クマさんのバイク専科

誰が走行中に腰を押さえてくれるんだ!?

トライアスリートをアドバイスしているという、トレーナーの開催している講習会に参加しました。ペダリングの話になって、固定式のローラー台にセットされたバイクが登場して、モデルのライダーがまたがってペダリングを開始しました。ウオーミングアップが終わって、負荷を重くしていきました。ケイデンスは95回転から100回転になりました。発生しているワット数は200ワットを超え始めました。かなり重いギヤ比で踏み込んでペダリングしている感じで、踏み込むたびに腰がサドルからポコポコ浮き上がって上下に動き始めています。すると、トレーナーが横に移動して腰を押さえて動かないようにしました。

 

「ほらパワーが増したでしょ」と解説しました。確かにね〜!、サイクルコンピュータを見ると50ワット以上パワーアップしています。受講者一同、「ほーっ!」て感心しています。でも、パワーアップはそう簡単なものかな〜?。モデルのライダーが脚を踏み込むたびに腰が浮き上がるのを押さえると、確かに押さえない時よりパワーアップしています。腰を押さえるのを止めると、途端に50ワット以上パワーダウンします。腰をサドルに固定すること、踏み込む脚の反力に負けて腰がサドルから浮き上がるのをトレーナーが手で押さえることで、確かに腰を固定する効果はわかりました。トレーナーは「腰を固定すればパワーアップします」と解説しました。確かに腰を手で押さえたペダリングの現象を見ればその通りです。

 

だけど、走行中に誰かが腰を押さえてくれるのでしょうか?。確かに腰を固定できればパワーは逃げなくなって、強く脚を踏み込めることは現実です。でも、実際にフィールドを走る場合、ずっと付き添って腰を押さえてくれる人もいないことも現実です。トレーナーは走行中に誰かに腰を押さえてもらえるとでも思っているのでしょうか。そんなことは無いと思うけど、「腰を固定しなさい、するとパワーアップできます」とアドバイスしています。腰が脚を踏み込むたびにぴょこぴょこ動いてしまうペダリングをしていれば、パワーは逃げてしまいます。では、どうすれば走りながら腰をサドルに固定できて、パワーを逃さないペダリングができるのか、そこが問題です。走り込めばそれができるようになるのか。ペダリングに慣れてしまえばできるようになるのか。一体どうすれば固定できるようになるのかの具体的な対策が、トレーナーのアドバイスからは見えてきませんでした。

 

最新のモーションキャプチャーでライダー全体や、腰や脚の部分的な動作解析をしても、腰の固定力を増して、どうした時にパワーが増すか、骨格や体の動きを解析しても、腰をサドルへ固定してパワーを引き出せるフォームが見つかります。筋電図も測定して、どの部分の筋肉を使っているかも同時に解析するとよりはっきりします。圧力センサーをサドルの表面へ埋め込んで、ライダーが色々姿勢や骨盤の傾き、腰の前後位置を最適化したり、サドルの前後位置、高さ、サドルの上の面の角度を変えて、発生するパワーや、サドルのどこに圧力がかかるか、その分布の変化を測定すれば、腰の固定力を高めるフォームを見つけることができます。

 

骨格の確認のために、移動式のレントゲン動画システムなどで、骨盤の傾斜なども確認すると、骨盤の傾きをどう筋肉でコントロールするかの、どの筋肉をどう意識すればいいのかも認識することができます。というような方法を駆使して、スポーツドクター、研究者、レントゲン技師、圧力センサー会社と連携して、スポーツ医科学会にサドルに関しての論文を発表したことがあります。今持っている筋力や心肺機能で、パワーを有効に引き出すフォームを実現するのに骨盤の角度は重要で、単純に骨盤の角度だけでなく、腰の固定力や、ペダリングに動員できる筋肉の範囲にも関係して、疲労の具合も、発揮できるパワーの大きさも変わります。

 

そのパワーを発揮できる腰の固定やフォームを維持するには、体幹の筋肉や心肺機能や耐乳酸性の強化も必要で、アドバイスを受けて骨盤の角度を意識するだけではパワフルなペダリングを維持できません。そして、腰の固定を意識するためのメソッドに取り組まないと実現できません。走行中には、だーれも腰を押さえてはくれませんよ。パワーを引き出せるフォーム作りを実現させるために意識することや、メソッドやトレーニング方法は、ポジションの最適化を経て行わないと効果的ではありません。複雑に関連しているので、1つ1つ、別の機会に紹介したいと思います。ではでは。