クマさんのバイク専科

JR西日本のしまなみ海道のCM最低だね!

しまなみ海道が人気のサイクリングコースになりかけていた頃、忌野清志郎さんとバンドの20日間の四国と中国地方のコンサートツアーに同行した。ロケバスに乗って次のコンサート会場へ移動するのだが、バスの後ろのスペースには清志郎さんと僕のバイクが乗せられている。明日か明後日にはフェリーに乗って広島へ渡ることになっていました。車での移動が退屈になった清志郎さんはアソスのバイクウエアに着替えて、自分のバイクを取り出して、高速道路のサービスエリアの従業員の出入り口から飛び出して行った。マネージャーが追いかけてくれというので、ショートパンツ姿でバイクを組んで追いかけた。

 

清志郎さんはしまなみ海道の入り口を調べていて、どのサービスエリアからなら行けると知っていたのだ。車や電車が上を走る橋の下を渡ったり、橋の支柱のある丘を登ったり下ったりして、目的地のホテルまでダイナミックなコースを楽しんだ。思っていた以上にダイナミックなコースで、道幅の狭いところもあったが結構スピードも出せて楽しめた。夕食会場に集まると、コンビニで手に入れた地図を持っていて、明日もフェリー乗り場まで走って、広島市内のライブ会場まで走るという。思いもかけないしまなみ海道初体験だった。

 

地元自治体やホテル事業者や自転車メーカーも協力して、このサイクリングコースを大切に育てて行ったのだ。今、関東地区のTVで放映されているしまなみ海道サイクリングへのお誘いのコマーシャル。街乗り用の自転車でのサイクリング風景なのだが、モデルのお姉さんたちは丘の上でノーヘルで髪の毛を海風になびかせている。一昔前のサイクリング風景のビジュアルだ。

 

しまなみ海道サイクリングの促進という意味では関係者の中には歓迎している人もいるかもしれないが、CMにノーヘル姿のサイクリストを起用しているのは、安全を重視するようになっているので超マイナスイメージだ。現地に行くまでの主な乗り物はJRの電車だ。新幹線での輪行で移動する人も多い。切符販売のビッグデータをリサーチしてわかったのだと思うが、しまなみ海道のサイクリングは経済効果としてJR西日本が注目するほどの規模になっているのだ。

 

だけど今時ノーヘルのビジュアルを採用するとは呆れたものだ。JR西日本のコンプライアンスはどうなっているんだ。CMを製作していた広告代理店のプロデューサーも自転車を手配したスタッフも、ディレクターもサイクリングに対する安全意識はどこに吹っ飛んでしまったのだろう。ノーヘルのビジュアルを採用して、それが当たり前だと思わせることが、かっこいいヘルメットをかぶって安全に走ろうという、自転車業界がやってきたことを逆行させることになる。

 

CMの仕上がりを見てチェックしてゴーサインを出したJR西日本の最終決断をしたスタッフも、今時の社会的な常識とか責任を逸脱している。広告代理店のスタッフも、JR西日本のスタッフも、このコースを自転車で走った経験があるのだろうか。アップダウンもあるしテクニカルなワインシングロードもあってスピードもでる。上級者のサイクリストでももう一度行きたいと思わせるほどダイナミックなコースだ。レンタサイクルや電動アシストバイクを置いたステーションもあって、ヘルメットの着用を強く推進している。バイクはちょっと油断すれば転倒する乗り物だということは誰もが知っている。

 

自転車で時速20kmから30kmで走れることは誰もが知っているだろう。ここを走るサイクリストが普通に走るスピードだ。壁や構造物や車や自転車同士で衝突したら、頭部を打って命に関わる事がデータとして出ている。バイクに乗っていて横倒しになったとしても、頭部の大きなケガにつながるという。このJRのCMを地元の自治体もサイクリングに関わる事業主もOKを出しているのだろうか。このコースを走ったノーヘルのサイクリストが、死んだり、大ケガをしたら、しまなみ海道のサイクリングはダメージを受けないのだろうか。

 

確かに海風にそよそよ動く動画は、自然を感じさせたり、自由でお気軽なイメージを与えるだろう。だけど不特定多数に見せて、サイクリングへ誘うのだが、安全に配慮しないCMは、ノーヘルでサイクリングすることを推奨しているとしか思えない。頭部のケガをした人に対してJR西日本はどう責任をとるのだろう。地元も民間の事業主も、まだこれからというしまなみのコースを定着しようという段階で、僕が知っている限りでは、安全のためにヘルメットとグローブの着用をお勧めしていたように思う。JR西日本のCMはみんなの安全意識や、今まで培ってきた地元の努力を無にするものだと思う。即刻ヘルメット着用バージョンに差し替えるべきだ。ではでは。