クマさんのバイク専科

今日は小アジの南蛮漬けだね!

プロパンガスのガスコンロが2つに、魚を焼くレンジが付いている。狭いキッチンで母は色々なものを作ってくれたが、テンピをコンロに乗せると、だいたいその日はご馳走なのだ。シュークリーム、焼きリンゴ、そして、鶏モモの塩焼き。今日は朝からテンピの手入れがされて、コンロに乗っているだけで、小学校までの通学はウキウキだった。3時過ぎに寄り道もしないで、飛ぶように家の近くまで帰ってくると、バニラエッセンスのいい香りがしてきたら、カスタードクリーム入りのシュークリームだ。

 

シナモンの香りがしたら、芯をくり抜いてシロップとシナモンバターを注ぎ込んだ焼きリンゴだ。パイ生地を作って、アルミホイル製のトレーに、フランベした薄切りの酸味のあるリンゴと干しぶどうをたっぷり詰め込んだアップルパイも美味しかったな〜。シュークリームがさいか屋の包装紙の裏返した上に、20個くらい並んでいます。シューが上下にカットされて、大きなスプーンで、カスタードクリームがいっぱい入った鍋からすくわれて、シューの真ん中へ詰め込まれて行きます。

 

帰ってから1時間以上、キッチンのテーブルにつきっきりです。まるでお預けをくらった子犬状態でした。鍋からはバニラの甘〜い香りが漂っています。残りのシューの数を見ると、どう見てもカスタードクリームが余ります。食べたいな〜と思って、鍋ばかり見ていました。母が大きなスプーンでクリームをすくって食べさせてくれました。子雀が餌をもらっている感じです。シュークリームがキッチンのテーブルいっぱいに並べられて、パウダースノーのような砂糖がかけられて完成です。これさ、幾つ食べていいのと毎回聞いていたと思います。

 

クリスマス気分で浮かれていると、1つお皿に取ると、召し上がれと渡してくれます。当時は久里浜の街にはお菓子屋さんはあっても、ケーキ屋さんなんてありませんでした。レモンの輪切りを添えられたティーバッグの紅茶を添えて、ちょっと遅めのおやつの時間です。残ったシュークリームは一体誰のお腹に入るのかが気にかかります。

翌日の学校からの帰りも早いこと。小さな丸いちゃぶ台の上に、2個のシュークリームが置かれています。母は昼間は港湾研究所の公務員として働いていたので、家にはいません。

 

昨日は半日お休みをもらって、妹と僕のためにおやつを作っていてくれたのです。この時代ケーキとか滅多に食べられないので、事務所のみんなにもおやつとしておすそ分けしていたのでしょうね。親父、妹、母、じいちゃん、ばあちゃん、自分と食べた数を考えると、もっと食べられるはずなのにと思っていました。親父と夜中に遊びに行ける日があります。研究所のコンセントからぐるぐるコードが巻かれた電源を引きずって、岸壁に木材を突き出して、集魚灯を点灯すると、アジが集まってきます。餌をつけないで竿を放り込むと、いくらでも小アジが釣れるのです。

 

バケツに1杯とか2杯釣って、集魚灯をしまって、重いバケツをぶら下げて家へ帰ります。もう眠いのですが、出刃包丁でアジのお腹を割いて、内臓を取り出すのを手伝い、下ごしらえを終わります。100匹近い小アジがトレーに山盛りです。母がパレットに醤油、お酒、ゴマ油、お酢を注ぎ込んで、長ネギの刻んだのとたかの爪の輪切りを入れて、南蛮漬けのタレを大量に作ります。中華鍋に油を注いで温めます。メリケン粉をまぶした小アジが入念に加熱されて唐揚げになります。

 

じゅうじゅう言っているのを、金網のお玉ですくっては、タレの中へ放り込まれます。ジュワーと言いながら、タレの中へ漬け込みます。

少し冷めてから、タッパウエアに分けて収納します。この時もキッチンテーブルに釘付けです。まだ熱々の小アジを、さえばしで挟んで小皿へ移して、片っぱしから食べ始めます。100匹近くあるので、いくらでもどうぞという感じで食べさせてくれます。まだ味はしみていないけど、熱々は最高に美味しいです。夕飯を食べてから夜釣りに行っているのに、10匹近く食べてしまいました。全部出来上がるのは11時過ぎです。

 

翌日の朝には、冷蔵庫の中で小アジの南蛮漬けは絶好調の美味しさになっています。小アジは南蛮漬けのタレの中で馴染んできて、2日目、3日目と身に染み込んだタレと馴染んできて、長ネギもヨレヨレになってこれが最高に美味しいんです。黒姫高原の自転車合宿で使っていたセラビィというペンションのおばちゃんは、僕が小アジの南蛮漬けが大好きだと覚えていてくれて、寺泊でとれた小アジを手に入れて、毎回作ってくれました。僕のお皿だけ7匹も8匹も盛ってくれて楽しみにしていました。

 

母の作ったタレより薄味で、お酢が効いていて、これはこれでとっても美味しかったな〜。今日は久しぶりに出かけて、寺泊や高知で上がった魚を扱っている、元気なおばちゃんが仕切っている、馴染みの魚屋さんに行って、小アジの南蛮漬けを特別に作ってもらって、夕食前に取りに行って、パンデミックで自宅に籠ってイライラしている親父におすそ分けしてやろうかな。ではでは。