クマさんのバイク専科

デュラエースのSPD-SLがチタンシャフトを使えないわけ?

シマノのSPD-SLビンディングペダルのデュラエース、アルテグラ、105、550のシリーズは、キャッチ&リリース、踏み込む足の安定感、足をセットした後のフローティングの足の動きのスムーズさ、それぞれのグレードでボディの樹脂化を実現しました。グレードによってベアリング形式の違い、ペダルシャフトの素材はスチール製で、中空構造やムク構造んなどの違いもありますが、どのモデルも確実に球当たり調整できて、もっとも信頼できるペダルです。

 

最高峰のシマノのデュラエースのSPD-SLロードペダルは、足を安定させる究極のロープロファイル設計、ロードクリアランスを実現するために、先端に少数のボールベアリング、中間にニードルベアリング、力のかかる根元には数の多いボールベアリングという特殊な構成を採用、しかも、根元側のカップやロックリングできっちりと球当たり調整できる構造です。キャッチメカニズムのバネレートはアルテグラまでがレーシング仕様で最低の設定でも強めで、105と550は弱めの設定で、脚のひねりの力が弱いライダーでも確実にキャッチ&リリースできます。

 

確実に球当たり調整ができるのは、ガタの発生の解消を確実にできて、グリスアップなどのメンテナンスをできて、長く使える安心感につながります。ルックやタイムの、シールドベアリングを採用したビンディングペダルは、使っていれば例外なくペダルシャフトとシールドベアリング、シールドベアリングとペダルボディの圧入部分やベアリングなどにガタが発生するし、メーカーや輸入元に、ガタの発生は想定の範囲内と言われています。でも、比較的短時間の使用でのガタの発生は気になります。

 

その、気になるガタの解消方法は、輸入元に返して解消できたり、スペーサーによる対応で可能と言うのですが、輸入元による修理から返ってきて使うと、暫くしてまたガタが発生するので、ルックもタイムも回転部のガタ解消の決め手がないのです。ガタが気にならないライダーはいいですが、安心して長く使うには、球当たり調整やグリスアップ、ボールベアリングの交換を確実にできる、シマノのSPD-SLシリーズをお薦めします。

 

デュラエースのペダルシャフトは、特殊なテーパードのスチール製です。スチール製だからムクのペダルシャフトなら当然重くなります。現行モデルは軽量化のために奥まで中空加工され、クランクにねじ込む部分は8mmアーレンキーの穴が開けられています。しかもテーパー部分の外側も強度低下しない範囲で削り込まれています。

 

そのテーパードのペダルシャフトをチタン合金化できないのか、よ〜く考えてみました。アメリカや台湾のサードパーティーの作ったデュラエースのSPD-SL用のチタン合金製のぺダルシャフトを組み込んで試してみました。メーカーによってチタン合金の素材の硬さがまったく違いました。スチール製のペダルシャフトは、ほぼテーパー状のペダルシャフトの形に鍛造されてから、表面硬化の熱処理が施されて、ボールベアリングが当たるボールレース部分、中空化する部分、8mmアーレンキーが差し込まれる部分など、必要な形状に精密に削り込まれています。

 

サードパーティー製のチタン合金製のペダルシャフトは、ボールベアリングの当たる場所はボールベアリングが収まる形状に削り込まれていますが、実際にボールベアリングが当たる部分は強化されているわけではないので、ボールベアリングやニードルベリングの回転により、少しずつペダルシャフトのベアリングとの接点が削り取られて変形していき、2000kmから5000kmくらいで回転部にガタが発生しました。

 

その、チタン合金製のシャフトの耐久力は踏んでいて折れるとか、曲がるような感じはありませんでした。たわみに関してはペダリングしていて体感できませんでした。スピードプレイ、ルック、タイムなどで採用されているので、素材トシールドベアリングさえ選べば、チタン合金製でも使えそうです。チタン合金製ペダルシャフトを使用したペダルを分解してみると、台湾製は2000kmくらいで変形が激しくグリスは削り取られた金属が混ざって真っ黒になっていて、再度使う気になれませんでした。アメリカ製の航空機用のチタンボルトを製造しているメーカーの製品は、ボールレースは5000kmで少し変形していました。

 

つまり、現行のボールベアリングとニードルベリングの形式では、いずれのチタン合金製のペダルシャフトでも、ベアリングと接触する部分を消耗させて、使っていれば回転部にガタが発生してしまいます。それを避けるには、ボールレースがシャフト側とペダルボディ側に備わった、シールドベアリングを採用して、チタン合金製のシャフトとカーボン補強の樹脂製ペダルボディに圧入する形式にすることが必要です。ということはルックやタイムのペダルで発生する回転部分のガタや球当たり調整が課題になるでしょう。

 

ロープロファイル設計を実現するためには、スピードプレイ的な小径のシールドベアリングを採用することになるでしょう。だけど、そうなると球当たり調整を確実にできるのか?。そこはシマノにこだわってほしいな。チタンシャフトのボールベアリングが接触する部分に、スチール製のボールレースを圧入する構造も考えられますが、圧入する部分を削ればペダルシャフトの強度低下が心配です。というわけで、シマノのデュラエースのSPD—SLは、現在のベアリング形式では、チタン合金製のペダルシャフトを採用することは難しそうです。でもシマノのことだから、ビンディングペダルの構造を変えて究極のモデルを開発してくれるかも。ではでは。