クマさんのバイク専科

親父との命がけの攻防戦!

家へ3年前にやってきたトイプードル。普通は3kgくらいが成犬のサイズです。家のはなんと7kgにまで育ってしまいました。性格がいいのか悪いのか、マイペースぶりは猫的な犬です。寂しい時はクーとか、甘えた声でむにゃむにゃ話しかけてきて、無視していると、左足で、「もしもし」とお手をするように誘いにきて、ゴロニャンするくせに、興味がないと寝転がったまま、尻尾を小さく振るだけで最大のリアクションです。つい先日まで、臆病者、血統書詐欺、能無し、芸無しのお犬様と思っていたのですが、それを覆す出来事が起こりました。

 

うちの親父はこのパンデミックのご時世に、93歳の誕生日を迎えて、感染したら重病化しやすい高齢のハイリスクグループのくせに、最寄りのスーパーへ気晴らしに自転車で買い物に行きたがります。親父と夕方の6時に一緒に夕食を食べようと約束したら大変です。朝10時にはメールか電話で、何が食べたい?、魚の煮付けはどうだ、赤魚の粕漬けはどうだと質問してきます。12時が近づくと、玄関のドアノブに、里芋と鶏肉の煮たのを作ったからかけておいたとメールが入ります。お昼に里芋を食べて美味しかったとお褒めのメールを入れておかないと、どうだったと催促メールが入るので、12時30分までには文面を書いておいて発信します。だけど、このあたりで僕は企みに気がつかないといけないのです。

 

夕食のメインディッシュのメニューを聞いてくるということは、冷蔵庫にあるものを上げているのか、スーパーへ買い物に行って揃えようとしているのか。スーパーへ行く口実を作っているんじゃないだろうなという疑いがあるからです。家族全員に感染のリスクを指摘されて、全員に外出禁止を言い渡されています。感染したらイチコロなので、絶対禁止なのに、こそっと出かけるので、油断がなりません。本人はマスクしているし、さっさと買い物してくるから大丈夫というのです。そんなわけあるかい!。

 

僕の家は親父の家の向かいにあって、親父の足音と自転車の音で、犬は遊んでもらえる人を覚えていて、リビングの窓越しに大騒ぎするので、出かけるのがわかるのです。慌てて飛び出したけど止められず。携帯に電話をかけると、下のスーパーにいると白状しました。妹に見張っていてくれと厳重に言われているので、妹へ逃げられた、今、下のスーパーにいるって、と電話すると、1分前に親父からメールが来ていて、家でおとなしくしているから安心しろという内容だったというのだ。呆れた親父だ!。

 

妹にしこたま叱られて、油断するんじゃないと、言い渡された。妹は親父に、感染したら、病院でも会えないし、遺体にも会えなくて、骨になって家に帰ってくるような目に合わせないでほしいとメールしたそうだ。ほんとだぜ!。涙が出て来た。その日の5時55分、メールで夕飯ができたぞと言ってきた。原稿書きを諦めてパソコンを閉じると、電話がかかってきた、「できてる」そうだ。階段を降りている最中に電話が鳴って、今度は「冷めるぞ!」だ。トイレに入っているとまた電話で、「冷める」と言って切られた。

 

もうどうにも我慢ができない体質になっているみたいだ。認知症で医療付きの老人ホームに入院している母親に、パンデミックの自粛で面会できなくなって、何も食べさせることができなくなって、イライラしているのはわかるが、「待てない病」というのがあるとしたら、うちの親父は完全に陽性だ、立派に感染している。

 

母に面会した時に食べさせるものはルーティーンが決まっていて、総量を合わせると、食べ物と飲み物でどんぶり目一杯を超えてしまうので、看護婦長から下痢の原因になるので、量をまず減らせと警告されている。再三、僕も言ってきた。食べさせていて、苦しそうにゲップしているのに、もうやめなきゃダメだなと、スプーン一杯に入れて口へ押し込んでいる。さらにスプーンを置いたら、口をこじ開けてチョコレートをねじ込んでいる。言っていることとやっていることがめちゃくちゃだ。

 

とにかく準備してきたものは、何が何でも食べさせて、自分が満足したいのだ。6品目をタッパウエアに持ってきたら、完食させようとするので、1度、親父自身が全部食べてみろと、家で試食会をやると、食べきれなかった。それでも6品目持ってくるので、まずは1品目減らすことにした。ところが4日目にして1品目が復活したと思ったら、次の日には2品目増えていたのだ。いくら言ってもわからずやになっている。それを見ていた看護師長が切れて説教していたが、都合の悪いことは聞こえないふりをしているのだ。

 

親父がガーゼなどを濡らしに行っている間に、僕がタッパの中身を食べてしまったり、家を出る前に中身を置いてきてしまうようにしている。「しまった忘れてきた」ん、じゃなくて、抜き取って置いてきているのだ。「忘れっぽくなったな〜」と嘆いている。母はお腹がいっぱいになっても、自覚できないので、口を開けて飲み込んでしまうので、こちらが調整しないといけないので、親父を説得して、品数は同じでも量を半分以下にした。やっと適量にすることができた。

 

ところが、頑固さはとどまることを知らない。吸い込むのと飲む動作を同時にして誤飲させやすく、肺炎の原因になるので、禁止されているストローで、ミルクコーヒーやヤクルトを飲ませようとする。その方がスムーズに飲むと思い込んでいるのだ。見ていないとストローで飲ませようとする。それを止めさせるのが大変だ。頑固に思い込んでしまっているのを、粘り強く説得するのは本当に大変だ。いまだに、詐欺電話の警察官と名乗ったやつの話を信じていている。

 

埼玉県内の、その警察署の生活安全課に問い合わせても、そんな人はいないよと言っても、自分はその人と話して、家族構成も話したし、取引銀行のことも話したというのだ。オレオレ詐欺やアポ電強盗のリスト作りの情報収拾の常套手段じゃないか。親父の世代はお役所とか警察には気を許すからな。それでも自分の判断は間違いないと思っている節がある。たまたま、3度目にその人から家電にかかってきたので、親父と交代して出た。

 

気がつかないふりをして、真向かいに住んでいて、取引銀行には親父一人で高額の預金引き出しをするときは、僕に連絡を入れて確認してもらう手続きもしたし、ATMの近くでは携帯も通話不能なことや1日の取引上限額を確認したし、アポ電強盗を心配して、東入間警察に市役所を通じて巡回をお願いしたことを伝えてやった。それ以来その県警の警察官を名乗る人からは電話はかかってこなくなった。とにかく頑固でせっかちになっている親父と付き合うのがこんなに大変だとは思わなかった。「子の心、親知らずだ!」。

 

最近は、寂しいだろうからと、なるべく昼ご飯を一緒に食べたり、夕飯を一緒に食べることになった。ささやかな親孝行のつもりだ。それ以降も抽選に当たったという詐、問い合わせメールアドレス表示の欺電メール、市役所や税務署や財務省や銀行を名乗る人からの、コロナウイルス支援の補助金支給詐欺の電話が横行しているので、親父さんやお母さんの所へそういう話がくる可能性や、すでにきていたりするのを警戒してあげてください。親父は完全に警察官を名乗る人に騙されて個人情報をザザ漏れしていましたから。ではでは。