クマさんのバイク専科

オリンパスがカメラ部門売却!

僕のカメラ歴の始まりは。オリンパスのOM-1だった。街の小さなカメラ屋さんで買った。アルバイトと親父の援助で、OM-1のボディと50mmの標準レンズ、ズイコーレンズと言ったかな。それに80mm〜120mmのズームレンズをセットで手に入れた。高校生にとってはちょっと贅沢だったけど、撮影は面白かった、オリンパスのカメラ部門は80年以上続いていたという。カメラもオリンパスペン、親父のお下がりのフォーカルプレーンシャッターカメラ、一眼レフを手に入れて、顕微鏡も買ったなー。

 

フィルムの時代からデジタルの時代になって、オリンパスがカメラ部門を切り離して、ついにファンドへ売却という話になった。ソニーがバイオを売却してパソコンから撤退したのに似ている。老舗であろうと、同じ事業を継続できない世の中なのだ。ちょっと寂しい。白黒のトライXかコダックのネガフィルムを選んで、絞りを選んで、ピントを自分の手で合わせてという作業をした上に、場面を捉えてシャッターを切る。これだという場面を切り取るには、情景をこうなるのではと予測して、そらきたと感じるものがあって、結構興奮している状態でシャッターを押すことになる。OM-1に露出計くらいは付いていたな。

 

シャッタースピードは、画素を荒らさないために、増感なしのノーマルのASA感度でシャッタースピードを設定するっから、トライXがASA400だから、晴れていても250分の1秒が標準だ。コダックのポジフィルムだと100で、印刷用のネガフィルムのエクタクロームだとASA感が65だったと思うから、125分の1秒くらいだった。ネガフィルムは露出をピシッと合わせないと、色も出ないし、現像段階での救い用がなかった。スローシャッターをそっと押さないと、カメラを持っている手に力が入って、手ブレしてしまうのだ。編集部にいるプロカメラマン達に、興奮しているのに、どうすれば力まずにシャッターを押せるのか、しつこく聞いてみたけど、ここぞと想像できるほど、そのスポーツを知ることだという。

 

F1とかグランチャンとか、バイクのGPや耐久を撮っているオフィシャルカメラマンが、200km以上のスピードで走ってくるシーンで、ジャスピンなのだ。ライトテーブルで見せてもらったフィルムは素晴らしかった。1本のフィルムが36カットだから、残りカット数を意識して、モードラのシャッターを押して、次にハイライトシーンがくるという予想があると、自動の巻き戻しモードにして、次のフィルムをセットする準備に入っている。

 

コダックのフィルムは、カメラでの撮影用に開発されている。そう、動画用には8mm、プロ用の16mm、プロ用の35mm、70mmなどまさに映画用のフィルムなのだ。リールに巻かれたフィルムが金属製の丸いフィルムケースに入れられて販売されている。映画用のカメラにフィルムを通す時は、暗幕をかけた中で作業を行う。一眼レフなどのスチールカメラはそのフィルムを36カット分の小さなケースに入れて切り売りされていたのだ。現在の映画もスチールカメラはデジタルになっているので、磁気テープ時代は終わり、超高精細対応の半導体が開発されて、収録時間はメディアの容量次第だ。4K、8Kの超高精細画素のハンディの動画用カメラの時代になっている。情報量が莫大になるので、編集するパソコンの容量も処理速度も大きくないと対応できなくなる。この辺りのイノベーションは劇的で旧機材が全く使えなくなるだろうな。

 

ケースに入れて、マジックで減感や増感のメモを書いて、フィルムをセットして、乾電池か、専用充電池の残量をチェックする。モードラ装備に、長玉の明るい大口径ガラスレンズの組み合わせはとてつもなく重く、ズーミングもピント合わせもするので、恐ろしい熟練技だ。しかも、頭の中ではバイクやライダーの調子とレース展開の流れを読んでいて、このコーナーでオーバーテイクが起こると予測して待ち受けているのだ。どこがハイライトか、スポットを当てるべきかわかるようになったら、あとは場数を踏んで、冷静に場面を切り取りたいという功名心を持たないで、何度も現場でシャッターを押せばいいのだと言われた。

 

この時代のカメラはピントを手で合わせて、ピントの合う範囲に関わる絞り、シャッタースピードだって設定して、撮影しているのだ。最新のデジタルカメラは手ブレ補正も、ASA感度もほぼ関係なく、シャッター速度も自由に設定できるし、モードラも、秒速10コマ以上、さらにそのスピードに見合ったオートフォーカスも装備されている。陸上競技の100mなんか、大容量のメディアさえあれば、理論的には100カット以上撮れるのだ。その場に行くこと、場面を切り取るセンスの勝負になっている。口の悪い人は下手な鉄砲数打ちゃ当たると言っている。

 

