クマさんのバイク専科

タイムのカーボンフレームの行き先!

フランスのグループロシニョールに売却されたタイムスポーツ社は、フランスの組み立て製造拠点を2019年にスロバキアへ移転を完了して、すでにスロバキアファクトリー生産のカーボンフレームが納入されている。まだ製造拠点を移動してから1年も経過していないのに、カーボンフレームの製造からの撤退の噂が聞こえて来ました。本当にタイムは作るのを止めちゃうの?。この話がとっても気になります。

 

スロバキアに製造拠点を移動して、生産ラインの規模を拡大して、タイムのカーボンフレームの製造能力は高まったのに、業績が良くないと言うのだ。つまり、いくら走りがいいと評価が高い、ハイエンドのカーボンフレームを作っても売れていないと言うわけだ。フランスが製造拠点だった時は製造量に限りがあったので、納品の期日は予定より3ヶ月、半年と常に遅れ気味だったのだ。カスタムフレームメーカーとしては、こんな生産規模でよくやっていけるなと思っていた。リムブレーキタイプと油圧ディスクブレーキタイプの2ラインになって、さらに納品遅れに拍車がかかった時期もあった。

 

新ファクトリーの製造ラインが強化されて、納品の遅れが改善されると期待されていたし、タイムの輸入元もそうインフォメーションしていた。スロバキア生産のカーボンフレームが入荷した時も、生産拠点の国外移動も、フレームやフロントフォークの製造や品質管理の技術やノウハウの移転もうまく行ったのだと思っていた。ところが、投資したものの採算が悪化して、フレーム製造からの撤退が噂になった。それにしても投資したばかりで、気が短い慌ただしい話だ。海外メディアでも取り上げられていると言う。

 

カーボンフレーム製造から撤退してペダルに注力すると言う噂になっていた。と言うわけで関係者へ連絡したりして、調べ始めてみると、高価なモデルしかラインナップがないカーボンフレームが想定以上に売れていないのは事実らしい。有力プロチームも使っていないし、確かにメディアへの登場は少なくなっていた。しかもグローバルなビジネスをターゲットにして、売り上げを上げるとしたら、量販が期待できる中価格帯も低価格帯のカーボンフレームは、もともと存在しないのだから、今の体制での売り上げアップは苦しいに決まっている。

 

だけど、グループロシニョールは、サイクルビジネスにフェルトを傘下に置いて、すでに参入しているのだから素人じゃない。そんな世界の市場の状況なのは買収前からわかっていたことで、ハイエンドモデルだけのラインナップでは売り上げが立たないのは予測できなかったわけがないはずだ。グループロシニョールの傘下のフェルトは、40億円という売り上げをキープして採算ラインに乗って順調と言う。それとタイムの売り上げを比較するのはどうだろう。

 

グループロシニョールの企業規模そのものが小さいし、本業だったスキー用品の市場規模そのものが縮小傾向にあり、スキーやスノーボードの人口は世界的に減少傾向で、全盛期の60%規模になっていると言うリサーチがある。それを受けての他業種への投資が行われている。その選択肢がサイクルビジネスで、ドイツの広い価格レンジの製品ラインナップを持つ完成車ブランドだったフェルトや、ハイエンドのカスタムフレームを製造しているタイムスポーツ社の買収だったわけだ。

 

グループロシンヨールが望むような、タイムの業績の早急な復活の見通しがつかないとなると、投資家としてのグループロシニョールはどういう動きをするかといえば、ブランド価値があるうちに売却すると言う方法を採用する可能性がある。資金力のある中国のファンドは、近年、ブランドの買取に動いているから転売先が見つかる可能性はある。タイムは自転車業界では高級ブランドのイメージをキープしている。せっかく構築したスロバキアの生産ラインだが、転売先を探していると言う。タイムの売却話とともに、人件費削減も含めてさらなるアジアへの生産拠点の移転話も出ているようだ。

 

と言うわけで不確定要素だらけだが、タイムのカーボンフレームの行方は不透明なままだ。カーボンフレームの生産が続けられるといいけど、アナリストによれば売却額は14億円程度という評価が出ているようだ。折り合える金額を提示する受け入れ先が見つかれば、グループロシニョールの企業規模からすれば、さっさと売却しそうだ。今、余剰なお金を握っているとすれば中国系のファンドだ。彼らは世界で通用する宝飾、ウエアなどブランドを買い漁っている。

 

自転車分野でもアジアは生産拠点として成熟していて、世界で乗られているスポーツバイクのほとんどに関与している。DT、キャノンデール、3T、ピジョン、サーベロなど名の知れたブランドを看板として手に入れて、人件費の安いアジア地域に生産拠点を移して、グローバルな商業活動へつなげて一儲けしようと言う戦略で動いている。日本の企業や個人商店は、創業者一族の経営者の世襲で、ビジネスを続けるのが尊いことという風潮がある。いわゆる老舗ブランドというやつだ。

 

ところが欧米人のブランドに対する考え方は日本と違う。創業者としてブランドを立ち上げて、必死でブランディングして企業価値をできるだけ高めて、思ったような金額で買い取ってくれる受け入れ先を探し、高額で売却してビジネスを引退するのだ。イタリアなら葡萄畑を手に入れて、醸造所を設立して、ワイン作りに取り組むことが最高の引退生活と言われている。ブランドの売り買いは特別なことではない。中国製のタイム、ベトナム製のタイムだって十分に有り得るのだ。ではでは。