クマさんのバイク専科

忌野清志郎さんのバイクのメンテナンスに行ってきます

 

ロックンローラー忌野清志郎さんが無くなって7年ぐらい経過しています。ガンで亡くなった日は長野で合宿をやっていました。NHKのスタッフの方からの朝の電話で知りました。お昼のニュースで報道されて、午後にはバンドマンのひと達からお葬式の棺を運ぶ役をやるように言われました。でも、もう亡くなっているのなら目撃したくないと思いました。清志郎さんの姿を見たら亡くなったことを認めざるを得なくなるからです。青山斎場には行きたくありませんでした。その日は清志郎さんと一緒に走った斑尾高原、国道18号線を清志郎さんに貰ったCDをかけながら、よく隣りの席に清志郎さんが座っていたアベンシスで走り回りました。

 

清志郎さんのマネージャーさんや事務所の社長さんから連絡をいただいてやっと告別式に行く覚悟ができました。亡くなってからも取材のもう仕込みがありましたが、ボクの役割ではないと思いなるべくお断りしたり、清志郎さんのカーボンバイクを作った、フレームビルダー松永一治氏やショップに聞くようにお願いしました。雑誌社や清志郎さんの個人事務所から紹介のあった、「清志郎さんの自転車に対する思い」を語るというテーマだったので、吉田てるみさんのラジオ番組だけ出させてもらいました。

 

土曜日の昼過ぎ、忌野清志郎さんの楽器の管理を担当していたしゃぶちゃんから突然の電話でした。清志郎さんの使っていたギターや衣装や自転車の展示が東京で行われていたそうです。オレンジ1号が展示されていたそうですが、チューブラータイヤがダメになっていたようでかっこ悪いのでなんとかしてほしいのだそうです。確かに、使わなくなって7年近く経過していますから、愛用していたのは乗り心地のいいヴェロフレックスのクリテリウムですから、ラテックスチューブ入りのチューブラータイヤは劣化してダメになっているでしょう。

 

水曜日、ロックンロール研究所に行って清志郎さんの愛用していたバイクを手入れすることになりました。タイヤを交換して、ホコリを払って、ワックスをかけてピカピカにする予定です。清志郎さんはクロモリのケルビム、トレックのプロジェクトワンと乗り継いでのプロジェクトMのオレンジ1号です。カーボンフレームで快適なモデルが欲しいというので、つくばのスポーツバイクつくばマツナガのフレームビルダー松永一治氏が依頼を受けて、1年半がかりで製作して、シマノの鈴鹿のライドイベントで開催されたコンサートでデビューしたものです。

 

実は、盗難事件で有名になったオレンジ1号の他に、もう一台オレンジ号が存在します。それは、キューバのライドで激坂を上った清志郎さんが、もっとくるくる回して上れる反応性のいいバイクがほしなと言ったことから製作が始まったオレンジ2号です。発注を受けてもすぐにできないのがフルオーダーメードの手作りのカーボンフレームです。設計、材料選び、手作りラグの製作、フレームの仮組み、接着、仕上げ、塗装、パーツの組み付けという段階があります。

 

キューバの取材が終わってしばらくして、ちょうど清志郎さんの咽頭ガンが発覚!、それでもきっと復活すると製作の準備を進め、抗がん剤や放射線治療を終えて退院して、みんなで武道館コンサートに行く準備をしている頃にフレームが出来上がりました。フレームのペイントのカラーを清志郎さんに聞きに行くと、色々な色見本を持って行って選んでもらうことになりました。クロレッツのグリーンのメタリックのパッケージを渡されました。「清志郎さん、これじゃオレンジ号じゃなくてグリーン号でしょ!?」、と聞くと、「オレンジは熟して黄色くなる前は緑色でしょ、だからグリーンにしたいんだ」というのです。でも、カーボンフレームのポリウレタン塗料でメタリックのグリーンってあったかな〜。

 

なるべく近いペイントに仕上げますとだけ言ってその日は帰って、大阪の塗装屋さんに問い合わせしました。オレンジ1号の時も、清志郎さんがお気に入りのイギリスのアンプメーカーのオレンジのアンプのカバーを送りつけて、その色に合わせて塗ってもらった経緯がありました。しかも、イギリスのアンプメーカーの公認のロゴ入りのバイクなのです。オレンジ2号もアンプメーカーの公認ロゴマーク入りになりました。メタリックグリーンも上村塗装の職人さんの努力のおかげでクロレッツのパッケージのカラーにフレームもフロントフォークも、チネリのRAMも同色に仕上がりました。

 

カンパニョーロのパーツで組み上げて、ロックンロール研究所へ松永氏とボクで届けました。髪の毛が少し伸びはじめた清志郎さんに、快気祝いとして剛性の高いカーボン&クロモリラグ接着のオレンジ2号をプレゼントしました。その後オレンジ2号に乗ったインプレッションが清志郎さんからメールでとどきました。木リムホイール前後の組み合せは後輪が柔らかすぎる。後輪ボーラの50mmで前輪木リムホイールの組み合せが快適で、フレームの乗り味としてはよく進むバイクだそうです。東京の展示会を終えて、これから始まる大阪の展示会ではオレンジ1号と、オレンジ2号の2台が展示されるそうです。詳しくは忌野清志郎さんの硬式ホームページへアクセスください。ではでは。