デジタルカメラはメディアにデータを記憶できて、その場で液晶画面で撮れた画面を確認できる。スポーツのような1発勝負は別にして、写りを確認しながら仕事を進められる。画素数も半端じゃなく、大判煽りのフィルムカメラ以上のクオリティを35mmカメラで実現できるようになっている。動画だって得意とするカメラだってある。ポラロイドパックで試し撮りなんて手間もいらないのだ。リンホフのようなあおりの効く大判カメラもいらなくなったとクオリティ的には言われている。

 

そういう最新のデジタルカメラから比べたら、OM-1は石器時代みたいな道具だろう。最近ではフィルムそのものが手に入りにくいし、現像所も少ない。それでも銀塩フィルムのカメラをノスタルジックで使っている人がいる。ライカとかキヤノンの軍艦とか、かなり昔のものを首から下げているのを見かける。絞りを測定する機械がセットだ。フィルムで驚いたのは、プロカメラマンがラボで現像処理してくれて、とっておきのコンテスト出品用の最高品質の印画紙で、入念に焼き付けて定着の後処理してくれた紙焼きが、20年以上経っているのに、焼けも何も起こっていないのだ。写大で研修を受けていたカメラマンが最高のテクニックでプリントしてくれたものだ。

 

現像したフィルムの保存も湿度や光からのシャッタアウトとか大変らしいが、実は、デジタルの画像データの保存は、実はとても大変らしい。画像用の安定したCDに焼き付けて保存しておけばいいと言われていたのだが、20年くらいで劣化していたというのが発覚して、ハードディスクに保存するようになったが、ハードディスクにも限界があって、バックアップのバックアップを取る必要があるのだという。雑誌もテレビも一気にデジタル化されてしまったが、最初は検索の簡単さや、スペースのコンパクト化が歓迎されていたが、後出しジャンケンみたいにデジタルのデータ保存のもろさが発覚して、取材したデータが雑誌社やテレビ局の財産として重視され始めた。アーカイブ部門が慌ててバックアップ体制を再編しているという。

 

実はまだフィルムのカメラを時々引っ張り出して使っているのですが、デジカメを使っていると、ついついフルオートで撮影してしまうようになって、銀塩カメラのことを忘れていて、手ブレ、ピンボケ、絞りの間違い、シャッタースピード、全てを自分でやらないといけないので、アラもこれもできていないという、間抜けな写真ばかり撮っています。ニコノス5、F2フォトミックモータードライブ、時々使うと戸惑って、全く思ったような写真を撮れません。デジタルのカメラで撮ると、パソコンに画像データをインストールして、フォトショップでファインチェックして、プリンターで紙にするのが面倒になって、CDに焼いたり、生のメディアに入れて丸々渡すようになってしまいました。どう映っているかをその場でチェックできる便利さは圧倒的ですけど。フルムの現像が上がってくるまでのドキドキも、見て、やっぱり下手だな〜と反省するのも面白くてやめられません。

 

特にニコノス5は海洋冒険家とニコンがコラボして作った、本来水中カメラですから、取り扱いのめんどくささは天下一品です。防水性を保つなら定期的なパッキンの交換、シリコーングリスの補充が必要で、銀座のニコンのラボへ持ち込んでメンテナンスしてもらっています。フィルム交換は、マウントから防水のレンズをひねって外し、アウターシェルからカメラ本体を引き出して、フィルムをセットして、戻します。フィルム交換に3分以上かかります。ピントと絞りはレンズの左右にダイヤルが付いていて、水中でも操作ができます。フィルムの巻き上げも、左のレバーを指で押すと、やや巻き上げの間隔は不均等ですが水中でできます。シャッターはプッシュボタンではなく、人差し指で押すとシャッターが切れます。慣れないと手ブレしやすいですね。

 

頭の中でこの絞りだと、どこからどこまでピントが合うのか、指で押すシャッターもよりそっと押すこと、ホットシューを使ってストロボを使っても、ガイドナンバーで光の届く範囲と、ピントの範囲を考えて撮影する必要があります。電子カメラが増え始めた頃、リークして動かなくなっても、こいつだけが豪雨の中でも撮影できたので、予備機手ブレしないことを心がけないといけないので、重いし、手間はかかるけど、カメラの原点を感じながらの悪戦苦闘の撮影を楽しめます。ニコノス5は面白いな〜。

 

携帯電話にデジタルカメラが組み込まれて、画像はやり取りできるようになって、デジタルカメラの需要が激減して、オリンパスは80以上の歴史があるカメラ部門がここ数年間赤字になった。オリンパスと言えば人間ドックなどでお世話になる内視鏡や顕微鏡などメディカルや研究分野が順調に日本でも世界でもシェアが伸びている。しかも、小型軽量化に関して昔から定評がある。デジカメ部門をファンドに売却が決まってしまった。そう言えばOM-1とOM-2をどこにしまっちゃったのかな。ではでは。