クマさんのバイク専科

ロードレースはコースをこなすことから競争だ!

 

オリンピックで実施される51、5kmのトライアスロン、40kmのバイクコース作りは周回コースで、数周回するとほぼ40kmになる設定で作られています。世界選やオリンピックのワンデイのロードレースのような、平地、上り、下りのパーセンテージが一応設定されているのと違い、主催国のコースコーディネーターに任されています。トライアスロンは湖や海などの泳げる場所があって、バイクで集団走行ができる周回コースが必要で、さらにランニングのコースも必要です。世界選もワールドシリーズも、都市型の3つの種目を観戦しやすいコース作りが行われています。ITUの公認するトライアスロンコースは、まずバイクの集団走行で転倒事故が起きない安全なコース設定が基本的に採用されています。

 

走行距離がほぼ40kmになるように限られていますから、バイクが周回コースの都市型トライアスロンでは、直角コーナーや、折り返しのへアピンコーナーやアップダウンもありますが、それでも道幅が比較的広いので、集団走行のコースでも、ロードレースやサーキットレースと比較すると、イージーなコース設定と言えます。ロードレースの世界選もオリンピックも、クラシックのようなワンデイレースも、かなりテクニカルでチャレンジングなコース設定になっています。アップダウンはもちろん、高速コーナーあり、集団で50km近い高速域から、いきなり1列棒状になって、30km近くまでスピードダウンして、コーナーに入らないとコースアウトかフェンスへ激突して転倒になりかねない、難しい設定が普通に採用されています。

 

今まで世界選の1周10kmくらいのロードコースをチェックして、一番凄かったのはシュツットガルトのコースでした。街中を巡るテクニカルな平坦コースがあったと思えば、標高差200mある丘へ上る緩い傾斜の高速上りがまってます。ここで相手にダメージを与えようと、道幅20mのアスファルト道路を一気に駆け上がります。丘の上からは50cm角の四角いコンクリートタイルが6車線の道路一面に張りつめられたデコボコな道の真ん中に、複線の路面電車の線路が埋め込まれていました。ここを丘の上から時速70km近くで駆け下りると、正面には真っ白な壁の建物があって、鋭角に右へ曲がり、街中のテクニカルコースへ戻ります。

 

このコースでトップを狙うチームは、フレーム、タイヤ、ホイールギヤ比など使用機材を検討するために、選手やメカニックが前年に下見に来ていました。タイヤは25mm採用を検討していたし、空気圧の設定のチェックを何度もやって、ショック吸収性やグリップ力やリム打ちパンクの防止を検討していました。四角いコンクリートタイルを敷き詰めた路面は、クルマで走っても3cmから4cmのくらいの落差がある継ぎ目の振動がどんどんと伝わって来ます、歩いてチェックするとタイルの角はクルマのタイヤですり減って円くなっていましたが、どこもかしこも段差があってデコボコです。ヨーロッパのロードレースはこういうとこをわざと選ぶんですね。

 

23mmのタイヤで、8気圧設定のホイールのロードバイクで下ってみると、前後輪がピョンピョン跳ねました。これは200kmを超えるレース後半の疲れの原因になりそうです。この下り坂は高速で走るのが嫌になる区間でしょう。でも、何十キロも続く、フランスやベルギーの古い石畳のコースよりはましか。レースで想定されるスピードを考えて、踏めば時速70kmは出るので、速度を上げて走ってみると、時速50kmでも、もの凄い振動で、時速70kmともなると、ブレーキングしてもタイヤの接地力が不足して、グリップ力が安定しないので、下り坂の先にある建物の壁が見えてもスピードダウンするのが難しい状況でした。

 

でも、この下り区間でスピードを早めに緩めてしまうと、集団から遅れて、ヘアピンカーブでの立ち上がり加速で置いて行かれます。これは下り坂なのに休めるセクションではなく、下り坂で踏んでスピードを維持しないといけないし、毎周回難しいコーナーリングになります。集団をキープしたければ、街中の平坦セクションが休める可能性がありますが、コーナーの立ち上がり加速もあるので、ほぼ、どのセクションでも休める場所などない、踏める力とテクニックが要求されるコースレイアウトです。

 

各チームの思惑で上りセクションや、下りセクションで強引なアタックがあった時は、けっこう修羅場になってエースとアシストが分断されて、集団の力を発揮できないチームは、ばらばらになる可能性があります。でも、パンクや転倒のリスクを背負って逃げる方も、神経を使って走ることになるでしょう。パンクした時のホイールの供給のタイミングも難しく、集団の速度が遅くなる区間がほとんどなく、パンクしたり落車したら集団復帰の難しいコースです。

 

最初から3周目くらいまでは時速70kmで大集団のままここを走ることになります。こういう危険なテクニカルコースでは、最初の周回から揺さぶりがあり、スピードが上がって、まずテクニックやスピードの無い選手を振るいにかけて、安全に走れる態勢作りがあります。まず恐いのは、集団走行で逃げ場所が無くて、路面電車の線路に車輪を落とし込まないかです。危険なライダーが集団から振るい落とされた4周目くらいから、猛スピードが落ち着くだろうと思っても、そこは世界選ですから、巡航速度が高くキープされて縦に集団が伸びて、体力の削り合いになりますが、走りやすくなります。

 

ダウンヒルは時速70kmで、前の選手との間隔を5mくらいにキープして、白い壁の家の手前ぎりぎりで時速30kmくらいまで落として、前から離れないように集中して走らないと、街中の平坦で集団へ追い付くのに脚を消耗して、これを何度も繰り返すと集団から千切れる原因になります。1周3kmとか5kmくらいの都市部で開催されるサーキットレースは、高速レースが好きなアメリカで発展したロードレースの形態です。観客にレース展開を見せるレースを意識してコースレイアウトが設計されています。高速コーナー、直角コーナー、高速が出る直線が含まれたコースで、観客が何度も選手をみられるのが魅力です。

 

kmくらいの街中の平坦コースを周回するクリテリウムに似ていますが、サーキットレースの方がコースは長く、コーナーリングや上り坂などの要素がプラスされていますが、いずれも大型のパワー型のスピードやスプリント力のある選手向きのレースです。51、5kmのエリートクラスへ参戦したり、参戦を狙っているトライアスロンの選手も、チームや個人のタイムトライアルだけでなく、サーキットレースやクリテリウムに参加すべきです。

 

トライアスロンのワールドシリーズの集団の速度に付いて行けるからいいではなく。ワールドシリーズの平均速度は時速40kmから45km、クリテリウムは平均速度が時速40kmから45kmで同じようですが、ポイントのかかった周回は時速50kmからスプリント区間では60km以上になって、そこの速度域での走りに慣れてしまうことです。集団走行のライディングテクニックと、スピードの上げ下げへの対応や、レーシングスピードを磨いて、トライアスロンの40kmのドラフティングレースに余裕を持って走るために、通常のバイクのトレーニングに加えて、ロードレースやクリテリウムやサーキットレースに参戦したほうがいいと思います。