クマさんのバイク専科

サドルオデッセイの末のセライタリア・ターボマチック2

 

高校2年生のとき、スポーツバイクに乗って最初に苦しんだのがブルックスのプロフェショナルという革サドルによるお尻の痛さ。サドルの革がお尻に馴染んで来て、そのうちに慣れる。筋力が発達して踏めるようになれば痛くなくなる。というアドバイスばかりで、革サドルをならすためにレザーオイルを塗ったり、すりこぎでこすったりしましたが、1ヶ月経っても2ヶ月経ってもお尻が痛くて、これを解消する具体的な方法を誰も教えてくれませんでした。

 

プラスチックベースサドルのユニカのサドルの時代に入っても、パッド入りで革張りになっても、長く走るとお尻が痛くなりました。セライタリアのターボにして、さらにジェル入りのバイオターボにして10年くらい乗っていました。サンマルコのロールス、リーガル、エラとか中央の下がりが少なく、座骨の触れる部分の断面が円い系のサドルも使いましたが、お尻に馴染みませんでした。

 

フィジークのアリオネの初期モデルを気に入りました。パッドは適度な厚みでソファーのように柔らかく、サドルのサイドがカットされた薄いデザインのプラスチックベースに、カーボンチップなどの補強が入っていないので、中央が下がってへたりやすいモデルでしたが、座り心地は今までのレーシングサドルに無い快適なものでした。パッドの厚いトライアスロンのスチール中空レールモデルも、カーボンレールモデルも快適でした。

 

ところが選手がアリオネを使うと、サドルの中央が下がって変形してしまうヘタリの早さが問題になり、プラスチックベースにカーボンチップを混入して強化した、トップ選手達に供給した補強モデルがスタンダードになり、確かにヘタリにくくなりましたが、サドルの形状には変わりがないのに、プラスチックベースに座骨の部分が底突きする傾向になりました。その後のアリオネはモデルも増えて、CXシリーズなどカーボン繊維補強ベースのモデルとなり、ベースはより強化さされました。

 

さらにサイドカットされて薄型デザインになったRシリーズは、サドルの変形を抑えるために、よりカーボンチップ補強を行うようになって。このころになって痛みの発生が我慢できなくなって、最新型のアリオネ系のサドルを外しました。サドル選びの試行錯誤の始まりの段階で、今まで使って快適だったサドルの中から、旧型のアリオネやアリオネトライアスロンに戻ったこともあります。2日続けて走っても快適なサドルを探して2年目に入りました。

 

そのころ、倉庫に行って20年近く放ったらかしになっていたセライタリアのターボマチック2を取り出したときは、サドルを交換してはお尻が痛くなり、サドルオデッセイも2年目に入って、ワラをもつかむ心境のころでした。その間に、スーパーの買い物カゴ3つに山盛りいっぱいになるほどのサドルを試しました。このモデルならいいだろうと選んでシートポストへ取り付けて、土曜日と日曜日のライドで、100km、200km、300kmと乗って、高さや前後位置や取り付け角度を変えて、1日走っても痛くないけど2日目はやや痛いかなというサドルと、ダメだったサドルでいっぱいになっています。その一部はスポーツバイクつくばマツナガの貸し出し用のサドルになっています。

 

乗ってダメとは実際にライドを走ってみて、お尻や尿道などが痛くなるサドルのことです。30個、40個と色々なサドルを試してみて、座ってすぐに違和感の発生する、いわゆる最初からサドルのお尻が乗る面や、座骨のエッジの触れる部分が痛くなったり、円みやパッドの厚さが合わないものもあるし、20kmそこそこ走ると痛くなるモデルもありました。100kmまで痛くならずに走れたモデルもあります。でも、ボクのサドルを選ぶ基準は1日目のライドでは痛くなくなくても、2日目に走り出すとお尻が痛くてはダメだし、2日続けて走っても100kmを越えても痛くならないモデルを基準に選びました。

 

本当にお尻が痛くなるサドルは、20kmも走らないうちに、座骨の先端がサドルのベースに底突きして、サドルと骨にはさまれた部分の血行が悪くなって、皮膚の下の細胞が炎症を起こしたり、皮膚の内側の細胞がダメージを受けて壊死して床ずれ的に痛くなって、サドルからお尻を浮かして走りたくなることがあります。ジャージの背中のポケットに、ましなサドルとヤグラをいじれる工具を入れて走り、サドルの取り付け角度や前後位置を移動しても痛みが改善されない場合は、サドルを交換して走っていました。

 

ストックしておいたターボマチック2は、1つは革がぼろぼろになるまで使い込まれていました。もう1つはまだほとんど使っていない状態でした。こんな古いサドルで大丈夫だろうかとも思いましたが、キヨ・ミヤザワのスチールフレームの時代に使っていたサドルを復活させました。パッドが厚く、座骨の当たる部分のプラスチックベースのヘコミも、ターボと似ている形状ですが微妙に乗り心地が違います。それ以前に調子がいいと思って使っていたのはフィジークのアリオネスタンダードの初期モデルでした。パッドの厚いアリオネトライアスロンや、アリオネトライアスロンのカーボンレールも使っていました。お尻が痛くなり始めたのは減量を始めてからでした。

 

健康上の理由と上り坂を走るのが辛いので、週末に100kmを2回走って、食事内容を見直して、体重を25kg、5年間かけて減らしました。体脂肪も減りましたが筋肉量も減りました。この間にだんだんお尻が痛くなって、後期のアリオネはパッドが柔らかく、プラスチックベースがカーボンチップ補強されたサドルでは、座骨の部分の圧力でプラスチックベースに底突きして、長い時間を快適に走れなくなりました。その後2年間近く、このサドルが合うのではと、色々なサドルを買っては試しての繰り返しになりました。

 

ターボボマチック2は、お尻が乗る部分を横に切ってみると、座骨の当たる部分の断面は緩いアールを描いています。パッドが厚く、そのパッドはアリオネのような柔らかいパッドではありません。肝心なのはプラスチックベースで、一切カーボンチップなどの補強が入っていません。サドルのサイドが無い、薄いサドルのような構造や素材とは違います。補強の入っていないプラスチックベースが変形するのがいいと思い、ターボマチック2と違う、お尻や座骨が触れる場所がより円い断面の、サンマルコのリーガルやロールスを試してみましたが、しなやかにベースも変形していましたが、合わないみたいで座骨部分に痛みが発生しました。

 

溝付き、穴あき、ジェル入りの構造も快適さの追求には効果があるのでしょうが。パッドの厚さとプラスチックベースのしなやかさと、座骨やお尻が触れる部分の断面形状が合っていることが、快適な乗り心地を大きく左右するようです。お尻を乗せる部分が比較的フラットな、ターボマチック2を裏返しにして見ると、補強無しのプラスチックベースは、座骨の当たる部分にヘコミを作ってパッドの厚さが確保されて、座骨の触れる部分のプラスチックベースとの底突きを防ぎ、圧力が分散さて痛みが発生しにくい構造になっています。

 

サドルは、何でもお尻が痛くならないという、羨ましいライダーの話も聞きますが、お尻が痛くて悩んでいるライダーもけっこういます。とにかくサドル選びは見た目じゃなくて、100km以上乗って、翌日も走ってみて、快適さを確認することが大事です。最新モデルとか、軽いとか、デザインがカッコいいとかで選ぶのではなく、本当にフィットするサドルを選びましょう。サドルの試乗には、サドルの前後位置、取り付け角度の設定、サドルの高さの設定も重要です。ではでは。