クマさんのバイク専科

トライアスロンは女子と男子で状況が大きく違う!

 

2020年の東京オリンピックのトライアスロンへ向けて、後2年という、後れ馳せながら、日本のトライアスロン団体は、オースとラリア人ヘッドコーチを採用して、ナショナルチーム体制で選手強化を始めました。オリンピックや毎年開催の世界選手権、10レース以上開催されるワールドシリーズ、アジア選手権の51、5kmのトライアスロンで、日本の女子選手はトップ10入りして上位獲得の可能性やオリンピック参加枠の獲得に迫っていますが、世界チャンピオンはまだ獲得していません。男子選手は海外での活動を引退した田山選手を除けば、30位前後へはいるアスリートが数人います。

 

この51、5kmのトライアスロンの日本の女子選手の上位入賞の可能性ありと、男子が30位前後と言う状況は、そろそろオリンピック種目化されるのではとささやかれ始めた90年代から、2000年のシドニーオリンピックの正式種目に決定して、バイクパートの40kmがそれまでのドラフティング走行禁止ルールだと違反者だらけになってレースが成立しなくなると言うので、急にドラフティング許可レースに変わり、日本でも選手強化が始まったころから日本選手のポジションは、女子はトップテン入り、男子30位前後の状況が続いています。

 

ドラフティング許可のレースになって、スイム出身の選手の優位性が注目されて、スイムのセカンドラインにいた選手のトライアスロンへの転向が目立ちました。ランが切り札だとランニング出身選手の転向もありました。確かに競泳出身の選手はスイムフィニッシュでトップグループに入りました。スイムの得意な選手と一緒にバイクスタートして、集団走行では後ろに付いて走り、ドラフティング走行許可のメリットを生かしてパワーセーブして、バイクフィニッシュまでは一緒に走っているように見えました。時には逃げ集団のトップグループの先頭を日本選手が引くことで注目もされます。

 

ドラフティング許可レースの真実を身を持って体験していないテレビ解説者も、強化コーチもトライアスロン関係者も、時速40kmから45kmで走る空気抵抗を受けるのと受けないのでは疲れが違うことを、理屈では分かっているはずです。レースのバイクセクションでの見た目は、日本選手も一緒に走っていてバイクをフィニッシュするので、走り終わった選手の実情はどうなっているかを理解しにくいのです。日本選手がトップグループの選手と比較して、どのくらいの走力なのか、40kmの距離の少人数の集団走行で、ドラフティング走行なので空気抵抗を分散できるとは言え、どのくらい脚がダメージを受けてしまうものなのかを理解できていませんでした。それが、さら脚のランニングタイムと、バイクの40kmでダメージを受けた後の10kmのランニングタイムとの差に表れます。

 

ランパートで、さら脚の10kmの持ちタイムから、レースタイムでは大きな低下が見られるので、ランニングの強化に力を注ぐコーチングが行われる傾向が生まれました。特に競泳で好成績を出した経験のある選手ほど、水の中でのトレーニング時間が長く、筋力の発達に影響があります。1Gの中で体を支える体幹の筋肉を刺激する時間が短いからです。競泳から転向、または競泳経験者のトライスリートでランニングに対応できる選手は30人に1人と言われています。学生や実業団の1万mの陸上選手に近いタイムに到達するには、ウオーキングから始めたり、クロスカントリーウオーキング、ジョギング、ランへ移行して行く、時間のかかるステップが必要な選手もいます。

 

体幹の筋肉の発達、脚の関節や靱帯や筋肉の強化がランタイムの向上や故障を防ぐために、2年3年と地道なトレーニングが必要です。ステップを踏まないと、心肺機能や耐乳酸性の高いスイマーは、ランで発生するダメージに耐えて数回はレースでトップパフォーマンスで走れても、脚がそんな刺激を繰り返すことに慣れていないので、ランでの故障が発生しやすい傾向があります。日の丸を付けたトライアスロンジャケットの競泳出身の選手が魚籠セクションで前を走る姿を見て、積極的に前に出てレースを作っていると評価するひともいました。

 

見た目は同時にバイクをフィニッシュするので、他の選手と差がないと思いがちです。ところがドラフティング許可のバイクパートは、表面に見えにくいパワーの削り合いです。バイクフィニッシュが一緒と言う見た目は、いくつもの落とし穴を潜ませています。スイムを上位でフィニッシュ、バイクの走力も高く集団走行の展開によって脚を温存できた時は、ランも本来の持ちタイムに近く走れる、田山選手のワールドカップでの上位入賞をきっかけに、日本選手はブレークスルーするのではと思いましたが、残念ながら続く男子選手は登場しませんでした。2020年の8月、東京オリンピックのトラアスロンはお台場のど平坦コースで実施されます。バイクコースは曲がり角はけっこうあるけど、集団走行しやすいイージーコース。バイクフィニッシュまで一緒の選手ではなく、バイクをゆとりを持って走れる走力を付けて、さら脚に近い状態で走れる選手を実現できるかな。

 

2020年でのメダルを狙っての、トライアスロンのナショナルチームへの外国人コーチの受け入れが、オリンピック本番の2年半前と言うことは、女子はトップに近い素材が数人だけど、男子は30位台の素材を育成することになります。ヘッドコーチが、選手や所属チームのコーチや監督との信頼関係を結び、トレーニングを開始しても2020年に間に合うのかな。スケートは8年以上かけてナショナルチームの制度を継続していて世界選やオリンピックを経験してピョンチャンを迎えました。トライアスロンはかなり厳しい状況ですね、オースとラリアのヘッドコーチ、この時点での強化をよく引き受けたな〜と思います。それともアンダーテーブルでのコントラクトは6年か8年計画なのかな。

 

ターゲットは、51、5kmは女子の2020年のメダル、男子は入賞狙いってことなのかな。競技実施のフォーマットが違うショートのトライアスロンも活躍の可能性があります。トライスロン選手の経済状況はプロチーム所属や実業団などから、ナショナルチームにピックアップされてトレーニングに専念することになります。オリンピック開催国なので参加枠1人は確保されています。

 

トライスロンは、1国3人が最大枠の個人競技なので、世界選、大陸別選手権、ワールドシリーズ、ITU 指定のローカル大会などの転戦で、ITU ポイントを個人が稼いで、国別ランキング枠や大陸別選手権の優勝枠で、国に与えられる参加枠を確保する必要があります。日本の出場枠が確保されて、日本の競技団体の選考基準にそって代表の個人名が決まるわけです。2020年のオリンピックでは、51、5kmのトライアスロンだけでなく。オーストラリアなどで盛んに開催されている、スイム、バイク、ランのフォーマットを入れ替えて、短距離で競うスプリントディスタンスのトライアスロンも企画されているようです。バイクセクションでガリガリ削られることなく、ランへトランジットして、女子はメダル争いをしてくれるでしょうし、男子も30位台からのスタートですが、メダル争いまで駆け上がれるのか、日本の代表選手は、2020年のお台場で、どんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょう。ではでは。