クマさんのバイク専科

日本の良さって分かんねーだろうな〜

10年くらい前、お世話になったイタリアからのお客さんに日本らしいところへ連れて行ってくれと注文されて、どうしようと思いました。自転車パーツや自転車の卸屋さんで、北イタリアのレース会場で出会って、イタリアにチームを連れて行ってレース活動をしていることに感動してくれて、イタリアのスポンサーや、レースの主催者に紹介してくれた人です。まだ数週間あったので色々考えたり、日本らしいところへ色々問い合わせしました。

 

背景もわからないし、日本らしいところのニュアンスが伝わってこない。どういうつもりだか分からないので、日本に着いたらそこは全部日本だよと答えておきました。仕事柄、日本のサイクルショップを、関東や関西で20軒から30軒くらい見学て市場調査したいというのが、今回の目的のようです。無茶なスケジュールになるので関東の5軒くらいに絞り込みました。関西の5軒は来年にしたらと伝えました。

 

日本らしいこととは、多分、居合抜きを日本で修行したことがあると言っていたから、古い日本のことを見たいのだなとは思いました。人気の京都へ連れて行けばいいのか。東京の近くだと小田原城とか鎌倉の八幡宮とか、長谷の大仏とか、コレクターだから古美術商でも紹介しようかな。実家に連れて行って、小江戸川越の喜多院でも見学して、お茶のセレモニーでも体験させればいいのかな。それなら師範の看板をぶら下げていた母親の人脈を使えば、いつでも対応できそうです。

 

嫁さんかガールフレンドを連れてくるなら、貸衣装屋さんも知っているので、お茶のセレモニーの時に、着物を着るアトラクションも可能です。茶室という、相手との間合いを詰めて親しくなるための、わざと間口の狭い和室を体験したら、そこを日本の住居かと勘違いしないかな。狭い畳の心地よさ、座布団に座って正座とか耐えられるのかな。無理だろうな〜。お茶の味にも驚くだろうし、小さな茶菓子の美味しさ、合理的な手の運び、茶室の作り、庭、花や花瓶、掛け軸のおもてなしなんてわかるのかな。「ワビサビ」を理解できるのかな。

 

古い日本のイメージは歌舞伎かな、人形浄瑠璃とか能でも連れて行けばいいのかな。日本での滞在時間と自由になる時間を聞いて、連れて行けそうな範囲を考えて、公演のスケジュールをチェックして、チケットを手配しました。だけど、改めて日本らしさってなんだろう。ちょっとは驚かせてやろうという思いもあるので、親父の人脈を使って、能登の刀鍛冶のところにでも連れて行っちゃおうか。日本の刀に対して異常に興味を持っていたから、打ち上がった新刀でも、こしらえを作って、後でプレゼントしたら喜ぶかもね。

 

きっと、日本のイメージは江戸時代なんじゃないかな。まさかとは思うけど、忍者がいたり、空手家や柔道家や剣道家が道を歩いているとか思っていないだろうな。幕末のように浪人とか侍とかちょんまげ付けて歩いていると勘違いしてないだろうな。作家の三島由紀夫以来、日本人は、もうだいぶ前から責任をとって切腹しないよ。書類を改ざんしたり、記憶や、記録もございません的な、無責任なお役人ならいっぱいいるけどね。

 

日本での滞在中は赤坂のオークラへ泊まるらしいので、水着とゴーグルとスイムキャップを持ってくれば、毎日泳げるよと伝えておきました。初日は赤坂の叙々苑に連れて行って焼肉パーティーですね。ベジタリアンじゃなかったはずだから。韓国料理だけど、店内の作りが韓国宮廷風でオリエンタルちっくだし、真っ白な前掛をけつけて、コンロに火が入って、美味しいお肉がいろいろ部位別や、違う味付けで出て、サンチュでご飯とキムチとお肉をくるんでほうばれば美味しいでしょ。

 

骨付きカルビはくるくる巻かれて出てくるところから面白く、焼きあがればお姉さんにハサミで切り分けてもらえるし、楽しめるんじゃないかな。金属製のお箸とかあるし、スプーンもあるし、カルビクッパや、ジュージューしながら出てくる石焼ユッケビビンバもエンターテインメント性があっていい感じ。日本食じゃないなんて、わかりゃしないでしょ。美味しくて楽しければいいんじゃない。

 

2日目の夕食は日本らしさということで、築地のすし岩へ連れて行けば、生魚が苦手だったとしても、板さんが魚介類を適当に蒸したり焼いたり、煮込んだりで対応してくれるでしょう。3日目は東中野の讃岐うどんの四国屋さんへ連れて行こう。モツ煮込み、漬物、むきエビの天ぷら、じゃこ天、おいなりさん、肉刻みうどん、ぶっかけうどんを食べさせたいな。うどんのカルボナーラも驚くだろうな。生卵を食べる習慣がないからな。

 

4日目は荻窪の居酒屋さんの案山子にしようかな。焼きおにぎり、ゴーヤチャンプル、豆腐もやし炒め、きゅうりの古漬け、ジャガ肉炒め、ニラスープっていうラインナップかな。お酒はビールや梅酒でいいか。5日目は赤坂のイタリアンのマルーモで夕食かな。前菜が6種類くらいあって、パスタ類も充実しているし、パリパリの薄い生地のピザも美味しいお店です。日本のイタリアンはレベル高いですからね。

 

6日目はお魚と焼き鳥が美味しい居酒屋さんかな。浜松町か中野のお店がいいかな。オークラのレストランやラウンジもいいけど、そこは一般的な日本ではないからな。銀座のマハラジャかナイルレストランという、インドカレー屋さんにも連れて行きたいな。最終日も白金のイタリアンで、天井にパバロティのサインがある部屋を予約して、空輸されたポルチーニだけのソテー、フレッシュトマトのスパゲティ、ジャガイモのニョッキ、クワトロフロマージュのペンネっていうラインナップかな。気をつけたけど、この一週間で、ちょっとデブになりました。

 

鎌倉の長谷の大仏が印象的だったそうです。そして、意外だったのは、カラフルな衣装で派手に舞台上を動きまわる歌舞伎ではなく、夕方に連れて行った薪能の、演者に動きがなく、静かなピーンと張り詰めた空気感、その瞬間に感動したそうです。韓国料理、インド料理、イタリアン、フレンチ、ステーキハウス、日本食が、高いレベルで追求されて存在して、食事も文化も、そういうものが混在しているのが日本らしさなんだけどね。ディープな日本に少しは驚いてくれたかな。

また日本に行きたいと言い出しているのでどうしよう。ではでは。