロングライドやロードレースのライドイベント参加などもあるでしょうから、最適な雨対策品選び、固定式のローラー台などの導入をショップのスタッフにご相談ください。ではでは。